カンゲキのススメVol.16 ハイリンド『ヴェローナの二紳士』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、7月8日より吉祥寺シアターで上演が始まるハイリンド 『ヴェローナの二紳士』です。 


【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
ハイリンド 『ヴェローナの二紳士』 7/8(月)~15(月・祝)
公演詳細→ http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/03/post-16.html













O君:こんにちは!あっという間に夏が近づいてきましたが、皆さまいかがお過ごしですか?さて本日ご紹介させていただくのは、4月のブルーノプロデュース、5月の無名塾に続くシェイクスピアシリーズ第3弾!劇団ハイリンドがシェイクスピアの初期作品『ヴェローナの二紳士』に挑戦します!!

Kさん:シェイクスピア戯曲のなかでもかなりマイナーな作品で、日本での上演も数えるほどしかない作品よ。ハイリンドは今回初めてシェイクスピア作品に挑むわけだけど、期待の高まるチャレンジングな公演になりそうね!

O君:どうりであまり耳にしないなあと思っていました。調べたところ、日本では2007年に生田斗真さん主演で上演されたのが記憶に新しいでしょうか。ざっとあらすじを追いますと…。
このお話の主人公はヴェローナの紳士であるヴァレンタインとプローティアス。二人は強い友情で結ばれていましたが、遊学のためにヴァレンタインは友と別れミラノへ旅立ちます。プローティアスもヴァレンタインに誘われ、同行しようかと悩みますが、恋人・ジュリアのことを思いヴェローナにとどまる事を決意しますが、後にプローティアスも父親の命令でミラノへ旅立つこととなるのです。
さてはて、プローティアスがミラノに着いてみると、驚いたことにヴァレンタインは勉学そっちのけで公爵の娘シルヴィアにうつつを抜かしているではありませんか!プローティアスが遊学を断った際、恋にうつつを抜かすことをなじったのはヴァレンタイン本人だったにも関わらず!普通ならここでプローティアス激怒!のはずが、まさかまさかのプローティアスまでもがシルヴィアに一目惚れ。ヴェローナに愛する恋人がいるにも関わらず!です…。友情か愛情か、プローティアスの心は揺れに揺れ…。

Kさん:と、ここから物語は坂道を駆け下りるように怒涛の展開を魅せていくわ。せっかくだから続きは実際に劇場で観ていただきたいんだけど、ずばり作品のテーマは「守るべきは友情か、愛か」。迷いに迷い、若さゆえの過ちを犯しながら、「ああ、青春の日々!」と叫びたくなるような甘酸っぱいドタバタ青春ストーリーになること間違いなしね。
そして物語と同じくして、この作品、シェイクスピアが30歳手前の頃に書いた初期の作品で、一説では“シェイクスピア戯曲の第一作”とも言われているわ。それ故に、作品の節々にシェイクスピアの若さを感じるような部分や、あ、ココ後の作品でも使われてる!という部分もあるのよね。後に天才戯曲家として華々しい栄光を掴むひとりの青年のスタートラインとも言えるわけだから、この作品を観るということは貴重な経験になると思うわ。

O君:そして不思議な繋がりですが、今年5月に上演されたシェイクスピアシリーズ第2弾の無名塾『ウィリアム・シェイクスピア』では、若き日のシェイクスピアが戯曲家としての人生を歩むことを決断するまでの葛藤が描かれていましたよね。そして第3弾は“シェイクスピアの第一作”と呼び声高い『ヴェローナの二紳士』を上演。連続で観ると、まるでシェイクスピアの歩みを間近で見ているような気になるんじゃないかなあと思うのですが。

Kさん:あらO君、なかなか良い着眼点じゃない!無名塾の『ウィリアム・シェイクスピア』では、天才戯曲家誕生までの日々を描いていたんだけど、公演を観ていただいた方には、どんな天才も一人の人間としての当たり前の喜びや、悲しみや、苦悩があったんだなということを感じてもらえたんじゃないかしら。もちろんシェイクスピアの場合、言葉の端々に天才の片鱗を覗かせているわけだけど、当たり前に恋をしたり、家族や仕事のことで悩んだりと、シェイクスピアにも若き青年としての日々があったんだなあって気づかされたわ。そして今回の『ヴェローナの二紳士』。後に素晴らしい名作を生み出すひとりの戯曲家の若く荒削りな時代を、作品自体を楽しみながら感じていただける作品になっていると思うわ。
ちなみに蛇足だけど、シェイクスピアの若き日を描いた映画『恋におちたシェイクスピア』でグィネス・パルトロウがオーディションで読んでいたのがこの作品の台詞なのよね。

O君:さて今回、稀代の戯曲家のマイナー作品上演にチャレンジするのが劇団「ハイリンド」です。2005年、加藤健一事務所俳優教室卒業生の役者4人が中心となって結成した劇団で、座付きの脚本家や演出家をもたない役者集団です。演劇界のなかでは珍しい構成の劇団なんですよね。

Kさん:役者さん自身が選んだ作品と演出家とキャスティングで公演を行う、まさに「役者プロデュース集団」ね。現代劇から時代劇までものの見事に演じきり、毎公演違った魅力を見せてくれる彼らのモットーは「どの世代が見ても面白い、質の高い作品を発信し続ける」事。自分たちがやりたいことを追求した結果こそのスタイルとも言えるんじゃないかしら。実際、ハイリンドの作品を観るといつも心がわくわくするの。演劇特有の、演劇でしか味わえない臨場感や緊張感だったり、深く静かな感動が心に染みていくような気分になって、観終わった後は「とても良い芝居を観たなあ」という満足感に包まれるの。あ、わたしったらハードルを上げすぎかしら?でも、今回の作品はハイリンドを好きな人だけでなく、これから演劇を観ようとしている人や、ちょっと興味があるけど勇気が出ない人、新しい種類の感動に出会いたい人に、是非ともお勧めしたい作品なのよ。

O君:なるほどー。回を増すごとに、Kさんの気合も凄まじいものになってきました(笑)
今回は演劇ファンでない方も一度は名前を聞いたことがあるであろうシェイクスピアの“はじめの一歩”となる作品ということで、これに乗じて演劇初心者の人たちにとっての“はじめの一歩”の作品に選んでいただけると、僕としては本望ですね!

Kさん:なんか上手いこと言ってる!O君最近冴えてるわね!



更に詳しく『ヴェローナの二紳士』に迫る!












O君:さてさて、ここからはより詳しく作品に迫っていきたいと思います。まずなんと言っても今回の目玉といえるのが、作品の翻訳があの松岡和子さんの訳し下ろしなんですよね。

Kさん:松岡和子さんは小説や評論の翻訳を手がける翻訳家で、シェイクスピア全作品の新訳に取り組んでいらっしゃる方よ。シェイクスピアといえば彩の国さいたま芸術劇場での彩の国シェイクスピア・シリーズが有名だけど、その企画委員もされているそうよ。
シェイクスピア戯曲の翻訳者で真っ先に名前が挙がるのが福田恆存さんや小田島雄志さんかしら?彼らの訳本は出版時期から幾分か時間が経っているのよね。それなのに、時代が変わっても翻訳が色褪せず新鮮で、いつ読んでも新しい感動が生まれてくるのが凄い。一方松岡和子さんの翻訳には、先に出てきたお二人が持っていた“時代を越えた普遍性”に加えて、松岡さんならではの翻訳の新しさも加わっているわ。また松岡さんは現在「文庫版の全集シリーズ」という形態で訳本を出版されていて、よりシェイクスピアの世界を気軽に楽しめるようになっているの。いずれこの全集シリーズが完結する頃にはシェイクスピア戯曲の訳本の中でも“主流”の翻訳作品になっていくんじゃないかと思うわ。

O君:全集で言うと、今年の4月にちくま文庫から「シェイクスピア全集24(ヘンリー四世 全二部)」が発売されたばかりです。表紙の絵も素敵で、ついつい集めたくなってしまうのは僕だけでしょうか。とにかく、まだ世に出ていない松岡さんの翻訳版『ヴェローナの二紳士』を、臨場感満載の舞台で楽しめるという何とも貴重な体験が出来るということですね!これは絶対劇場で観たいぞ!!!

Kさん:そして演出を担当するのはJAM SESSIONの西沢栄治さん。ギリシャ劇や歌舞伎などの古典を題材にした演出を多く手がけていて、シェイクスピア戯曲の演出も経験済み。ハイリンドとはこれまでにも落語中興の祖・三遊亭円朝が描いた壮大な怪談話『牡丹燈籠』でタッグを組んでいて、この作品は非常にお客様からの評判がよく再演もされ、劇団の人気作のひとつになっているの。

O君:劇団の公演チラシにも西沢さんからのメッセージが載っていて、「シェイクスピアは面白い、すなわち、演劇は面白いと、全身で感じていただきたい」とありますね。劇団員3名、客演(ゲスト出演)12名、総勢15名の実力派俳優たちのもとで、どんな壮大な物語が繰り広げられるのか、楽しみですね。
さて、ハイリンドの公演では恒例になってきましたが、公演期間中の7月13日(土)14時の回には、開演前の13時から目のご不自由な方を対象とした舞台装置説明会が行われるそうです。舞台セット、作品の詳細や登場人物の補足説明などを事前に説明することで、演劇という芸術を生で感じ取ってもらい、より楽しんでいただくために行っているものなのだそうです。

Kさん:これまでに参加してくださった方々からもとても良い反響をいただいているそうで、今回も開催が決定したそうよ。ちなみに一般のお客様も観劇料金のみでご入場いただけるそう。この日は受付・開場時間が12時30分からなので、お時間のある方は是非検討してみてくださいね。

O君:『ヴェローナの二紳士』は吉祥寺シアターにて7月8日~15日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までお電話をどうぞ!



ハイリンド 『ヴェローナの二紳士』 公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/03/post-16.html

チケット予約はこちらからどうぞ! https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
ハイリンドHP http://www.hylind.net