カンゲキのススメVol.19 アマヤドリ2本立て本公演 『うれしい悲鳴』 『太陽とサヨナラ』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、10月23日より吉祥寺シアターで上演が始まるアマヤドリ2本立て本公演 『うれしい悲鳴』 『太陽とサヨナラ』です。


【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
アマヤドリ2本立て本公演 『うれしい悲鳴』 『太陽とサヨナラ』  10月23日(水)~11月3日(日・祝)
公演詳細→ http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/08/-2.html


 

 

 

 

 

Kさん:皆さんこんにちは!秋真っ只中の今日この頃、いかがお過ごしですか?さて、カンゲキのススメ19回目にして、特別編をお送りします!今回はカンゲキのススメコーナーの担当であるO君とわたくしKが、劇団「アマヤドリ」の次回公演である『うれしい悲鳴』『太陽とサヨナラ』のワークインプログレスに参加してきました!そこで感じたことや、出演者や演出家の方が話してくださったことをここでご紹介させていただきたいと思います。

まずワークインプログレスが行われたのが池袋駅から徒歩7分のところにあります「スタジオ空洞」。“廉価で高品質な稽古場、小発表のためのスペースを提供したい”との思いから生まれたスタジオで、ここの運営委員長を劇団「アマヤドリ」の主宰である広田淳一さんが務めています。

ちょっと待ちなさい、そもそもワークインプログレスとは?と思った方にご説明させていただきます。ワークインプログレスというのは作品の創作過程を広くお客様に公開することで、お客様からの率直な意見や考えをお聞きし作品創作に生かしていく場のことです。(K的見解)ワークインプログレスに参加したお客様側からすると、自分が感じた考えや意見が、作品に良い影響を与えたり反映される可能性があるわけです。つまりお客様自身も作品創作の担い手の1人になるわけですから、なかなか得がたい経験ですし、観劇時の楽しみ方がより一層広がるような気がしますよね。

というわけで、まずは10月5日に行われた『うれしい悲鳴』のワークインプログレスに参加してきたO君に、会場での様子や感想を伝えてもらいましょう!


『うれしい悲鳴』ワークインプログレス

O君:10月に入り一気に涼しくなるのかと思いきや、まだ気温の高い日もちらほら、心地よい秋の気配が待ち遠しい毎日です。さて、今回のカンゲキのススメは特別編ということで、10月5日(土)に池袋のスタジオ空洞で行われたアマヤドリ『うれしい悲鳴』のワークインプログレスのレポートをお届けします。

当日は朝からあいにくの雨、でしたが夜になるとだんだんと弱くなってきて、池袋駅からスタジオまでの道すがらはぱらぱら降る程度にまで止んでいました。劇団名のアマヤドリよろしく雨が似合うなぁと、演劇公演を見に行く気持ちとはまた少しちがった、なんとなくうきうきした気持ちで向かいました。

ワークインプログレスはじまりはアマヤドリ主宰、作・演出を手がける広田淳一さんのアットホーム?な挨拶からスタートし、さっそく「うれしい悲鳴」の全編上演へと突入しました。全編上演といっても今まさに稽古の真最中なわけで、会場も本番の吉祥寺シアターとは大きさが違うのですべて同じというわけにはいきませんが(途中省略したところもあるそうです)、役者さんの演技は全快全力で、本公演とはまた少し違った緊張感のある濃密な時間でした。



 
 
 
 
 
 
 
 
「うれしい悲鳴」のストーリーを簡単に説明します。舞台は近未来の日本。そこでは国家がランダムで作った「アンカ」と呼ばれる絶対的な命令によって人々の生活が制限されており、その「アンカ」を実力行使で実行させる「泳ぐ魚」という組織が権力を握っていました。物語の主人公はその「泳ぐ魚」の一員で、幼い頃の事故によって“感覚”そのものを失ってしまったマキノという男と、周りのものすべてに過敏な拒否反応を示し、隔離された部屋で人生のほとんどを過ごしてきたミミという女。そんな正反対の人生を送ってきた二人がある事件をきっかけに運命的な出会いを果たしたことで、事態は急展開を迎えます。周りの人々を巻き込みながら、二人が行き着く先は・・・!?という感じです。 

そもそもアマヤドリの前身は2001年に広田さんを中心として結成された「ひょっとこ乱舞」という劇団で、2012年まで全25回の本公演を行ってきました。その最終公演として上演されたのが「うれしい悲鳴」で、「ひょっとこ乱舞」はその公演の後「アマヤドリ」と改名し、新しいスタートを切りました。そして今回のチラシにも広田さんが書かれている通り「うれしい悲鳴」は、「ひょっとこ乱舞」時代の集大成として一番の作品というわけなのです。


 

 



 


 失礼ながら私は今回初めてアマヤドリの作品を見させていただいたのですが、なんといってもその魅力は何層にも重なり合う厚みのある物語とテンポの良い場面展開、台詞回しではないでしょうか。作品において描かれている世界は、一見どこか遠く未来のファンタジーのようにも見えますが、現代社会の中で今起きている様々な問題とつながっており、決して想像上だけの切り離されたものではありません。そのような世界観に観客を引き込み、見ている者の想像力を刺激することによって、物語の輪郭をより強固なものへと導きます。また台詞には、世界・社会・個人・生・死・悲しみ・痛みなど物語の核となるキーワードが随所に散りばめられており、それぞれの言葉の意味や境界線を問うような、綿密に構成された台詞によって物語の世界をより一層際立たせています。

終演後の質疑応答コーナーで広田さんがおっしゃっていましたが、この作品を再演するにあたって、初演の千秋楽が2012年3月11日、震災からちょうど1年経った時期だったそうです。そのときは震災後の作品として好意的に受け取ってもらったけれど、その後ある程度時間が経った今だからこそもう一度再演をしてみたい、作品の持っている強度に自信があるので、それをまた違うキャストで試してみたいとのことです。ちなみに2本立て公演になったのは、再演だけではなく、新作を書きたいという欲求が抑えられずに、欲張ってしまったそう(笑)


 

 



 


 うれしい悲鳴初演時、主役の「ミミ」は劇団員の笠井里美さんと田中美甫さんのWキャストという形で演じていたそうですが、今回は客演の藤松祥子さんが一人ですべてを演じ、相手役のマキノは同じく客演の西村壮悟さんが演じるそうです。(なんと藤松さんは高校生の時にアマヤドリがまだ「ひょっとこ乱舞」という劇団名で活動していた頃の公演からご覧になっているそうで、出演陣の中で最年少にして今回ヒロインを一人で演じることになったそうです!「アマヤドリ稽古場ブログ出演者紹介より」)ワークインプログレスでもお二人の演技はとても見ごたえがあり、素晴らしかったです。


 

 



 
 
 
そして主役のお二人以外にも今回のうれしい悲鳴の再演は、アマヤドリの劇団員では中村早香さん、渡邉圭介さん以外はすべて客演の方々なので、劇団員の占める割合が多かった初演時とはまた一味違った作品になるのではないでしょうか。ちなみにそのキャスト紹介がアマヤドリの稽古場ブログで日々更新されているので、ぜひ観劇前にチェックしていただければと思います。

また今回の再演は初演時には無かった新しいシーンを追加したり、お蔵入りになってしまったある場面を再構成したりするそうなので、初演を見ている方も見ていない方も楽しんでいただける作品になることまちがいなしです。そして初演のうれしい悲鳴を公演した劇場も吉祥寺シアターで、そのときに書かれたカンゲキのススメがこちらで読めるのでぜひ一読をお願いします。それでは劇場でお待ちしております! 


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Kさん:O君、レポートありがとう!ワークインプログレスをしっかり楽しんだみたいね。

O君:はい、とっても貴重な経験でした。かなり熱量の強い作品なので、アマヤドリの芝居を初めて観るお客様には是非ともお勧めしたい作品ですし、初演を観たお客様にとっても上演当時との違いを楽しみながら観てもらえる、見どころたっぷりの内容になっていると思います!

Kさん:わたしは初演を観た人たちの一人なんだけど、まず主演を劇団員以外の役者さんがやるってだけで、とっても興味があるわ。どんなアマヤドリの進化が見られるのか、本当に楽しみね!

O君:というわけで次はKさんにバトンタッチです。Kさんには10月8日(火)に行われた新作『太陽とサヨナラ』のワークインプログレスに参加してきてもらいました。それではKさん、よろしくお願いいたします!


『太陽とサヨナラ』ワークインプログレス

Kさん:はい。というわけで行ってきましたスタジオ空洞。開始後すぐに主宰の広田淳一さんから、前回に続きアットホームなご挨拶がありました。まず広田さんから「まさかの、一週間前に新作が書きあがりました!」の一言が。これは長い劇団の歴史から見ても非常にまれなこと?だそうで、広田さんは毎公演ギリギリまで台本を書き換えるタイプの演出家さんなようです。今回はまさかのワークインプログレス一週間前に台本が書きあがり、急いで役者さんに台本を覚えてきてもらった、と。

広「そんなこんなで今日は全ての予定を変更して、早速全編通したいと思います!」
K「やったー!」

そして始まった新作『太陽とサヨナラ』。あっという間の2時間弱でした。
物語に少しだけ触れますと、舞台はこちらも近未来の世界。その町にはいつからか“黄金の砂”が降るようになり、夜に外へ出かけるとその砂に埋もれて命を落とすこともあるため、人々は“砂”の存在にどこか怯えながら暮らしています。そんな折、物語の中心人物となる“擬似家族”のもとに現れた謎の生物。その生物の人並外れた力を利用しようとする男女、生物を連れ戻そうと躍起になる男達、衝撃の事実を知って途方にくれる美少女・・・様々な人々の思惑が交差しながら、物語はあるひとつの出口に向かって歩き始める・・・といった感じです。

新作公演には劇団員が7名、バラエティ豊かな客演陣が4名揃い、それぞれの個性が良い形で出ていて“アマヤドリらしさ”を感じられる作品になっていました。アマヤドリは“若手役者の宝庫”とも呼ばれていて、毎回独特の演技が光る出演者の方が揃っているんですが、今回もひとりひとりのキャラクターが役ととても合っていて、どの役者さんも見どころ満点でした!

またこれまでの「ひょっとこ乱舞」時代の作品にも観られた“群舞”や“言葉遊び”、動きのきっかけを役者同士の呼吸で決める“全員で動く”演出なども要所要所で見られました。

終演後の質疑応答では、『太陽とサヨナラ』の創作動機なども語ってくださいました。なんでも広田さん、これまでの自分の人生を振り返って見た時に「結構生きたなあ・・・」という実感があったそうです。そしてこの先も続いていくだろう自身の人生の長さに、少し途方に暮れてしまったとのこと。その出来事から、それよりもずっと永い時間と距離を歩んできた“太陽”というものについての話を描いてみたいと思ったのが創作のスタート地点だったそうです。こういうお話、なかなか聞けないのですごく興味深かったです。今回の芝居の導入部分でも“途方もない時間”や“遠すぎる距離”といった台詞があって、それがとても印象的だったので、このお話を聞いて腑に落ちました。

さて、アマヤドリは物語以外にも衣裳、音楽、舞台美術など見どころがたくさん。今回劇中で流れていた音楽も即興だったとのことで、本番の仕上がりが本当に楽しみです。既に作品の宣伝写真も公開されていますが、この日着ていた衣裳もこの写真のような感じでした。


 

 

 

 

今回のワークインプログレスに参加されたお客様も、この日見た世界観が本番でどのように強固なものになっているのか、待ち遠しいですよね。本番までもうすぐ!是非アマヤドリ2本立て本公演、楽しみにしていてくださいね!

アマヤドリ2本立て本公演は吉祥寺シアターにて10月23日~11月3日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までお電話をどうぞ!


アマヤドリ2本立て本公演『うれしい悲鳴』 『太陽とサヨナラ』 公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/08/-2.html
チケット予約はこちらからどうぞ! https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
アマヤドリHP http://amayadori.sub.jp/