カンゲキのススメVol.20 青年団 『もう風も吹かない』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、11月7日より吉祥寺シアターで上演が始まる青年団『もう風も吹かない』 です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
青年団 『もう風も吹かない』 11月7日(木)~11月18日(月)
公演詳細→http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/07/post-18.html











O君:みなさま、こんにちは。11月に入り寒いなと感じる日も増えてきましたね。そろそろ本格的な冬に向けてコートやストーブを出さないといけないなぁと思いつつ、なんとかまだなしで過ごしています。さて、今回のカンゲキのススメ記念すべき20回目で取り上げるのは青年団『もう風も吹かない』です。はりきってまいりましょう!

Kさん:O君、毎日寒そうな格好でいると思ったら、まだコートを出してなかったのね、風邪を引く前にはやく出したほうがいいわよ。青年団は昨年の『アンドロイド版 三人姉妹』に引き続き、カンゲキのススメには2回目の登場ね。(前回のカンゲキのススメはこちら)重なるところもあるかもしれないけど、青年団について何か説明できることはあるかな、O君。

O君:はい、さすがに僕もこれまでの観劇経験を通して、青年団が現在の演劇界にとても大きな影響を与えていることは分かっています。青年団は作・演出を手がける平田オリザさんが率いる劇団で、平田さんが提唱している「現代口語演劇理論」という独自のメソッドのもとに作品が組み立てられています。

Kさん:そうね、だてにO君もこれまでいろいろな演劇を見てきたわけじゃないわよね。じゃあ「現代口語演劇」というのはどういったものか分かるかな?

O君:えっと、演劇って日常話すような言葉とは少しちがった状況を分かりやすく説明するような台詞を、役者さんが観客に向かって聞こえるように発声することが多いですよね。
でも「現代口語演劇」はそんな舞台特有の言葉や身体ではなく、私たちの日常により近いリアルなものを目指していると思います。代表的な手法として上げられるのは、より日常会話に近い台詞、音楽を使用せず集中しないと聞き取れないほどの声量、同時多発で起こる会話、観客に背を向けて話す役者、観客が劇場に入るとすでに役者が舞台上に出ていたりなどで、それまでの演劇では試されてこなかった新しい表現方法を実践している・・・という感じでしょうか。

Kさん:O君よく勉強できているわね。私は青年団がそれらの方法を通して、舞台上で表現されているものの質感をよりリアルな感触として感じとってもらおうとしているように感じるわ。青年団の作品はいろいろな場面や状況を設定したものがあるけど、舞台上で提示されているものの多くは「人の集う場」なのよ。その場の中で様々な人間関係や感情の動きが繰り広げられていくのよ。

O君:なんとなく分かるような気がします。青年団の舞台を見ていると、人間と人間の間に起こる、摩擦やすれ違いが登場人物の台詞やふるまいから読み取ることができ、そこから目には見えない圧倒的な距離感や焦燥感が立ち上がってくるようにいつも感じます。

Kさん:そうね、それらを否定することもなく肯定することもなく、常に提示しようと試みているのが青年団の特徴の一つといえるかもしれないわね。平田さんが「作品を作るときは、見ている半分の人が笑っていてもう半分は泣いているようなものをいつも目指している」とおっしゃっているのを聞いたことがあるけど、作品を見るととてもよくわかる言葉だと思うわ。

O君:そんな青年団の舞台は、とても綿密な計算と何度も行われる稽古の反復によって組み立てられています。僕は昨年公開された青年団と平田オリザさんの活動を追った想田和弘監督のドキュメンタリー映画「演劇1」「演劇2」を拝見したんですけど、稽古風景がすごいんですよ。

Kさん:どうすごかったの?

O君:平田さんの役者さんへの要求が、今の台詞をあと1秒早くとか、ではけの微妙なタイミングとか本当に細かい指示があって、それらに正確に反応する役者さん達の集中力や対応力もすごかったです。

Kさん:そうね、私も見たけど、青年団という劇団が日々どんな活動をしているのかがよくわかってとても興味深かったわ。それに平田さんの活動は作品を作るというだけではなくて、学校でワークショップをして演劇の重要性を広めたり、大学で教鞭を執って若い世代を育てたり、拠点としている「こまばアゴラ劇場」を運営したり、など本当に幅広い。

O君:そうですよね。さて今回上演される「もう風も吹かない」は今話に出てきた、10年前に平田さんが桜美林大学の演劇コースで教鞭を執っていたときに、その学生さん達の卒業公演のために書き下ろした作品です。これは初演時のパンフレットに掲載されていたのですが、平田さんは学生たちに「卒業公演に相応しくない、夢も希望もない作品を書いてやる」とおっしゃったそうです。笑

Kさん:あらO君、さらっと話をつなげたわね。舞台は、日本政府の財政が破綻寸前となって全ての海外援助が停止された202X年。架空の青年海外協力隊訓練所。最後の派遣隊員となる若者たちは先行きに不安をおぼえながらも「人を助けるとは」という究極の問題と向き合い、それぞれが自分たちの信じる生き方を模索していく姿が淡々と描かれているわ。
「もう風も吹かない」というタイトルからも分かるように、“風すらも吹かなくなった”行き場のないその場所で、彼らはどう生きていくのか、何を考えなければならないのかということを訴えかける、強い訴求力のある作品になっていると思うわ。

O君:設定は未来なのになんだか、今でも現実に起こりそうな話ですね。それにテーマとなっている「人が人を救うことができるのか」ということは普遍的な問題だと思います。

Kさん:そうね、作品の中でこのテーマについて何か取っ掛かりとなるような要素がいろいろと散りばめられていそうね。青年団の作品は、目に見えて分かりやすい希望や道しるべが提示されるというよりは、言葉の間や表情だったり、一見すっと流されてしまいそうな日常の隙間に救いが込められていると私は思っているの。お客様にも、その間だったり、濃密に淡々と流れていく時間を味わって欲しいです。

O君:それから、この作品は平田さんがJICA青年海外協力隊の検討委員を務め、実際の訓練所を視察したときに、訓練を受ける若者の姿を見て作品にしようと思ったことがきっかけだそうですね。初演時はこれを20代前半の学生を中心に演じられたというのだから、かなりリアルなものになったと思います。その作品を今回は青年団の役者さん達で演じるということですよね。脚本は同じでも作品の見え方はかなり変わるでしょうね。

Kさん:いいところに目をつけるわね。先日青年団の制作さんから聞いたんだけど、初演の時に学生だった出演者で卒業後に青年団に入団し、今回青年団の役者さんとして初演と同じ役を演じる方が何人かいらっしゃるそうよ。

O君:それはなんだか運命的なものを感じてしまいますね!あと僕が気になった点といえば今回のチラシで使われている写真なんです。吊橋に忘れ去られているような、捨てられているようなパスポートがいくつも散らばり、奥で女性が一人進んでいるというビジュアルで、作品世界の不安定さみたいなものが感じてしまいました。

Kさん:O君の着眼点はなかなか面白いわね!はいその調子!

O君:なんか乗せられている気もしますが・・・ちなみに今回11月8日のポストパフォーマンストークにご出演いただく「マームとジプシー」主宰の藤田貴大さんは桜美林大学のご出身で、在学当時この「もう風も吹かない」の演出助手を務められていたそうです。当日はどんなお話が聞けるのか、楽しみですね。

Kさん:最近劇団の主宰や役者の方で桜美林大学出身の方は多いもんね。演劇界の若い世代を育てるという意味でも平田さんの大学における功績は大きかったと思います。そんな成果の集大成としての作品が、青年団の本公演として上演されるわけだから、大注目の作品になるにちがいないわね。そして、大好評につき14日14時、16日18時、17日18時の回の追加公演が決定しているわ!チケットの売れ行きもかなり良いそうなので、気になった方は早めにチェックしてくださいね。武蔵野文化事業団でもチケットの取り扱いがあるので、ぜひ!


青年団『もう風も吹かない』は吉祥寺シアターにて11月7日~11月18日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までどうぞ!

青年団『もう風も吹かない』 公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/07/post-18.html
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青年団HP  http://s.seinendan.org/