カンゲキのススメVol.23 Pカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、3月2日より吉祥寺シアターで上演が始まるPカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』です。 


Pカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』 3/2(日)~9(日)
公演詳細→ http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/12/p.html

 

 

 

 

 

 

 

 

O君:こんにちは!まだまだ寒さが続く今日この頃、皆さんいかがお過ごしですか?暦の上では春となる3月を目前に、今回もオススメの公演をご紹介させていただければと思います。本日ご紹介するのはPカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』! Pカンパニーとして二度目の吉祥寺シアター公演となる本作では、吉祥寺シアターで上演することを想定しての作品となっているそうです。

Kさん:今回の目玉は何と言っても演劇界の巨匠・福田善之先生による“新作書き下ろし公演”ということね!御自身が約50年前に手がけた伝説的名作「真田風雲録」の“冒険的スピンオフ作品”と位置付けて、猿飛佐助という登場人物に光を当てた物語を書き上げました。本作は長きに渡って演劇界を牽引してきた福田先生による作・演出の新作公演ということで、注目が集まっているわ。

O君:僕も色々調べてきましたよ。はじめに今回上演される『猿飛佐助の憂鬱』の原型となった「真田風雲録」について辿ってみたいと思います。「真田風雲録」のお話をざっと紹介しますね。
慶長5年(1600年)、徳川家康の天下統一を決定付けた「天下分け目の戦い」の後の関ヶ原で、敗軍の武士たちと浮浪児たちが出会います。これが後の“真田十勇士”となるわけですね。数年後江戸幕府をつくり上げた徳川家康は、安定した政権を確立しつつありました。そんな時勢のなかで徳川家の支配外にあったのが、亡き豊臣秀吉の息子・秀頼。この秀頼を中心に慶長19年、徳川VS豊臣による「大坂冬の陣」が勃発します。豊臣方は全国の浪人たちを召集し、真田幸村と彼を慕う十勇士も活躍の場を求めて豊臣方に加わります。この戦いは各々の思惑により一旦和議が結ばれますが、その和議はほどなくして破れ「大坂夏の陣」が開戦。真田幸村率いる隊も自分らしい生き方を貫くため、最後の戦いへと突入していく・・・というお話です。

Kさん:O君、すごくわかりやすかったわ。成長したわね・・・グスン(ウソ泣き)

O君:Kさんバレバレなのでやめてください…。

Kさん:さて「真田風雲録」は1962年に演出家の千田是也さんが劇団「俳優座」の公演で演出を手がけたのが初演となるわ。翌年には加藤泰監督、中村錦之介主演で映画化もされているわね。最近だと2009年に蜷川幸雄さん演出で上演され、注目を集めたのが記憶に新しいかしら。50年前の作品が現在も上演される背景には、今も輝きを失わない作品の魅力があったからだと言えるわね。

Oさん:その通りだと思います。

Kさん:舞台が上演された当時の日本の社会情勢は60年安保闘争にあって、福田先生の言では“真田十勇士を通して当時の青年の生き様や葛藤、敗戦から安保闘争における精神構造を重ね合わせた”とのこと。「真田風雲録」では、戦いの中で豊臣方がどのように進退を決するかで意見が分かれるんだけれど、“敵である徳川がどういう動きを取ろうとしているのか”についてはほとんど描写がないの。実はそこが焦点で、「見えない相手とどのように戦っているのか」、「本当の敵はどこにいるのか」という当時の世相を反映していたとも言えるんじゃないかしら。
物語のなかでは実際の歴史と同様、豊臣方は内部崩壊のような形になるの。そんな豊臣方のなかでも唯一鮮やかな戦いを見せた真田幸村率いる「真田隊」が、当時の日本で巻き起こっていた60年安保闘争において最も戦闘的に戦った学生たちと対比して描かれているように思えるわね。

O君:ということは、皮肉かもしれませんがその一方で保身を一番に考え続けた豊臣方の幹部たちが“彼らの先鋭な行動を抑制している側の人間”として映ってみえるということですよね。

Kさん:おっ、今日のO君はどうしたのかしら。まさにその通りよ。

O君:先に出た福田先生の言葉が良く分かる説明ですね。その当時の政治情勢って僕はよくわからないのですが、「真田風雲録」ってもっと冒険時代劇みたいなものなのだろうなと思っていたんです。完全に先入観でそう思っていたんですが、手に汗握る攻防・・・思いもかけない策謀のある青春群像劇、娯楽時代劇…みたいな。現在でも真田雪村や真田十勇士による胸のすくような大活躍が取り上げられがちですが、実際のところ物語のベースとなるのは大坂城内部で起こる人間同士の心理戦なんですよね。

Kさん:そうそう。互いが互いの腹を探り合う様は、観ている側もドキドキハラハラしちゃうわね。そこが面白いんだけどね!

O君:それと「真田風雲録」関連で言うと、作家の北村薫さんがご自身で手がけた選書にこの作品を掲載しているんですよね。北村さんは“他人の心が読め、姿を消すこともできるという猿飛佐助と、霧隠才蔵の悲恋、さらには政治的には対立しながらも、心の中では真田十勇士らの破天荒な生き方に憧れていたとされている豊臣幹部をこの作品のポイントとして捉えた”と述べていたそうです。なんだかこの一文だけで世界観が感じられて泣いてしまいそうです。余談ですが僕、北村薫さんが好きなので、こういうつながりがあることを知ってとても嬉しかったです。

Kさん:よく調べたわね。もともと自分の関心があった作家から、演劇に繋げる領域を広げられるのは楽しいわよね。

O君:えへへ(にやける)

Kさん:気持ち悪いわね。

O君:グスン…。気を取り直して、ここまでざっと「真田風雲録」について辿ってみたわけですが、そのスピンオフ的作品として『猿飛佐助の憂鬱』が上演されるんですよね。Kさんはいち早く『猿飛佐助の憂鬱』の上演台本に目を通したそうですが(うらやましい!)「真田風雲録」と「猿飛佐助の憂鬱」を比べて何か感じることはありますか?

Kさん:そうね。まずこの2作品は、話の大筋は粗方同じで、登場人物の猿飛佐助が「他人の心が読める能力」を持っている点も共通しているの。そんな中でも『猿飛佐助の憂鬱』では、より佐助自身のアイデンティティ探しが深化しているように感じたわ。他人の心が読める能力は身に付けたくて身についたものじゃない。他人の心を推し量ろうとすることは大切なことだけれど、これによってどんな得があったかということはこの作品にはあまり書かれていないのよ。佐助自身、信頼を寄せている仲間にはこの能力を使わないようにしているし、作品を通して「人の心は揺れ動くもの」と佐助に語らせているの。福田先生は周りの人々との関係性が希薄になりつつある今の時代だからこそ、こうしたキャラクターをもう一度復活させたかったんじゃないかって思うわ。

O君:なるほどー。時代に翻弄されながらも、佐助は自らのアイデンティティを求めて悩み苦しんでいるんですね。この作品の見どころは、争いの時代を通して、人や社会との関わりについて自分の進むべき道を見出そうともがく猿飛佐助の姿にあるのかもしれません。

Kさん:今の時代を生きる私たちだからこそ、この作品からたくさんのメッセージを受け取れるんじゃないかしら。

O君:というわけでこの新作に挑むのが劇団「Pカンパニー」の皆さんです。所属する役者さんの多くが演劇プロダクションの木山事務所で活動されていたそうです。Pカンパニーは現在俳優の育成、スタジオ運営なども行っていて、様々なアプローチをもって今の演劇界を支えている劇団のひとつと言えると思います。

Kさん:そして物語の中心人物となる真田幸村と猿飛佐助という2人の人物を演じる役者さんを紹介するわね。まず真田幸村を演じるのが、声優としても活躍されている平田広明さん。前回の吉祥寺シアター公演にも出演してくださったわ。人気アニメ「TIGER&BUNNY」の主人公の声を担当したり、ジョニー・デップ出演作品の吹き替えをされていたりと大活躍よ。部下から慕われる魅力満載の真田幸村を演じるということで、平田さんの魅力も爆発すること間違いなし!

O君:そして主人公の猿飛佐助を演じるのがPカンパニーの林次樹さんです。木山事務所俳優養成所卒業後、2008年よりPカンパニーの代表を務めていらっしゃいます。俳優として舞台以外にもラジオドラマや映画に出演、海外ドラマの吹き替えも担当されているんですよね。男気を感じる味のある役者さんです。自らの道を求めて苦悩するという難しい役をどのように演じきるのか、注目ですね!

Kさん:Pカンパニーのけいこ場ブログを見てみると、今回の作品では演技だけでなく映像を用い、他にも殺陣や踊り、歌、人形、そして所作事などたくさんの見どころが詰まった内容になっているみたいよ。真田幸村、出雲のおくに、淀君などの衣裳も見どころのひとつのこと。

O君:また舞台上演より一足早く、小説版「猿飛佐助の憂鬱」が文芸社文庫から出版されています!今回の上演台本はこの小説版から抜粋して作られたものなので、小説版はボリューム満点の内容となっています。舞台前に少しでも早くこの世界を味わいたい!という方は是非書店等でお手に取ってみてくださいね。公演中は劇場ロビーでも小説の販売を行うみたいなので、ご来場される方は楽しみにしていてください!

Kさん:というわけで、Pカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』は吉祥寺シアターにて3月2日~9日まで上演されます!完売もしくは完売間近となっている回がございますので、お求めの際はご注意くださいませ。皆さまのご来場お待ちしております!


Pカンパニー『猿飛佐助の憂鬱』公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/12/p.html
PカンパニーHP http://homepage3.nifty.com/p-company/