カンゲキのススメVol.26 演劇集団 砂地『3 crock』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、5月9日より吉祥寺シアターで上演が始まる演劇集団 砂地『3 crock』です。 


演劇集団 砂地『3 crock』~河竹黙阿弥作「三人吉三廓初買」より~ 5/9(金)~12(月)
公演詳細→ http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/02/3-crock.html

 

 

 

 

 

O君:世間ではそろそろゴールデンウィークに突入といった趣がありますが、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。お休み。いい響きですねぇ♪

Kさん:なんだか元気そうね。ちょっと浮かれすぎていて心配だけれど・・・。ゴールデンウィークは何か予定があるの?どこかお出かけでもするのかな?

O君:いえ。・・・仕事デス。悲しい現実に引き戻さないでください。

Kさん:私もそうだった。聞いた私がバカだったわ。さっ、気を取り直して本題に入りましょう。

O君:吉祥寺シアターでは5/9(金)~5/12(月)にかけて、演劇集団砂地『3 crock』の公演が行われます。この作品、江戸から明治に掛けて活躍した歌舞伎狂言作者の河竹黙阿弥が書いた「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」を元につくられた作品なんです。この原作を大胆にアレンジして現代劇としてお送りします!

Kさん:物語の舞台を近未来に置き換え、大災害後の廃墟で罪を背負った三人の男女が交錯するというストーリーとして再構築するそうよ。かたくてもろい絆を結んだ三人と、彼らの因果ともいえる父親たち。失われた10年の間に巡りに巡った因果を紐解いた先には、救いがあるのか!――と、ここまでのあらすじは、吉祥寺シアターHPの公演情報にも掲載されているけど、そもそも「三人吉三廓初買」という原作がどんなお話なのか、O君、もちろん調べてきたわよね?

O君:もちろんでありんす!

Kさん:…続けてください。

O君:「三人吉三廓初買」は歌舞伎の演目で、今から約150年くらい前に江戸市村座という団体が演じたのが初演だそうです。河竹黙阿弥は、盗賊を主人公とした歌舞伎もの、いわゆる「白波物(しらなみもの)」を得意としていた作家で、幕末から明治初期に活躍し、シェイクスピアや近松門左衛門と並び称された作者なんですよね。

Kさん:当時の世相や人情を描いた「世話物」や、文明開化の世相に取材した「散切物」などでも高い評価を得ていたのよね。江戸歌舞伎を集大成するだけでなく近代劇への橋渡しをした人物とも言われているわ。

O君:さて「三人吉三廓初買」について、まず“吉三”という言葉は人の名前を指しているんですよね。この物語の中心人物である和尚吉三(おしょうきちさ)、お嬢吉三(おじょうきちさ)、お坊吉三(おぼうきちさ)という三人のことを言っています。彼らはいずれも盗賊で、この三人を中心に、彼らを取り巻く者たちの複雑な人間関係と、因果応報の嵐に翻弄される悲劇が「三人吉三廓初買」の大筋となっています。

Kさん:ざっくりとした説明ありがとう。他には何か調べてきた?

O君:えっ・・・(資料をサッと集め始め慌てふためく。)

Kさん:O君ったらわかりやすいわね。まあいいわ。実際この作品は全7幕まであるとても長いお話なの。ポイントは百両の金と“庚申丸(こうしんまる)”と言う名の刀。これらを巡って三人の運命が複雑に絡み合っていくわ。それぞれの血縁関係とその因縁が明らかとなり、最終的には誰にも止められない悲劇へと発展していくのね。今では三人の吉三が始めて顔を合わせる「大川端庚申塚の場」の上演がほとんどで、そこが数ある歌舞伎の演目の中でもとびきり人気のある場面となっているわね。

O君:その一幕だけを上演する場合には「三人吉三巴白浪」と言うタイトルに代わるんですよね!僕もそれは調べてきました!この上演演目の有名な科白(台詞)で「月も朧の白魚の篝(かがり)も霞む 春の空…」というのがありますよね。

Kさん:よく知っているじゃない。この科白は、歌舞伎至上「名科白中の名科白」として知られているわね。

O君:「大川端庚申塚の場」では、女装をしたお嬢吉三がとある女性から百両の金を奪った勢いで、彼女を川に落としてしまいます。このシーンで先ほどの「月も朧の…」の名科白をお嬢が高らかに歌いあげます。この科白は荒っぽく約してしまうと「すっかり春っぽくなったこんな夜に、思いもかけず大金が手に入ったから、こりゃ春から演技がいいわい」ということを言っています。お金を奪って更に女性を川に突き落とした後にこの台詞が出てくるわけですから、さすが盗賊といったところですね(笑)

Kさん:本当、なかなかひどいことを言っているわね。(笑)さて物語の続きなんだけど、実はその一部始終を目撃していた人間が二人いたの。1人は、借金のカタとばかりに奪った庚申丸という刀を携えた金貸しの太郎右ヱ門。太郎右ヱ門は、百両欲しさに刀でお嬢に襲いかかりますが、逆にお嬢吉三に刀を奪われてしまい、そのまま一目散に逃げ出します。そしてそのもう1人と言うのが、この様子を陰から見ていた盗賊“お坊吉三”。武家出身のお坊ちゃま盗賊よ。
盗んだ金をめぐりお嬢吉三とお坊吉三は腕づくの勝負へ発展。一触即発!というその時、思わぬ仲裁に入ったひとりの男。彼こそが“和尚吉三”。しばらく収まりのつかなかった二人も和尚の男気に心打たれ、百両は一旦は和尚吉三が預かることとなるの。と大まかに話してきたけど、要約するとここまでが「大川端庚申塚の場」のあらすじね。

O君:こうして三人の吉三は出会い、ここから悲劇へと急進してゆくんですね。

Kさん:今回の『3 crock』でも三人の男女が偶然に出会うところから物語が進んでいくみたいだから、この辺りの話を頭に入れておくと少し役に立つかもしれないわね!


 

 

 

 

 

 

 


O君:この辺りで劇団紹介に移りたいと思います!演劇集団 砂地は演出家・船岩祐太さんを中心に結成されたプロデュース集団です。僕も何作か拝見したのですが、第一印象は「渋い!重厚!緊張感!」という感じでした。文字にすると伝わりにくいかもしれませんが、20代の演出家の方とは思えないほどどっしりとした舞台空間で、観る側の五感がビシバシ鍛えられるような舞台でした。肩の力を抜いて見るような明るく賑やかな芝居ではありませんが、演劇という表現方法が持つ力、観客に直接的に訴えかけてくるパワーみたいなものを見せられた気がしました。
さて演出の船岩さんは、劇団「地人会」代表の木村光一さんや演劇企画集団「THE・ガジラ」主宰の鐘下辰男さんに師事し、2007年に演劇集団砂地を立ち上げました。節々で感じられる円熟した演出は、このお二人に師事していたということを知ると腑に落ちる部分がある気がしますね。劇団としても2013年1月にシアタートラムネクストジェネレーションにも選ばれていて、演劇界から注目を集めています。

Kさん:船岩さんは20代の若手演出家。若い船岩さんの目を通して見た世の中のリアルな部分を重厚な演出で表現しているから、上の世代のお客様にも評判が良いと思うわ。劇団としても“古典の再発見”をモチーフに掲げているけれど、古典作品を再構築して現代劇として昇華させられる若手演出家というのはそんなに多くはいないと思うの。

O君:これまでにもシェイクスピア作品や鶴屋南北の古典作品に挑戦されていますよね。今後より注目されていく演出家のひとりだと僕は思っています!(ファイヤー!)

Kさん:(熱いっ!)今日のO君は熱血系ね・・・。

O君:さて作品の内容についてなんですが、Kさん、見どころはずばりどこでしょうか。

Kさん:ずばり!今回の作品のモチーフとなるのが先にも出てきた「庚申丸(こうしんまる)」という刀ね。因果の大元となっているこの刀、原作では10年間行方不明となっていた刀なの。この10年間というのがポイントなんだけど、O君は「失われた10年」という言葉は聞いたことある?

O君:はい。確か10年以上の長い期間にわたって、国や地域の経済が低迷することを言うんですよね。

Kさん:そうよ。日本では1990年代前半から2000年初頭までの期間を表すわ。今では「失われた20年」という言葉もあるけれど、当時の日本ではバブル景気の終焉とともに景気が低迷し、大手金融機関の破綻や従業員の大量解雇、就職氷河期の到来などがあった10年間があったのよ。

O君:今は2014年、その頃から随分と時間は経ちましたけれど、今の日本の景気が完全に回復したかと言われると素直に頷けないところがありますね…

Kさん:わたしもそう思うわ。現代に生きる私たちは、どこかで「失われた10年」を完全に終結させられないまま生活を送っているような気もするわね。今回の『3 crock』では、「失われた10年」を経た現在の社会情勢や、その社会に振り回されながら生きるわたしたちの世界を、「三人吉三」に出てくる庚申丸や三人の盗賊に重ね合わせて描いた作品になっているみたいよ。

O君:なるほど…僕はその当時はまだ小学生で、ニュースなどで銀行の倒産や合併の様子、他にも就職氷河期のニュースを見た記憶がうっすらと残っています。その時代に社会人や学生だった人たちや、はたまた僕のように物心つく前の子どもだった人々もたくさんいるわけで、そういう人々が劇場に一同に集まって今回の作品を観るということは、当たり前のことかも知れませんがとても意義のあることですね。

Kさん:そうね。きっと「三人吉三」の物語の向こう側に、わたしたちが生きる社会が抱えている様々な問題点が見えてくると思うわ。

O君:さすがKさん!勉強になります!

Kさん:O君の何倍も長く生きてるからね・・・(遠い目)

O君:ところで砂地はプロデュース集団ということで、出演者の方々は毎回オーディションやワークショップで集めているそうですね。というわけで今回もユニークな出演陣が揃っているんですよ!なんといっても物語の中心となるのが吉三の三人ですが、まずは様々なジャンルで縦横無尽の活躍を魅せる実力派俳優・小野健太郎さん、それから演劇企画集団THE・ガジラなどで活躍する若手女優・とみやまあゆみさん、そして俳優座の若き精鋭・野々山貴之さんの三人が演じ上げます。

Kさん:物語のキーマンでもある土左衛門伝吉役は、無名塾出身で映画やナレーションでも活躍している俳優の高川裕也さんが演じるわ。それぞれの運命が複雑に絡み合いながら疾走する物語に、是非期待して欲しいです。

O君:公演は4日間と短いので、是非早いうちにチケットをゲットしていただきたいですね!なお5月10日(土)19時、11日(日)19時の回にはアフタートークが行われます!そちらも合わせてお楽しみくださいね!
というわけで、演劇集団 砂地『3 crock』は吉祥寺シアターにて5月9日~12日まで上演されます!初日の9日は残券が少なくなってきているので、お求めの際はお気をつけください!チケットのお求めは武蔵野文化事業団チケット予約までお電話もしくはネット予約で絶賛受付中です!皆さまのご来場お待ちしております!


演劇集団 砂地『3 crock』公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/02/3-crock.html
劇団HP  http://www.sunachi.net/