カンゲキのススメVol.30 アマヤドリ 『非常の階段』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、9月12日より吉祥寺アターで上演が始まるアマヤドリ『非常の階段』 です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
アマヤドリ『非常の階段』 9月12日(金)~9月21日(日)
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/06/post-27.html









O君:早いものでもう9月ですね!少しずつ夏の暑さが弱みつつある今日この頃ですが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。さて、今日はカンゲキのススメということで、アマヤドリ『非常の階段』を取り上げます!はりきってまいりましょう!

Kさん:アマヤドリは今年で三年連続吉祥寺シアターに登場の劇団ね。これまでと重なるところもあるかもしれないけど、何か劇団について説明できることはあるかな、O君。

O君:はい、アマヤドリは作・演出を手がける広田淳一さんが2001年東京大学在学中に学生劇団を母体に「ひょっとこ乱舞」という名前で立ち上げた劇団で、その後11年間活動を続け2012年に“大爆破”と称し、現在の「アマヤドリ」へと劇団名を変更し活動を続けています。

Kさん:さすが、ここ数年毎年吉祥寺シアターで公演を行っているアマヤドリだけあって説明もスムーズね、O君。昨年は『うれしい悲鳴』『太陽とサヨナラ』の二本立て公演を行ったことで記憶に新しいわね。ちなみにアマヤドリは普段の劇場で行う本公演だけではなく、池袋にあるスタジオ空洞という稽古場の運営にも関わっていて、「雨天決行」という劇団員が中心となった小規模の公演も行っているのよ。ちなみに前回はヘンリック・イプセンの『ヘッダ・ガーブレル』という作品を広田さんが演出をして、とても見ごたえのある作品だったわ。

O君:僕もあの作品ははじめて見たんですけど、面白くて集中力が途切れることなく見ることができました。それとアマヤドリは最近これまでの作品の戯曲を公開するプロジェクトというのを始めたんですよね。音楽の無料ダウンロードや著作権フリーなどインターネットの普及で芸術作品の価値や流通の仕方も変わってきているので、演劇も少しでもそういった流れに対応できればという広田さんの想いがあって実現させたそうよ。それについて詳しいページがこちら

Kさん:HPに載っているなぜ戯曲を公開するに至ったかとページを読むと、広田さんが演劇に対して真摯に向き合っているのがとてもよく分かるわね。そんなアマヤドリの活動ですが、作品の特徴として何か説明できることはあるかな?O君

O君:はい、アマヤドリの公演は広田さんが毎回書き下ろしたオリジナル戯曲に群舞やダンスを取り入れ、何層にも積み重ねられた場面展開でテンポ良く物語が進行する作品を特徴としています。では突然ですが、そのアマヤドリの群舞シーンの映像がyoutubeにアップされているので、ご覧いただきましょう↓

Kさん:とても良い映像を見つけてきたわね。これは上にも上げた昨年吉祥寺シアターで行った新作「太陽とサヨナラ」のダンスね。物語の途中で不意に挟まれるこの群舞シーンは、見ている観客の目を引き付けて舞台上へより一層引き込む力があるように感じるわ。

O君:そうですね、この“全員で同じ動作に動く”という行為は見ている観客にある種のカタルシスを生み出しますよね。これを実際にやっている役者さん達の運動量は大変なものがありそうです。

Kさん:そうね、アマヤドリの舞台は場面転換が多いものね。だからこそ群舞をはさむことにより、舞台上の役者さんたちの身体や動きが、見ている私たちにもズッシリと重みが増して見えてくるのかもしれないわね。それにアマヤドリの舞台設定の特徴として、日本なんだけどどこか近未来のような現代とは違う設定で物語が展開されていくことが多いから、演じている役者さんの身体が少しでもリアルに見えるというのはすごく良い効果なんじゃないかしら。

O君:さすがKさん、分析が的確ですね。惚れ惚れしますよ~

Kさん:・・・ぐっ。(苦しそうな顔をして)そして今回の『非常の階段』に話を移そうと思うわ。チラシにも載っているからご存知の方も多いかもしれないけど、今回は「悪と自由」のシリーズという三部作の第二弾にあたる作品になるそうね。O君、そのあとの説明をお願いできる?

O君:おぉ、来ました!恒例の無茶振りタイム!そうなんです、今年の4月に「悪と自由」のシリーズの第一弾ということで、『ぬれぎぬ』という作品を発表したアマヤドリ。実はこの作品これまでのアマヤドリのスタイルとしてはかなり異例なことに挑戦した作品なんです。まずこの公演はシアター風姿花伝という劇場で行われたんですが、公演期間がなんと4月1日から23日までなんです!

Kさん:ほぼ一ヶ月ね!

O君:そのと~り!小劇場でこれだけのロングランを行うことはめったにないんですよ。だから作品も公演期間中のはじめと終わりでは変化があったのではないでしょうか。ちなみにこの公演の際にフリーパスという期間中何度でも作品を鑑賞できるチケットの販売をはじめたそうで、今回の『非常の階段』でも継続しているのでぜひみなさまチェックをお願いします。(プチ情報:2回見ればもとがとれるみたいです)

Kさん:O君、絶妙なタイミングで宣伝を放り込んでくるのね、さすが。でもたしかに作品って一回だけ見るのと複数回見るのでは理解度がちがうし、また違った見え方もしてくるからフリーパスは断然おすすめよね!

O君:Kさん、ご協力ありがとうございます!そして話を『ぬれぎぬ』に戻すと、アマヤドリの舞台としては異例でなんと先ほど説明した群舞のシーンはなく、それどころか音楽さえも使わずに、役者さんの対話劇のみで話は進行していったんです!

Kさん:たしかにそれは近年のアマヤドリの舞台を見ている人は少し驚いたかもしれないわね。

O君:内容も出演者全員がどこかに悪の部分を持ってピンと張り詰めた空気感の中、淡々と、でも着実に進む物語で、人間の中にある様々な種類の悪をぎゅっと搾り出したような作品でした。

Kさん:その『ぬれぎぬ』を経て、今回の『非常の階段』よね。今回の公演について何か情報を得てるのかな?O君。

O君:僕の得た情報によると、まず今回は前回の『ぬれぎぬ』のような静かな対話劇というよりは、いつもの群舞・ダンスありのアマヤドリのスタイルに戻るとのこと。そして物語はこれは前作に引き続きになるんですが、悪い人たちがガンガン出てくるらしいですよ!

Kさん:どんな悪い人なのかな?

O君:どうも振り込め詐欺のグループを中心とした物語になるようです。このあとはシークレット!実際に舞台を見るまでのお楽しみです!

Kさん:シークレットという名の情報不足なんじゃないのかなぁ。(疑いのある目で見つめる)

O君:おっと、さすがに尊敬する先輩、Kさんと言えども聞き逃せない発言ですね~よし、ここでとびっきりの隠しネタを登場させちゃいますよ!実は先日アマヤドリの稽古場へお邪魔してきたのでそのときの様子をレポートします!まずはこの写真をご覧ください↓

 

 







今回の物語は大きく分けると、ある家族と詐欺グループのふたつが軸となり展開していくのですが、稽古場を二つに区切って、奥が詐欺グループ、手前では家族のシーンの稽古が行われていました。

Kさん:すごい二刀流ね!

O君:そうなんですよ。家族の場面では今回は三姉妹が出てくるので、時折演出の広田さんご自身の兄弟観やエピソードを役者さん達とともに話し合いながら、舞台上の登場人物とそれを演じる役者さんの内面や感情を埋める作業をしているように見えました。ちなみに広田さんは上にお姉さん、下に妹さんという女性二人に挟まれた兄弟構成だそうで、深いエピソードが飛び出していましたよ。そしてこちらが詐欺グループの練習風景↓

 









Kさん:この写真はセット?

O君:いえちがいます!稽古場のある建物の一室で、まさに悪い人たちが根城としてそうな場所だということで一時的に稽古場として使っていたところです。ちなみに一番右に写っている後姿が演出の広田さんです。

Kさん:ありゃま、もうこれをもうそのままセットにしていいぐらいの雰囲気出てるわね。

O君:そうなんですよ、この詐欺グループの場面では登場人物はみんなどこか悪の部分を持っている人たちなので、座る位置や立ち上がるタイミングなど事細かにチェックをして、オーバーになりすぎず、かといってその人物の特徴が埋もれてしまわないような入念な演出が印象的でした。

Kさん:そうね、たしかに手の動き一つとってもある場面の流れを作るには必要な要素だろうし、細やかな視点で演出をする広田さんとそれに一つ一つ答えていく役者さんの演技力に脱帽ね!

O君:こうやって稽古場を見せてもらうと、舞台上で起こるほんの些細なことも見逃せないなぁと見る側としては気が引き締まる思いです!ちなみに今回は3時間半ぐらいの間稽古を見せてもらったのですが、上にあげた二つの場面を詰める作業で終わってしまいました。いろいろな意味で演劇は時間との戦いだなぁと実感しました。
↓こちらは最後の稽古が終わって全体ミーティングの様子です。今回出演者が総勢約20名の大所帯、どんな作品になるのか楽しみですね。

 









Kさん:稽古場レポートをありがとう!私は現段階の台本を読ませてもらったから作品について少し説明するわね。今回は「自由」と引き換えに喪失してしまった闇に焦点を充てて物語が構成されているのね。そして前回に引き続き今作も社会の持つ闇の部分に焦点を充てた作品であることは間違いないと思うわ。

O君:ふむふむ。

Kさん:前回公演『ぬれぎぬ』にはストーカー殺人、安楽死殺人、出産前DNA鑑定といったシーンが出てたわよね、これは言ってみればここ10~20年の間で社会的なテーマとなってきた諸問題じゃない。今回の『非常の階段』でも現代の社会における問題や事象と結びついた作品になるんじゃないかしら。

O君:たしかに現実に目を向けると、経済の低迷を発端とした雇用環境の悪化や所得格差の増大、少子高齢化や地域社会の崩壊など出口の見えない問題は山積みですよね。

Kさん:そうね、そうした意味ではこの公演にも出てくる振り込め詐欺って若者の雇用不安の増大ももちろん関係しているだろうし、伝統的な地域共同体が希薄になった現在、同じような境遇を持つもの同士が擬似家族を形成して、架空の家族の一員を装って電話をかけるという手口もある意味今の日本の情勢を反映した出来事といえるかもしれないわね。これ以降は実際に作品を見た方それぞれで感想や思考をめぐらせてほしいわね。さて、それではそろそろ終わらなくちゃね、最後にO君締めてちょうだい!

O君:おっといきなり振ってきましたね。最後までお読みいただきありがとうございます!いつにも増してボリュームのあるカンゲキのススメはいかがでしたか?ということでアマヤドリ『非常の階段』は9月12日からはじまります。劇場でみなさまをお待ちしております~

『非常の階段』は吉祥寺シアターにて9月12日~9月21日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までどうぞ!


アマヤドリ『非常の階段』公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/06/post-27.html
チケット予約はこちらからどうぞ! https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
アマヤドリHP  http://amayadori.sub.jp/