カンゲキのススメVol.34 デュ社旗揚げ公演『ふたつの太陽』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、12月5日より吉祥寺シアターで上演が始まるデュ社 旗揚げ公演『ふたつの太陽』です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
デュ社旗揚げ公演『ふたつの太陽』 12月5日(金)~12月7日(日)
公演詳細→http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/09/post-28.html

 








O君:11月も後半になりまして日増しに寒さが募ってきましたけれど、皆様お風邪など召されてはいませんでしょうか?

Kさん:いつにも増して丁寧な入りねぇ、O君。それにしても、本当に寒くなってきて風邪にも注意しなくっちゃね。私もマフラーとコートを出して真冬に向けて準備万端よ!ところで肝心のO君は元気かな?

O君:えっ・・・それはどういう?

Kさん:ほらっ!なんとかは風邪をひかないとかいうじゃない?

O君:・・・。いじわるだなぁ。僕だってつい最近まで風邪で体調を崩していたんだから。少しはいたわってくださいよ。はっ・・・はくしょん。ほら風邪がぶりかえしてきちゃったらKさんの責任ですからね!

Kさん:いえいえ。そんなことで私は甘やかしませんから。(きっぱり!)さぁそんなことはさておいて、さっそく12月5日からはじまるデュ社旗揚げ公演『ふたつの太陽』について説明を進めていこうかしら。O君、準備はいい?まずは今回の公演デュ社という団体の旗揚げ公演になるのね。念のため説明しておくと、“旗揚げ公演”というのは、団体を立ち上げるにあたってのはじめての公演ということね。つまりとてもスペシャルな、貴重なものになるということよね!そしてこの団体を立ち上げたのが、向雲太郎さんなのよ!では続きをO君、お願い!

O君:おっといきなり来ましたね、Kさんの得意技むちゃぶり!でも大丈夫ですよ、しっかり予習してきてますから!向雲太郎さん(名前の読み方は、むかいくもたろうさんです)は、舞踊家・振付家・演出家として活動されている方で、もともとは“大駱駝艦”(だいらくだかん)という舞踏カンパニーに所属されていました。大駱駝艦は40年以上の歴史を持つ日本を代表する舞踏カンパニーで、ここ吉祥寺にも“壺中天”(こちゅうてん)というスタジオを持って活動をしているなど、武蔵野市にもとても縁のある団体なのです。

Kさん:さすがしっかり予習してきるわね。ちなみに大駱駝艦を率いているのは、近年テレビや映画などでも活躍し、異才を放っている“麿赤兒”(まろあかじ)さんなのよ!麿さんといえば昨年度吉祥寺シアターで行われたティファクトリー『荒野のリア』に主演されていたことでも記憶に新しいわね。ところでO君“舞踏”ってどんなものか説明できる?

O君:う~ん、なかなか難しそうですけど・・・舞踏の創始者は“ 土方巽” (ひじかたたつみ)さんですよね。またその後、大野一雄さんや先ほど名前が挙がった麿赤兒さんらが中心となって現在まで脈々と引き継がれている身体表現の一つですよね・・・

Kさん:少しざっくりとした説明ね。補足すると“舞踏”は芸術舞踊の中の1ジャンルとして成立していて、舞踏の創始者・土方巽さんによって日本で始められたものよ。当初は“暗黒舞踏”と言われていたの。それまでのダンスというと、ヨーロッパやアメリカを中心とした西洋人の身体と結びついたものだったから、西洋舞踊の真似ではない、真に日本的なダンスの創生を目指して土方さんが始めた踊りが舞踏の起源と言われているのね。

O君:ええっと・・・なかなか専門的な話ですね。一般的にダンスというとまず思い浮かべるのは音楽に合わせて踊ったり、バレエなど西洋中心の文化というイメージがありますが、舞踏はそういったものとは少しちがってより日本の歴史や身体性を起源とした表現といえるんでしょうか。ちなみに表面上のことですが、舞踏というと僕は、ダンサーの風体が、剃髪(ていはつ)にして白塗りをトレードマークにしたイメージがありますね~。

Kさん:確かにそういったイメージもあるわねぇ。たしかに表面的にはそういう印象が強いかもしれないけど、舞踏も見ていくとなかなか奥が深いものなのよ~。

O君:なんとなく舞踏についての理解はできました!ただ今回の公演は舞踏から身体表現をはじめた向雲太郎さんが率いるカンパニーの旗揚げ公演ということなので、舞踏やダンスと一言には言いきれない舞台になる予感がしますね!

Kさん:O君良いところに目をつけるわね、私も同感よ。なぜかっていうと昨年行われた向さんのソロ公演『舞踏?』では、さきほどO君が言ってくれたような白塗りで向さんが舞台上に登場しているんだけど、その白塗りを落とすところからスタートするのね。それはこれまで大駱駝艦に所属し、舞踏のフィールドで活動していた向さんが、舞踏を一度脱ぐみたいなイメージに私は見えたのね。ソロとして、自身のカンパニーとして、次の段階を目指す向さんの姿勢のようなものを感じたわ。

O君:さすがKさん、的確な判断ですね。たしかにこれまでのソロ作品を見ていても、物語を感じさせてくすっと笑ってしまうような演出があったり、壮大な映像を使ったりなどジャンルに縛られることなく、より刺激的な舞台を目指していますよね。それにこれまでの向さんの活動も、音楽や映像のアーティストとのコラボレーション作品を共同製作したり、小説家・戌井昭人さん率いるパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」にも頻繁に出演されています。こういったものを見ても、向さんの興味や活動が多岐にわたっていることが分かりますね。だから今回もいろいろなエッセンスの詰まった舞台になると思います!
ところでカンパニーの名前“デュ社”って、モダンアートの先駆者であるマルセル・デュシャンと何か関係があるのでしょうか?

Kさん:いいところに目をつけたわね。O君って確か、現代美術にも興味があるのよね?デュシャンの作品とか聞いたこととかない?

O君:美術館に便器が置かれて「泉」と称して展示されたのが、一番有名じゃないですかね。この他にも、大量生産された既製品を用いた一連のオブジェ作品を「レディメイド」と称して作品を発表していますね。

Kさん:さすが詳しいわね!私たちの日常の中にある物をあえてそのまま作品として美術館に展示することによって、これまで見えなかったイメージが立ちあがったり、立ちあがらなかったり、そういうことを観客に感じさせることを狙った作品といえるわね。

O君:でも舞台も同じように、日常僕たちが認識している当たり前の物や身体を中心に、それらを組み合わせて作品として昇華させているという一面もあるから、共通点があるのかもしれないですね。

Kさん:デュ社という名前はデュシャンとも関係があるようだけど、”Deux社 〜 ふたつのやしろ”という意味の造語というのが本当のところらしいわよ!


《さらにデュ社『ふたつの太陽』に迫る!》


Kさん:ところで、今回の作品は、向さんのご親族が広島の原爆を経験されていて、その体験をモチーフに作品を製作すると聞いているわ。チラシにも書いてあったと思うけれど公演名である『ふたつの太陽』の、この“ふたつ”とは何か意味はわかるわよね?

O君:もちろんです。1945年8月6日に広島で起きた世界で最初に落とされた原子力爆弾のことですよね。あの日、晴れ渡る空にある太陽そのものと、空に爆発したとき、一瞬に光った閃光のことをまるで太陽がふたつ出現したみたいだったという描写ですよね。

Kさん:そうね。私も学生の頃広島の平和記念資料館を訪れたときの衝撃は今でもよく覚えているわ。平和記念公園にあった“安らかにお眠りください。二度と同じ過ちは繰り返しませんから”という碑の文言に胸が締め付けられる思いがしたのよ。

O君:同感です。チラシには“おわりのはじまり”というコピーも印象的に書かれていますよね。原子力というまだ人類が制御できない力を得てしまったことで、何万人もの命が一瞬にして奪われてしまうという恐怖。と同時に命を落とさず済んだ方でも、重い原爆症に苦しんでいるという事実は長い年月を経てもこの問題は継続していますからね。

Kさん:たしかにそうね。目の前の利益だけを追求し、その結果の一つとして広島の原爆があるとしたら、そこまで人間を追い詰めたものは何だったのか、そこにある狂気や愚かさなど人間の奥底にある様々な感情を舞台上に立ち上げることになるんじゃないかしら。そういえば、今回は向さんももちろん出演されるんだけど、他の出演者も豪華よね!

O君:そうですね。まず国内外で長く活躍しているアーティスト集団「ダムタイプ」のメンバー川口隆夫さんです。ダムタイプといえば、現在東京都現代美術館で開催されている企画展に新作を出品したことでも話題になっていますよね。また「舞踏団 トンデ空静」を主宰し、「渋さ知らズオーケストラ」等にも出演されている松原東洋さん、「まことクラヴ」や「ハイリンド」、「リリパッドアーミー」などで活躍する江戸川萬時さん、東京と京都を拠点に自身が主宰するダンスプロジェクトを立ち上げるなど精力的な活動をしている京極朋彦さん、先日「まさおか式」という自身のカンパニーを旗揚げされたばかりの政岡由衣子さんなど、ベテランから若手までが集結しています。

Kさん:ありがとう!それに今回の舞台美術には青年団の舞台でもおなじみの杉山至さんが参加しているし、そのあたりもチェックする必要があるわね!この作品は決して明るいものなるということはないと思うけれど、人間に眠る普遍的な狂気や暴力など様々な感情や衝動を感じることができる、一瞬たりとも目が離せない刺激的な舞台になること、まちがいないと思うわ!

ということで、デュ社『ふたつの太陽』は吉祥寺シアターにて12月5日~12月7日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までどうぞ!


デュ社 旗揚げ公演『ふたつの太陽』公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/09/post-28.html
チケット予約はこちらからどうぞ! https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
デュ社HP http://www.soulplaying.info/