カンゲキのススメVol.40 青年団『冒険王』『新・冒険王』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、6月12日(金)より吉祥寺シアターで上演が始まる青年団『冒険王』『新・冒険王』です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
青年団『冒険王』『新・冒険王』6月12日(金)~6月29日(月)
公演詳細→http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/03/post-34.html

 








O君:こんにちは!ついに今年も梅雨がやってきそうですが、みなさん梅雨対策はばっちりですか。 

Kさん:毎年やってくるとわかっているとはいえ、やっぱり梅雨のじめじめはやんなっちゃうわね。

O君:Kさんのじめじめ攻撃も、毎回やってくるとわかっているとはいえ、イヤになってきますね・・・

Kさん:なにか言った?

O君:いえ!なんでもありませんよぉ!!さて、今回もカンゲキのススメ、進めていきましょー!!

Kさん:いつも通り無理やり押し通してきたわね・・・さて、では気を取り直して、今回の40回目を記念するカンゲキのススメは青年団の登場です!青年団の紹介はこれまでも『アンドロイド版 三人姉妹』(2012)、『もう風も吹かない』(2013)、『暗愚小伝傳』(2014)ときて、もうすっかりお馴染みになったわよね。

O君:青年団を率いる平田オリザさんは、最近では人気アイドル・ももいろクローバーZ主演『幕が上がる』の映画と舞台で脚本を担当するだけでなく、ももクロの演技指導をするなど、演劇の裾野を広げる活動にもさらに力を入れていますよね!

Kさん:舞台版『幕が上がる』は大盛況のうちに終わったそうね。なんでも、『幕が上がる』効果で「同時多発会話」、「現代口語演劇」という言葉が演劇をやっていないいろんな人たちにも広まったとか。ちなみに、映画版『幕が上がる』は、6月に早稲田松竹で上映される予定だそうよ。まだ見ていないひと、見逃してしまったひとは要チェックね!ほかにも最近では、河出書房新社から出ている『文藝別冊』に、平田さんの総特集が組まれているわ。
ところで、去年の『暗愚小傳』もかなり印象的だったけれど、今回の作品もまた気合が入ったものになっているのよね?

O君:そうなんです!今回上演される作品は、平田さん唯一の自伝的作品といわれている『冒険王』の再演(初演:1996年)と、韓国の劇団「第12言語演劇スタジオ」との共同製作でお送りする新作『新・冒険王』の、豪華二本立てとなっているんです!どちらの作品もイスタンブールの安宿を舞台にしていて、激動の社会情勢のなか、放浪を続ける途中イスタンブールで足止めをくらい、安宿の一室で寝泊りする若者たちの倦怠と喧騒から、“日本人の姿”と“日韓の現在”を描き出す群像劇となっています。

Kさん:とても興味深い内容になっていそうね。今回『新・冒険王』を共同製作する、第12言語演劇スタジオを主宰するソン・ギウンさんは、日本とも関わりが深いのよね?

O君:はい。ソン・ギウンさんは1999年に日本へ留学し、そこで日本語を学びました。その後、平田さんの戯曲の翻訳や、野田秀樹さん、東京デスロックの多田淳之介さんとコラボレーションするなど、日本演劇との交流や共同製作に深く関っているんですよね。2011年には、平田さん原作の『カガクするココロ―森の奥編』を韓国で上演し、大韓民国演劇大賞優秀作品賞を受賞するなど、韓国演劇界で注目を集める演劇人のひとりです。

Kさん:最近では東京デスロックとの共同製作『カルメギ』が記憶に新しいわね。日本と韓国の関係はとても難しいとは思うけれど、そこにあえてメスを入れて、日韓の関係性や対話を見つめ直そうとする試みは、とても印象的だったわ。そんなソン・ギウンさんと、対話の重要性を訴えつづける平田さんがコラボすることで、どんな作品が生み出されるか、いまからとても楽しみね。

O君:そうですね!それから、僕とKさんとの関係にもそろそろメスを入れ時ではないかと・・・

Kさん:・・・それはいったいどういう意味なわけ?


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Kさん:さて、今回再演となる『冒険王』は、平田さんの実体験に基づいた作品なのよね?

O君:そうなんです!『冒険王』は平田さんが16歳のときに敢行した自転車世界一周の旅の実体験に基づいて書かれたそうです。ちなみに、その際の旅行記は、平田さんの処女作でもある『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』として出版されています。(2010年に『十六歳のオリザの冒険をしるす本』として文庫化)

Kさん: 私も読んだけれど、16歳の頃の平田さんの考え方だとか、生き方だとかが濃縮されていて、とても面白いわ。

O君:僕も読ませていただきましたが、いまの平田さんの考えは、このときからすでに醸成されていたのだなぁ、という印象を受けました。

Kさん:旅の記録で印象的だったのは、そのときそのときの局面で混乱したり困惑したりしても、それでも前へ前へと進もうとしていたところ。それはときにはネガティブな感情による前進の場合もあったかもしれないけれど、それでもひとつの信念に貫かれて道を進む姿は、たんに青春を描き取っただけではない、切実さとリアルさが読み取れるわね。

O君:まさに平田さんの出発点を描いた本なんですね!そこからどんな作品が仕上がっていくのか、とてもたのしみです。『冒険王』は1980年のイスタンブールの安宿を舞台としていますが、『新・冒険王』は『冒険王』の続編というか、舞台の設定をおなじくして、時代設定を1980年から2002年に移した作品なんですよね?

Kさん:そうね。折りしも1980年はソビエト軍が、2002年はアメリカ軍がアフガニスタンに侵攻した年で、バックパッカーたちがイスタンブールで足止めをくらうのも、そのためなのよね。そういった意味では、似たような背景を抱えている作品だともいえるわ。ただ、『冒険王』では日本人の姿を描いていたのに対して、『新・冒険王』では日本と韓国の姿を描いているところが、少しちがうところかしら。

O君:そういえば2002年といえば、日韓ワールドカップが開催された年ですね!この期間は僕もテレビに釘付けになりましたよ、あ、あとイングランド代表ベッカムに憧れて、ベッカムヘアーにしました!

Kさん:たしかにベッカムは日本でもすごい人気だったわよね。でもO君がベッカムヘアーだなんて、似合う気がしないわぁ!(ばっさり切る!)で、でもさすがスポーツ好きのO君!いいところを突いてくるわね。
『新・冒険王』はまさに日韓ワールドカップの試合とともにお話が進んでいくの。日韓ワールドカップの開催によって日韓関係にも動きが見られたわけだけれど、このお芝居では政治の側ではなく、あくまでバックパッカーたちが寝泊りする、イスタンブールの安宿というとても小さな空間の中で、日本と韓国の姿や関係性が描き出される仕組みになっているそうよ。それは2002年当時の問題というよりも、日本と韓国が抱える根底の問題を浮き彫りにする形になっているわ。

O君:なるほどぉ。芸術や演劇の分野では、日本と韓国との交流はさかんに行われていますよね。

Kさん:そうそう。今回の『新・冒険王』も、そんな日韓間の文化・芸術交流の賜物といえるかもしれないわね。とくに、ソン・ギウンさんのご活躍によるところは大きいでしょうね。『新・冒険王』には当然韓国の役者さんも出演なさっているのだけど、日本語と韓国語が同じ空間で同時多発的に飛び交う「多言語立体同時多発会話」というものが見られるそうよ!

O君:「多言語立体同時多発会話」!!いまだかつて見たことないような演劇が見られそうで今からわくわくしますね!青年団のお芝居は「現代口語演劇」「同時多発会話」という、すでに定着されつつある演出手段を用いながらも、常にラディカルな表現にチャレンジされていますよね。

Kさん:それは平田さんが抱える問題意識に根ざしているんだと思うわ。あるところで「言わなければならないことは誰かが言わなければならない」とおっしゃられているのだけど、平田さんの活動を見ていると、いまの世の中を生きる表現者としてなにができるか、なにを言えるかということを常に考えていらっしゃるように見えるわ。
『新・冒険王』には、平田さんによる次のようなキャッチコピーが掲げられてもいるわ。


日本はまだ、アジア唯一の先進国の地位から滑り落ちたことを受け入れられない。
韓国はまだ、先進国の仲間入りをしたことに慣れていない。


ただニュースを見ていたり、普段生活しているだけでは見落としてしまいそうな、あるいは目を逸らしてしまいそうなテーマを敢えて取り上げ、それを表現者として発信しようとする姿勢は、まさに平田オリザさんとソン・ギウンさんだからこそ成しえる作品だといえそうね。

O君:まさにいまの日本と韓国が抱える問題を、浮き彫りにする作品となりそうですね!
ところで、Kさんもそろそろ若者から、おばさんの仲間入りをしたことに慣れていかないと・・・(Kさんの表情がものすごい形相に急変したのを見て、ダッシュで逃げる。)


青年団『冒険王』『新・冒険王』の公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/03/post-34.html
チケット予約はこちらからどうぞ!https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
青年団HP → http://www.seinendan.org/