カンゲキのススメVol.42 アマヤドリ 『すばらしい日だ金がいる』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、9月18日より吉祥寺シアターで上演が始まるアマヤドリ『すばらしい日だ金がいる』 です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
アマヤドリ『すばらしい日だ金がいる』 9月18日(金)~9月27日(日)
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/05/post-37.html










O君: こんにちは!いよいよ9月に入り秋本番!・・・と、いきたいところですが、9月に入ってから雨続きで心もどんよりとしてきそうですねー。

Kさん:まったくだわ。もうこうなったらO君をいじってストレス発散するしかないわね~。

O君:・・・・・・(どんより)

Kさん:も、もちろん冗談よ! さて、気を取り直して。今回はアマヤドリ『すばらしい日だ金がいる』のご紹介です。アマヤドリはもう何度も吉祥寺シアターに登場しているけれど、O君初めての方にもわかるように、簡単に紹介してくれないかしら?

O君:わっかりました!!(しゃきっ)アマヤドリは作・演出を手がける広田淳一さんが主宰する劇団です。2001年、広田さんが東京大学在学中に学生劇団を母体として立ち上げた「ひょっとこ乱舞」が、2012年に“大爆破”と称して劇団としての脱皮を遂げ、現在の「アマヤドリ」となりました。

Kさん:2012年に「ひょっとこ乱舞大爆破公演」と銘打って上演された『うれしい悲鳴』は、ここ吉祥寺シアターが会場だったのよね。

O君:そうなんです。また、その後「合同会社プランプル」を設立し、アマヤドリの根城でもある「スタジオ空洞」を池袋にオープンして運営するなど、作品創りだけでなく、演劇を作る“場”や“環境創り”にも精力的に力を入れています。

Kさん:人と人との「つながり」を強く意識する広田さんだからこそのアイデアと言えるわね。あと、アマヤドリ公式キャラクターが誕生したそうです!「雨天くん」という名前なのだけれど、これが可愛くって。可愛いもの好きのわたしはもぅきゅんきゅんしちゃうわぁ~。(うっとり)










O君:(恐ろしいものを見たかのように脅えた目をしながら)そそそ、そうですか・・・
アマヤドリの作品は、広田さんの書く知的で豊かな言葉とテンポよく進む場面展開を組み合わせ、社会や世界の断片を鋭い視点で描くところが特徴といえます。また出演者全員で踊る群舞シーンは迫力があり、見ごたえがありますね。昨年度アマヤドリは “悪と自由”シリーズとして、『ぬれぎぬ』『非常の階段』『悪い冗談』の三部作を上演してきましたが、今回はそれを経ての新作になります。

Kさん:本作『すばらしい日だ金がいる』は、“悪と自由”三部作後の新作第一弾だけあって、主宰の広田さんの情熱も並々ならぬものがあるわ。もちろん抜け目のないO君なら、今回の作品がどんなものになりそうかすでにリサーチ済みよね?

O君:出た!Kさんの伝家の宝刀無茶振り攻撃!!しかし、斬られてもタダでは起き上がりませんよ!バッチリ今回のために、先日行われたワークインプログレスに潜入してきました!

Kさん:(「斬られてもタダでは起き上がらない」とは・・・?)お、やるわね。さすがO君。それじゃあ、紹介してもらってもいいかしら? あ、でもその前にそもそも“ワークインプログレス”っていうのは、作品創作の過程や途中段階のものをお客様に公開しご意見ご感想などをいただきつつ、本番への期待をぐぐっとあげてもらおうというとても意義深いイベントのことよね。

O君:ご説明ありがとうございます。本番前の稽古場を覗くことができるなんてとても貴重な経験でした。それに劇場での公演とはまた少し違った緊張感もありましたよ。当日はアマヤドリ主宰の広田さんのご挨拶からはじまり、まさかのワークインプログレスで全編通してみますとの発表が!

Kさん:それはすごいわね!

O君:しかも使用する脚本は直前に出来上がったばかりのものだということで、役者のみなさんは台本を持ちながらの演技になりました。ちなみに広田さんの脚本の書き方は、だいたい大枠を先に決めて、その後に細かい場面を描いていくスタイルが多いとのこと。また稽古をしつつ、並行して追加や修正など何度も改良を重ねていくそうです。

Kさん:作品が少しでも良くなるようにぎりぎりまで細部を詰める広田さんと、それに反応して稽古を進めていく役者さんやスタッフさんはまさに職人芸よね。

O君:まさにその通りですね。ということで、時間にしておよそ2時間弱くらいの(あくまでその時点の上演時間)作品でした。今回の作品はチラシに載っている広田さんの言葉にもある通り“うつ”と“競争”ということで、うつの女性を主人公に、その家族や周辺の人々とのやり取りで物語は進んでいきます。

Kさん:へぇ、昨年は「悪と自由の三部作」を掲げ悪や自由など比較的普遍的なテーマを描いてきたアマヤドリだけど、今回はうつという具体的なテーマを掲げているのね。たしかにうつは社会現象といえるほどまでに昨今なじみのある言葉よね。

O君:そうですね、うつ病は精神疾患と言われる専門治療が必要になるものから、若者の間では会話表現の一つとしてうつという言葉が軽く使われるようになっているなど、日常生活ではよく耳にしますよね。

Kさん:たしかにO君のいう通り、程度の差はあるけどこれほどまでうつという言葉が社会に浸透しているということ自体がテーマの深さを表しているわね。

O君:はい、そして厄介なのはうつが心や精神の問題だからこそ、周りの人々になかなか理解され難いということではないでしょうか。実際今回の作品でも主人公の女性は心を病み、姉妹と意見が合わなくなっていくのですが、見ている観客にはやはり姉妹の意見のほうが筋が通っているように感じます。一方でその思考がうつの相手には全く通用しないという問題に突き当たります。

Kさん:ふむふむ、たしかに心や精神の状態がうまく機能しないと相手の考えや心情を思いやる余裕がなくなって、共通認識をもつのが難しくなりそうね。

O君:そうなんです。それに自分の身近な人がある日そのようになるわけだから、より一層何とかしてあげたいと思うのですが、そのことが余計に相手を苦しめ、遠ざけてしまうということもあります。そしてそのズレが舞台を見ている僕達には喜劇のように見えてくるという一面もあるんです。

Kさん:ほぅ、たしかにチラシにも広田さんが今回は喜劇にしたいということを書いているわね。

O君:はい、ただやはり喜劇といっても一般的な笑いの起こる喜劇ではなく、やはりどこか皮肉さを持っているような感じがしました。そして、少しずつ主人公の心の葛藤や深さが見えてくることでぐっと観客を舞台に引き込んでいきますね。
僕は今回のテーマとして “うつ”と“競争”というのは、一見関係のないように見えますが、対になる言葉として捉えているように感じます。他人に打ち勝つために機能を追求する競争社会と、競争に敗れて何も機能していない停止した時間を過ごすうつ状態。競争があるところには、必ずうつもある、そんな表裏一体の関係としてテーマに掲げられているのではないでしょうか。

Kさん:なるほど。“うつ”と言うと扱うのがとても難しいテーマだと思うけれど、そこに敢えてスポットを当てて喜劇として描き直すことで、人と人との分かりあえなさや他人を救うことの困難さなど人間の心や精神の根源的な問題を描き出そうとしているのかもしれないわね。

O君:あと昨今のアマヤドリの作品はいくつかの場面が並行して話が進むという形式が多かったように感じますが、今回は主人公の女性を中心とした展開でシンプルに見ることができるかと思います。ただその分登場人物たちが発する台詞や行動に厚みが増し、矢継ぎ早に繰り出される言葉の力がとても強いですね。

Kさん:それはとても楽しみね。今回も新たな挑戦をしていて細部まで目が離せないわね!そして、じっくり見たい方におすすめはこちら、アマヤドリではお馴染みとなったフリーパスチケット!これは期間中何度でも作品を鑑賞できるお得なチケットです。何度かじっくり見て作品を掘り下げたい方にはぴったりよ!

O君:さすが、Kさん宣伝の仕方がナチュラルです!たしかに今回の作品も複数回見ることでいろいろな見え方ができると思います。そしてここだけの話?ですが、今回は何やら客席の形式もいつもとは少し違うという情報もちらほら聞こえてきています。アマヤドリではお馴染みの群舞シーンやあんなシーンもどの客席から見るかによって変わってくるかもしれないですよ!何度見ても楽しめそうですね!

Kさん:期待が膨らむ一方ね!あとアフタートークの回も決まっていて、今のところ9月21日19時の回に慶應義塾大学医学部精神・神経科准教授の村松太郎先生、26日19時の回に劇評家の藤原ちからさんをお迎えします。村松先生は、うつ病を専門にされている医師の方なので、今回の作品にどのような感想を抱くのか、どんな分析をされるのかとても興味深いわ。

O君:補足をありがとうございます、Kさん。ということでアマヤドリ『すばらしい日だ金がいる』は9月18日からはじまります。劇場でみなさまをお待ちしております~


『すばらしい日だ金がいる』は吉祥寺シアターにて9月18日~9月27日まで上演されます!チケットのお求めがまだの方は、ぜひ武蔵野文化事業団チケット予約までどうぞ!

アマヤドリ『すばらし日だ金がいる』公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/05/post-37.html
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アマヤドリHP  http://amayadori.sub.jp/