カンゲキのススメVol.47 iaku 『walk in closet』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、11月20日より吉祥寺シアターで上演が始まるiaku『walk in closet』 です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】
iaku『walk in closet』 11月20日(金)~11月22日(日)
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/08/iaku15.html










O君:秋も深まり、もうじき冬が到来しそうなこの季節!そろそろ朝起きるのがツラくなってきましたが(ぼくは遅刻ギリギリまで毛布にくるまる日々が続いています!)皆さん冬支度の方は進んでいますでしょうか?

Kさん:たしかに冬になると布団から抜け出すまでが大変よねー。でも遅刻するのは厳禁よ、O君!さて、吉祥寺シアターの今年度ラインナップも残すところあと半分となりましたが、寒さに負けず、さっそくカンゲキのススメ、進めていきましょうか!
今回はiaku『walk in closet』の紹介です!吉祥寺シアター初登場となるiakuはなんと!大阪出身の劇団なのよね?

O君:(わざとらしく)Kはん、そらほんまでっか!?

Kさん:・・・それ、やりたかっただけでしょ?

O君:なんでやねん、そないなことあらせま・・・あらへま?・・あらしぇま・・・へんがなっ!!!

Kさん:・・・・・・(ものすごく微妙な目でO君のことを見ている)

O君:(Kさんの視線に耐えられなくなって)でで、では、iakuの紹介をさっそく始めましょうか。Kさんのおっしゃる通り、iakuは大阪を中心に活躍する演劇ユニットです。主宰である劇作家・横山拓也さんのオリジナル作品を日本各地で発表していくこと、また各地域の演劇を関西に呼び込む橋渡し役になることを指針に、2012年から本格的に活動を開始、今年で4年目を迎えます。
iakuの最大の特徴は、作品で使用されるセリフが一貫した関西弁の口語であることです。小気味良い関西弁口語のセリフで展開される会話劇 は、まるで他人の議論・口論・口喧嘩を覗き見するようで、思わずくすりとしてしまいそうでいながら、時として思わず固唾を飲んで見守ってしまうような場面が描かれています。

Kさん:関西弁口語で繰り広げられる会話は、まさに大阪の演劇だからこその武器とも言えるわね。

O君:そうですね。さらに、俳優陣は固定ではなく、作品ごとに関西の地で実力を積んだ選りすぐりの俳優を招き、土着的な空気をまとったリアルな舞台を目指しています!また、横山さんご自身は劇作と団体のプロデュースに集中し、演出には上田一軒さんを作品の度に迎えるという形式を取っており、作劇のあり方が多様化する現代演劇で<戯曲><演出><俳優>の三本柱をあえて売りにすることは、横山さんの【演劇】にかける並々ならぬ覚悟と信念を感じます!

Kさん:iakuは「繰り返しの上演が望まれる作品づくり、また、大人の鑑賞に耐え得るエンタテインメントとしての作品づくり」を目指していて、リアルで強度のある作品を作っていこうという姿勢がとても鮮明に伺えるわね。横山さんご自身、2009年には『エダニク』で第15回日本劇作家協会新人戯曲賞を、2013年には『人の気も知らないで』で第1回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞するなど、実力派の劇作家として精力的な活動をされています!そんなiakuの実に2年ぶりとなる新作『walk in closet』だけど、どんなお話になりそうなのかしら?

O君:はい!今回の作品は“セクシャリティ”をテーマにしています。まずは『walk in closet』というかなり意味深なタイトルについてですが、題名の“クローゼット”とは、自身の性的指向を公表しない状態のことを言います。(ぼくも知りませんでしたが・・・)なので、『walk in closet』とは、「クローゼットしているセクシャリティの中を探し回る、歩き回られる」という意味と、「息子のクローゼットを整理していた母が、同性愛者向けのDVDを見つけてしまう」という物語冒頭を示唆する言葉となっています。
物語は、母親が一人息子の部屋から同性愛者向けのDVDを見つけてしまうところから始まります。息子はゲイかもしれない・・・というかすかな疑念を抱く母親と主人公である一人息子、父親、そして彼らを取り巻く人々による、本格的な議論劇となっているのであります!

Kさん:あります?・・・どうもありがとう。でも、かなりざっくりとした説明だったけれど・・・そういえばO君は特別に上演台本を先に読ませてもらったのよね?というか・・・(疑いの目をO君に向けつつ)ちゃんと読んだの?

O君:(目を泳がせながら)え、えーと、も、もちろんですよ・・・!

Kさん:ずいぶんと頼りないけれど。じゃあ読んでみてどうだった?

O君:(手元に置いてあった台本を必死でぺらぺらとめくりつつ)え、えーとですね、まず台本を読んで思ったのは、物語の構造というか、舞台となる街の背景がとても綿密に組み立てられているということですっ!
今回の舞台となる「香茨(かいばら)」という住宅地は架空の地名なんですけど、その設定がとても細かく描かれています。「香茨」は1990年代に【新国際文化都市】を掲げ開発された新興住宅地なんですが、反対運動にあったり居住希望者が当初の想定通りにいかなかったり、さらには土砂災害や河川氾濫が相次いだことから、20年もの間開発が止まっている・・・というまるでどこかの地方に実際にありそうな場所が舞台の背景として設定されているんです!

Kさん:なるほど、たしかにとても細かい設定ね!そして大雨のせいで河川が氾濫し、そのせいで自分の家に帰れなくなった人たちが「香茨」の戸建てに住む主人公の家に集まってきて、そこで物語が展開していくのよね?

O君:そーなんです!・・・って、どうしてKさん知ってるんですか?

Kさん:実は・・・O君が台本を机の上にほっぽりだしてうとうとしていたから、ちょっと拝借して一気に全部読んじゃったのよね!

O君:(そ、そんな・・・)じゃ、じゃあ、Kさんは台本を読んでどう思われましたか?

Kさん:そーねー・・・私が読んで感じたのは、孤独が孤独を呼んでいくような、そんな構図かしらね。

O君:むむむ・・・「孤独が孤独を呼ぶ」とは、ポエムかなにかですか?

Kさん:別にポエムではないけれど・・・えーと、言葉でうまく説明するのが難しいのだけれど・・・開発が止められた新興住宅地、という大きな枠組みがまずあるわよね?そこから、大雨で氾濫した河川のために住宅地が孤立する、という状況設定があって、その孤立した住宅地に住むある一家のリビングに、大雨のせいで行き場を失って孤立した人々が集まり、そして集まってきた人々同士の会話によって隠されていた秘密や抱えていた孤独などが次々に露呈されていく・・・という、まさに孤独が孤独を招いていくというか、大きな孤立状態がミニマルな個人的な孤独へとどんどん収縮されていく縮図を見ているようで、とてもハラハラしながら読んだわ!

O君:でも、その個人的な小さな孤独や秘密も、いつしか周りを巻き込んでいきますよね?実際、息子へのゲイ疑惑に揺れる母親の葛藤と同性愛者向けのDVDをクローゼットの中に隠していた息子の隠し事が物語の発端になるわけですし、他にも「オネエ」だと噂されている主人公のバイト先の店長、ある噂のために職も家庭も失ってしまった自治会の役員、夫の浮気を疑い孤立を深める隣人・・・など、主人公を取り巻く人々もそれぞれ孤独や不安を持っている様子が描かれていて、それらが折り重なり合ってどんどん話が展開していきますよね。

Kさん:そうね!あらO君、居眠りしてたわりには良い事言うじゃない!!・・・だから、今回の作品は、一人息子の秘めていたセクシャリティが露呈して、そのことを周りがどう見つめるか、ということに加え、自分や身近にいる人の孤独を発見したとき、それにどのように対処し、どうやって付き合っていけばいいのか、その一歩を踏み出す直前までを描いていると言えるんじゃないないかしら。その意味で、この作品はセクシャル・マイノリティの話をしているけれど、それだけじゃなく、人々の複雑な感情やその感情の縺れ、そのせいで生まれる疑念や孤独感など、人間誰しも持っている普遍的な感情の揺れ動きを、軽快な関西弁の会話劇として描き出しているとも言えそうね!

O君:(お、おいしいことを全部言われた・・・)そ、そうですね!そんな細やかな心の揺れ動きを緻密に描き出せるのも、ひとえに横山さんの鋭い観察眼と感性の賜物と言えますね!

Kさん:おっとO君、無難な言葉で締めくくったわね。でもたしかにこのような繊細な人物描写や情景描写はなかなか真似できないわよね!そして、実際に物語を進める役者の方達も、個性的な俳優陣で固めているのよね?

O君:はい!主人公の母親役には、マキノノゾミさんが主宰し2010年に解散した劇団M. O. P.に在籍し、近年では「ひとり語り」で評判が高い林英世さん。その息子の主人公の役には、幼少より劇団ひまわりに所属し、舞台やTV・CMなど幅広く活躍する希代の若手役者・池之内頼嗣さん。父親役には、舞台だけでなく、テレビドラマやラジオナレーター、声優などで活躍するや乃えいじさん・・・などなど、多彩な顔ぶれが並びます!

Kさん:わたしは以前林さんが川端康成の『片腕』という短編小説を「ひとり語り」した舞台を観たことがあるのだけど、演劇的な大きな動きがあるわけではないのに、どんどん物語の中に惹きこまれていった記憶があるわー。今回どのような芝居になるのか、とても楽しみです!
そんなiakuの『walk in closet』は11月20日(金)~22日(日)までやっています。3日間4公演の短期間ですので、お見逃しのないよう、ぜひお越しくださいませ!!


iaku『walk in closet』の公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2015/08/iaku15.html
チケット予約はこちらからどうぞ!https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/
iaku公式webサイト→ http://www.iaku.jp/