カンゲキのススメVol.49 カムヰヤッセン『レドモン』


カンゲキのススメは、東京を中心として、これから始まる公演のご紹介を主に行うページです。演劇初心者の吉祥寺シアターの新人職員O君が、先輩職員Kさんに色々と観劇にあたっての質問をしていきます。お読みになっていただいた方に、今までは知らなかった劇団や新しい舞台の魅力などを見つけていただき、劇場へ足をお運びいただくきっかけになればと考えております。

今回取り上げるのは、4月6日(水)より吉祥寺シアターで上演が始まるカムヰヤッセン『レドモン』です。

【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】

カムヰヤッセン『レドモン』4月6日(水)~4月10日(日)

公演詳細→http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/01/post-44.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Kさん:こんにちは!そろそろサクラが咲き出すこの季節、春休みもあってどことなくうきうきとした気分がしますね。吉祥寺シアターすぐ近くの井の頭公園も、連日たくさんの人が来ています!

O君:まさにお花見シーズンですね!Kさんは花より団子の方がお好きだと思いますが・・・

Kさん:もちろん!・・・って、何言わせてるのO君?
ところで、2012年から始まったこの「カンゲキのススメ」ですが、記念すべき「カンゲキのススメ vol. 1」は何の公演だったか覚えてる?

O君:それはもちろん!カムヰヤッセンの『バックギャモン・プレイヤード』ですよね?

Kさん:そう!そして今回紹介するのも、実に4年ぶりの登場となるカムヰヤッセンなの!

O君:おおっ!それはなんだか感慨深いですね。あれからもう4年が経つんですね。時間が経つのは早いですねー(しんみり)

Kさん:ほんと。あのO君もあれからずいぶん成長してくれて・・・あのころのO君を思い出すと、何だか泣けてくるわ・・・(涙)

O君:・・・Kさん、昔のぼくそんなにひどかったんですか?

Kさん:冗談よ。というわけで今回ご紹介するのはカムヰヤッセン『レドモン』です。カムヰヤッセンは久々だけど、劇団の紹介をお願いできるかしら?

O君:はいっ!カムヰヤッセンは東京大学の演劇サークル「劇団綺畸」出身のメンバーが中心となって結成された劇団で、現在劇団員8名で活動しています。
「カムヰヤッセン」という特徴的な劇団名ですが、アイヌ語で<神様>を意味する「カムヰ」と、作・演出を手掛ける北川大輔さんの出身地・鹿児島の言葉で<なさけない、たよりない、ふがいない>という意味を持つ「ヤッセン」をくっつけた造語だそうです。演劇ファンからは略して「カムヰ」と呼ばれたりしてますよね。

Kさん:ここ最近だと劇団の代表作の一つ『やわらかいヒビ』が2010年に三鷹市芸術文化センターのMITAKA “Next” selectionで、2013年にシアタートラムのネクスト・ジェネレーションで上演されたほか、今作『レドモン』では「CoRich舞台芸術まつり!2016」の最終審査10作品に選ばれていて、劇団に対する期待が伝わってくるわね。

O君:カムヰヤッセンの作品はよく「SF的」だとか、「社会性が強い」と評されることがありますよね?社会問題を、SF的な設定に置き換えて上演するのを得意としているように見えます。

Kさん:そうね、だけどそれ以上に「生きる」ということそのものに真摯に向き合うようなところがあるように見えるわ(このことは「カンゲキのススメ vol. 1」でも言っています)。
たしかにカムヰヤッセンの作品は社会性を強く感じるけれど、それを押しつけがましく書くというよりは、重厚なドラマの中で自然と感じさせてくれるところが、私は素敵だと思うわ。
作・演出の北川さんは、登場人物1人1人の感情の揺れ動きにスポットを当てて、細やかに描き出すことに定評があるわよね。劇作家としても演出家としても、人間の普遍性のようなものを抽出して、そこに焦点をあてることに優れた北川さんだからこそ、SF的な設定の物語も、どこか自分たちのことのように感情移入して観ることができるんじゃないかしら。

O君:あと、カムヰヤッセンの作品には、人と人が共に生きていくことの喜びと難しさ、そしてそれらを全部ひっくるめての幸福みたいなものを感じますよね?

Kさん:そうね。私たちは1人では生きていけなくて、でも他者とは簡単に分かり合えなくて、それでも誰かを必要としてしまう私たち人間への愛おしさが、北川さんの作品からはひしひしと伝わってきます。人間賛歌というほど牧歌的ではないけれど、根底にはそれに近い愛を感じるわね。

【さらに詳しくカムヰヤッセン『レドモン』に迫る!!】

O君:さて、そんなカムヰヤッセンですが、ここ最近は「異なる他者との共生」をテーマに上演を続けていましたよね?
前回公演の『リボーン・チャンス』は地域社会との共生、前々回公演『未開の議場』は外国人との共生を描いていました。そして今作『レドモン』ではなんと宇宙人との共生を描くという・・・

Kさん:そうなの。『レドモン』は劇団の第3回公演として2009年に王子小劇場で初演された作品だけど、宇宙人を題材にした作品で注目を集めたわよね?

O君:そうなんです。『レドモン』は宇宙人と地球人が共生している世界を舞台にしていて、「レドモン」というのは地球に一定数以上住みつくようになった宇宙人の呼称なんですよね。(ちなみに今回の公演チラシの表紙に印字された謎の文字は「レドモン語」(!)でして、レドモン語で「レドモン」と書かれています!)物語はその「レドモン」を地球から追い出し、彼らの星へ追い返そうという「レドモン排斥運動」が高まってゆく状況を描いています。

 

 

 

 


(チラシの表紙に載ってる謎の文字は「レドモン語」だった!!)


Kさん:宇宙人「レドモン」という存在を通じて、自分たちと異なる他者といかに関っていくのか、という人々の心の揺れ動きを捉えた作品よね。7年前の初演の時も、物語の中の差別や排斥される人々の過酷さや、それに立ち向かおうとする人、迫られた選択に苦しむ人たちの姿が胸に刺さったわ。

O君:たしか、ある3人家族を軸に物語は進むんですよね?
地球人の夫と宇宙人「レドモン」二世の妻という複雑な家庭で、夫はレドモンを星へ帰そうとする仕事をしているけど、周囲の人には自分の妻がレドモンであることを隠している。しかも二人の間には地球人とレドモンのハーフとなる一人息子がいるんですよね。だけど、自分の妻がレドモンであることがバレちゃって、「レドモン排斥運動」によって窮地に追い込まれていくという・・・

Kさん:そうなのよね。大切な人が排斥の対象となる中、どのような選択をしていくのか・・・いま思い出しただけでも泣けてくるわぁ。

O君:だけど、2009年の初演のときと、現在の2016年とは、かなり社会の状況が変わってきてますよね?なんというか、宇宙人を排斥するというある種ファンタジーのようなお話が、いまは他人事として見られなくなりつつあるというか・・・

Kさん:たしかにそうかもしれないわね。北川さんご自身も、今回の作品のテーマは難民問題など、今現在の世界情勢とも関連するものになっているとおっしゃっていて、いま『レドモン』を観ると、そういったものが想起されるかもしれないわね。
劇中に「宇宙人出てけー!」という台詞があるのだけど、初演の2009年から7年経ったいま、とてもリアルに聞こえてくる台詞よね。『レドモン』の世界はSF的でファンタジックだけど、現代を生きるわたしたちにも無関係ではない問題を抱えていると言えそうだわ。

O君:そういえば、北川さんの書く戯曲は、いつも時代を先取ってしまうって話をちらっと聞いたことがあります。いっそ「時代先取り劇団」って名乗ってやろうかくらいの・・・

Kさん:そうそう。でもそれは、北川さんの鋭い観察眼と社会の空気感を敏感に捉える感性があってこそよね。今回の再演ではそういったいまの状況を踏まえて、初演のときに比べてさらなるブラッシュアップが施されていそうね!

O君:それは楽しみですね!
宇宙人っていうとまさに「突如現れた強烈に異質な他者」で、その他者とどう「共生」していけるのかっていうのは、すごく大切な問題ですよね。「他者」を受け入れようとする人、拒絶する人、はじめは受け入れに賛成だったのに次第に反対へと傾く人・・・一筋縄ではいかない人間の心理が描かれていると言えそうですし、果たして人間にとっての“正義”とは何なのか、そんな問題を突きつけられているようで、観る前からなんだか胸がズキズキと痛む思いです。

Kさん:そんなこと言って仮病使って仕事休んじゃ駄目よ。(ぴしり)

O君:はい・・・

Kさん:でも、究極の選択を迫られたとき、自分がどんな選択をするのか、それを考えることはとても大切だと思うし、そういったことを考えさせてくれるのが演劇の良さだと思うわ。
ところで、もしO君の大切な人が排斥の対象になったとして、O君だったらその人を守れるかしら?

O君:もちろん守りたいですよ!でも、やっぱり自信はないです・・・。人間って無力ですね。それに、怖いなって思う瞬間もあります。『レドモン』の中の人たちは、こういう無力感や恐怖と戦いながら生きているんですかね?

Kさん:無力だし、怖いと感じるからこそ、私たちは1人1人手を取り合って、助け合う必要があるんだと思うわ。

O君:長い道のりなんでしょうけれど、その気持ちをなくしたら、いつまでも争いは絶えないですものね。

Kさん:『レドモン』はドラマとしてもかなり重厚で見応えがある作品なので、特に何も考えずフィクションとしてもお楽しみいただけると思いますが、ぜひ私たちの未来のことや、いまも起こっている争いのことなんかに、少しでも思いを馳せていただけるといいですね。再演ではありますが、7年前とは社会情勢も変わって、それが作品にどのような影響を与え、私たちの感じ方がどう変わっているのか、初演を観て思いっきり泣いてしまった私も、今から楽しみです。
また、作・演出の北川さんと昨年4月よりカムヰヤッセンの代表を務めている工藤さやさんのインタビュー記事が掲載されています。『レドモン』のことや劇団に対する熱い思いが語られていますので、ぜひご一読くださいませ!!
○「エンタメ特化型情報メディア スパイス 『北川大輔・工藤さやが語る、カムヰヤッセンのいまとこれから』」→ http://spice.eplus.jp/articles/35963

またまた、劇団の稽古場ブログも絶賛更新中です!稽古の様子が写された写真がいっぱい掲載されていますので、気になる方はぜひチェックください!
○「カムヰヤッセン ブログ」→ http://kamuy-blog.jugem.jp/?eid=146

さらに!カムヰヤッセンが『レドモン』の成功を祈願し、体を張ったユニークな企画を敢行しました!気になる方はこちらをチェック!
○「カムヰヤッセン『レドモン』公演成功祈願企画」→ https://www.youtube.com/watch?v=1NiSkUS_OpA&feature=youtu.be

O君:カムヰヤッセン『レドモン』は4月6日(水)~10日(日)までやっています。7日(木)と8日(金)にはアフターイベントの開催も決定しました!年度始めでお忙しい時期だとは思いますが、ぜひぜひお越しくださいませ!!

カムヰヤッセン『レドモン』の公演詳細ページはこちら!
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/01/post-44.html

チケット予約はこちらからどうぞ!https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/

カムヰヤッセン公式webサイト→ http://kamuyyassen.daa.jp/