吉祥寺ダンスLAB. vol.2『サーチ』レポート③(カゲヤマ気象台)

 
「カンゲキのススメ」では、主に吉祥寺シアターで上演される作品に関連して、インタビュー、劇評、レポートなどさまざまなコンテンツを掲載いたします。これからシアターでどんな作品が上演されるのか?どんなアーティストが関わっているのか?作品の魅力を少しでもお伝えできれば幸いです。
 
今回取り上げるのは、1月25日(土)・26日(日)の本番に向け絶賛制作中の「吉祥寺ダンスLAB. vol.2『サーチ』」。このページでは、作品のクリエーションの様子を数回に渡りお届けします。三回目は円盤に乗る派主宰のカゲヤマ気象台さんによる稽古場レポートです。
 

1/16稽古場レポート
ダンスと言葉はいったい何が違うだろうと思いながら見ていた。先日自分の公演をやったばかりの吉祥寺シアターには、いくつかの簡素な舞台美術が置かれ、2人のダンサー、岩渕貞太と酒井直之が言葉を発しながら踊っていた。手元には印刷してもらったテキストがあったので内容は理解している。しかし言葉のひとつひとつを身体で確認するように、とても長い時間をかけて発されるテキストは、簡単には全体像をつかませてくれない。とてもスローに、しかし間延びしているわけではなく、ある切実さの下で言葉は発され、それによって言葉の言葉らしさ、同時に身体の身体らしさが強調されて見える。


言葉は忘れがたい、と思った。対して身体はすぐに忘れてしまう。発された言葉はしばらく印象に残り、次の言葉へとつながる。それはどうしようもなくつながってしまう。その連鎖はかろうじて最初から最後までの一本の線になって、一つの劇が成立してしまう。対して身体は、常に現在しかない。今目の前にある身体が全てであって、それは一瞬前には全く違ったかもしれないし、次の瞬間にはまた別のありようになってしまうかもしれない。常に現在しかない身体が、テキストをなんとか前へ前へとつないでいく。それは演劇のまっとうな成立の過程のように思った。

演劇が何かを構築しようとするのに対して、ダンスはそれを解体しようとする。線形の劇に、非線形のダンスがぶつかる。最初、ここには矛盾や摩擦が生まれるのかもしれないと思った。2者が衝突したところに、例えばそれを乗り越えようとするエモーションが、大きな熱量と共に表れるのかもしれないと思った。しかし意外なことに、私はさほどの矛盾も摩擦も感じなかった。そしてそれがわりと心地よいと思った。ここには当たり前のようにダンサーがいて、当たり前のようにテキストがあった。そしてその両者が当たり前に併存しているなかで、ただ時間だけが進んでいた。私はダンスの専門家でないので、2人のダンスを評する言葉は持ち合わせていないのだけど、それでもよいダンスだなと思った。よいダンスがあって、テキストが成立し、時間が進行している。つまり、とても正しいと思った。しかし正しいということは難しいし、同時にとても重要なことだ。

それでも、この作品はまだ劇として評するには、不十分な状態であると思った。ただ最初から最後まで筋が通っているだけでは、やはり劇としては弱い。そこには何かを経て何かになっていくという変化が必要だ。確かに変化の兆しは感じられたものの、まだ十分に劇的とは呼べなかった。通し稽古が終わった後でテキスト・音楽の額田大志と話したとき、もう一歩何かが欲しいということを言っていたが、それはもしかしたらこのことだったのかもしれない。

通し稽古のフィードバックのときにメンバーが話していたのは、「もっと踏み込んでいいのかもしれない」ということになるかと思う。テキストと身体と演出が、互いに深くまで関係し合うように、もっと様々なことができるのではないか。この時にいくつかの具体的なアイディアが生まれていた。実際に何が実行され、それぞれの関係性がどのように変わるのかは本番を待つしかないが、この「正しい演劇」がどのように成長するのか、よりコンセプチュアルでストイックな方向に突き進むのか、あるいはもっと雑多な要素を増やしながら、ノイジーかつ破綻を孕みながらの成立を目指すのか、それともそのどちらでもないものになるのか、大いに期待したいと思う。

カゲヤマ気象台(かげやま きしょうだい)劇作家・演出家/「円盤に乗る派」主宰



【武蔵野文化事業団にて、チケット販売中!】



吉祥寺ダンスLAB. vol.2『サーチ』

[振付・ダンス]岩渕貞太 [テキスト・音楽]額田大志  [出演]岩渕貞太 酒井直之 他 

1月25日(土)19:00 1月26日(日) 14:00

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1月20日(月) 19:00~20:30  公開リハーサル&トークセッション開催決定!
入場無料、皆さまお気軽にご来場ください!