富士を見る

                                  書いた人:スピカ
 

最近、本当に寒くなってきましたね。枕草紙の序文には「冬はつとめて(冬は早朝がよい)」なんて表現が使われますが、朝の凛とした寒さがよいという気持ちにはそれを習った学生の頃から今に至るまで、まったく感じたことがありません。修行が足りないようです。

しかしながら、空気が澄んで寒いことが悪いことばかりでもないようです。今時分になるといつものように中央線の下り列車に乗って吉祥寺シアターまで通勤をしておりますと西に向かうにつれ、車窓から富士山の雄大な眺めが望めます。夏では見れないものが冬では確認することができます。冬は空気中の水蒸気が低下し、同時にその水蒸気についたチリや埃などの遮蔽物がなくなるため、遠方の風景まで見渡せるからでありますが、“在る”のだけれど見えなかった分だけ、圧倒的な存在感を放ち、静かな感動を呼びます。

そういえば、都内にはいくつも富士見坂のネーミングのついた坂がありますが、当時は高台となった坂上から富士の眺めが望めたからその名がついたといわれておりますね。また交通機関が限られていた江戸の時代は富士詣がそう簡単にはできなかったこともありまして神社などで富士塚と呼ばれる山岳信仰に基づき、富士山に模して造営された人工の山や塚に登ってその代用とした風習があったようです。今日よりもっと神格化されたものであり、同時に民間信仰の対象として存在が身近であったことが窺えそうです。

さて、富士山について語ったところで本題に移りたいと思います。

今月、30日(土)~12月3日(火)の予定で武蔵野芸能劇場で公演が組まれております「声を出すと気持ちいいの会」による「富士の破(わ)れる日」であります。公演を観にいらっしゃるお客様には期間中に限り、劇場の3Fロビーにて、吉祥寺美術館所蔵、萩原英雄氏の『大富士』や『拾遺富士』などの作品をご鑑賞いただけます。なんでも本作品のイメージソースにこれら富士作品が使われたそうで、演劇にどのように反映されているのか非常に興味深いですね。

各公演とも、若干席に余裕がありますので、ご興味がありましたら、ぜひご鑑賞、ご観劇いただければ幸いです。(※展示期間は、公演の受付開始後から開演までの間と、終演後のみになります。ご了承ください。)