二足の草鞋

書いた人:スピカ

 

 「二足の草鞋(わらじ)を履く」と言う言葉があります。昼間は勤め人として働きながから、夜はスタジオミュージシャンとして活躍中であるとか、休日は趣味と実益をかなえて家で習い事の教室を開いている等、言ってみれば趣味を副業としてしまったケースを指してそのように言ったりしますね。ただ、この二足の草鞋には続きがあって、“二足の草鞋は履けない”までがひとつの言葉のようで、本来は“両立しないもの”の喩えのようでもあります。
 しかしながら趣味を実益にかなえるなんて、私など散歩と読書くらいしかすぐには思いつかない“しがない”趣味しか持たないものにとっては、なんとも羨ましい話ではあります。プロ顔負けの技量をもった方、時には“玄人(くろうと)”などという言い方をしたりしますが、芸術家の中には非常に稀なケースではありますが、趣味がいつしか一般に知られるところとなり、履けない二足の草鞋がいつの間にか「日曜画家」と呼ばれるスタイルで、ジャンルを確立させてしまった作家もいるのです。古くはフランスのアンリ・ルソー。そして今回ご紹介する吉祥寺美術館で現在開催されている川上澄生(版画家)もまた公立高校の教諭を続けながら、制作活動を継続し、作品を発表してきたことで知られております。
 もともと、私が川上澄生の名前を知ったのは、とある棟方志功の展覧会で、「初夏の風」という川上澄生作が展示されていたからです。「棟方志功って版画の大の巨匠に・・・何故?」と言う方はもちろん多くの方が思われることでしょうが、キャプションには志功が実は元は画家志望の青年であったこと、本作に出会い、版画に転向することになった経緯が記載されてありました。
 偉大なる巨匠の前には偉大なるパイオニアが存在したというわけではありますが、川上澄生の版画もまた味わい深いものです。私は先ほどの「初夏の風」に代表されるような叙情的な作風に魅力を感じております。ぜひともご興味がありましたら会期中に一度ご来館されてはいかがでしょうか。
 会期は4月5日(土)-5月11日(日)会期中の休館日:4月30日(水)
※今回の吉祥寺美術館の出展に、「初夏の風」はありません。悪しからずご容赦ください。