カムヰヤッセン『レドモン』稽古場レポート&北川大輔さんとのインタビュー



2016年もあっという間に4分の1が終わろうとしています。年度末でバタバタしている方、4月からの新生活を控えてソワソワしている方、もうすぐ3月が終わりますよー。そんな中、吉祥寺シアターでは年度内の最終公演、ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』が終演し、いよいよ4/6(水)からカムヰヤッセン『レドモン』が始まります。
昨日『レドモン』の稽古場にお邪魔してきました!稽古場の模様を、写真と脚本・演出の北川氏へのインタビューでお送りします。


北川氏との一問一答

―今回は、舞台美術が面白いですね。どういったことを意識されていますか?

北川「吉祥寺シアターの空間の面白さは縦の高さと、あとは奥行きにあると思っています。今回の舞台プランは、その特徴を生かすことに主眼を置いています。その分、横は少しカットしました」



―どう「横をカットしている」のか、劇場に足を運んでいただき驚いていただきたいですね。台本も7年前とは大きく変わりましたね。この改訂はどういったことを意識されていますか?

北川「やっぱり時代が大きく変わってしまいましたよね、この7年の間で」



―チラシやホームページにもそんなコメントを寄せてらっしゃいますね。

北川「ついこないだもブリュッセルでテロがありましたよね。テロ自体はもちろん7年前にもあったんですけど、カルバラでテロがあって300人亡くなったときよりも、ブリュッセルのテロで60人が死亡って聞いちゃうとどうしても、テロを近く感じちゃいますよね」



―日本にいる多くの人は確かにそういう感覚をおぼえていると思います。

北川「っていう時に、この『近く感じる感覚』っていうのはなんだろう、って思ったんです。イラクの都市と欧州の都市では、圧倒的に後者のほうが自分に近い気になっている。その時自分はどこにボーダーを引いているのか、って言うことへの疑いを強く持つようになったんです。ここに、『区別』することの正体を探るヒント的なものがあるんじゃないかって思っています」



―発端で言うと昨年のパリのテロの時でしょうか。あの時は、SNS上でプロフィール写真にトリコロールを重ねて哀悼の意を示す動きが盛んになり、賛否両論が巻き起こりましたね。否定的な見解は主に、その「区別」への違和感に端を発するものであったと思います。

北川「『レドモン』の再演自体は、パリのテロ以前に決めていたんですけどね。でもいざこうやって作っていく中では、そういったことを意識しないわけにはいかないですね」



―ご自身の中でそのような変化はどのように表れていると思いますか?

北川「『レドモン』のテーマというか、この作品を書くにあたっては、『人は人を区別/差別する心をどうやって克服していくのか』というのがあります。初演の時は、なんで世界は変わらないのだろう、なんで差別をするのだろうと、ちょうど初演の主人公夫婦の子供のように、変わらない世の中に憤っているような感じでしたが、今回再演にあたって、台本を全面リテイクしていて気付いたのは、僕自身が子供から大人になったということです。今回は完全に(主人公の)立川の気持ちに寄り添って書いています。それは世界を変えられないことを嘆いたり憤ったりするのではなくて、『自分が社会を、世界を変えることができるんだ』と思って書いていられているということだと思います」



―それは大きな変化ですね。主人公のとる行動も、確かにおっしゃる通り、初演のとき以上に、自分で世界を変えていこうという意志がはっきり表れていますよね。大きな変化と言えば、けいこ場の雰囲気もだいぶ昔とは変わりましたね。こういっては失礼かもしれませんが、だいぶ民主的になりましたね(笑)

北川「うん、それはもうだいぶ変わりました。『レドモン』の初演の頃が一番きつかったかも知れないです。『俺が死ぬかお前が死ぬか』みたいな感じでやってましたね、あの頃は(苦笑)。今は周りが率先してやってくれるので、それに素直に乗っかっています。メンバーが代わってきたことが、いい具合に作用していると思います」




―メンバーと言えば、劇団員のみならず、キャストも初演時とはほとんど変わっていますね。両方出ているのは劇団員の小島(明之)さんだけです。でも、この新しいキャスト陣は、配役の妙も含め、すごくはまっていますね

北川「はい、今回、初演からは大幅にキャストが代わっていますが、すごくいいメンバーがそろったと思っています。手練れが揃っていると思います。自信をもって吉祥寺シアターの空間に挑める面子だと思います」

 



------------------------------------------------------------------------------------------
数名のスタッフが見つめる中、この日は初めての通し稽古。
皆が真剣な眼差しで見つめるが、その分、舞台上での面白さにも敏感で、題材のシリアスさを考えると予想以上に多くの笑いが起こった、最初の通し稽古であった。とはいえ、脚本・演出の北川氏からすれば思惑通りだろう。ただ暗いだけ、重いだけにはしたくない。きっちり笑いの起きる明るいシーンを作っていきたいと、通し稽古前に語ってくれていた。
初演との大きな違いにも驚いたが、それ以上に現時点での完成度の高さにも驚いた。北川氏が自信を持って語っていたように、キャスト陣は皆とても言葉と要求が多い北川台本を咀嚼し、それぞれの個性を生かしていた。
ユニークなだけでなく、さまざま意味が付与され考え抜かれた舞台美術の上で、キャスト陣が更にブラッシュアップされた演技で、どう躍動するのか、今から楽しみである。
通し稽古後に北川氏がキャスト陣に贈った言葉を締めに共有しよう。

「これは誰か限られたキャストが語りきるという構成の台本ではなくて、キャスト同士で言葉を、台詞をパスして繋いでいく意識をより高めてほしい。その繋ぎをもっともっと意識すれば、よりタイトに密度の濃いものに仕上がるはず」
「僕は、この作品で、間でなにかを伝える、というようなことをしようと思っていない。むしろ(台詞を)言って言って、喋り倒す、その怒涛の言葉の中で意味に向かっていく作品にしたい」
------------------------------------------------------------------------------------------


「違う」ということをいかに乗り越えていくのかを根幹に据えた、カムヰヤッセン第13回公演『レドモン』、公演は約1週間後の4/6(水)から4/10(日)まで上演です。激動の現代社会・世界情勢を共有する皆様にぜひご覧いただきたい作品です。チケットは現在好評予約受付中です。CoRich舞台芸術まつり!2016春一次審査通過作品です。ぜひ劇場に足をお運びいただき、応援して下さいね!多くのお客様のご来場をお待ち申し上げております。


カムヰヤッセン第13回公演『レドモン』公演詳細:
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/01/post-44.html
チケット予約はこちらから:
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=120&type=O
カムヰヤッセン公式Webサイト:
http://kamuyyassen.daa.jp/index.html
稽古場写真をもっとご覧になりたい方はこちら(吉祥寺シアターFacebookページ):
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.957198941042099.1073741877.205085892920078&type=3&uploaded=14


(文・構成:大川智史[武蔵野文化事業団])