『愛情の内乱』稽古場レポート(その1)

4/10(日)午後2時、ティーファクトリー最新作『愛情の内乱』の稽古初日がスタートするということで、稽古場にお邪魔して参りました。2013年度(2014年3月)に《吉祥寺シアター シェイクスピアシリーズ》として『荒野のリア』を上演していただいて以来、ティーファクトリーの新作公演も3年連続4本目です。

この『愛情の内乱』は、2014年に劇作家生活30周年を迎えた川村毅氏が、『生きると生きないのあいだ』『ドラマ・ドクター』に続き、吉祥寺シアターで創作・上演する3年連続の書き下ろし新作戯曲第3作となります。公演まで早くも1ヶ月をきりましたが、今後公演初日までの間、定期的に稽古場にお邪魔し、稽古場の模様をこのような形で皆様にお伝えしようと思います。


稽古初日は、全キャストの方と多数のスタッフの皆様が揃ったところで、プロデューサーの平井さんから各々の簡単な紹介があり、そして川村氏からキャストの皆様へ戯曲についてのお話が。その中で

「僕はこの作品の劇作家でもあるから、劇作家としての正解のようなものは確かに(川村氏の)頭の中にあるけれども、それに合わせるのではなく、それを超えていくようなものを演出家として稽古場で一緒に探していきたい」

というようなことを、川村氏がおっしゃっていたのがまず一つ印象に残りました。なぜかと言うと、丁寧に装丁、製本された台本を読ませていただき、まず私が感じたことが「とても難しそうな台本だ」ということでした。これは内容が理解できないとか、あまりにも不条理だとか哲学的だとか専門用語が連発される、とかそういうことではありません。むしろそういった難しさとは無縁であるが故の難しさをこの戯曲は孕んでいると感じました。

それは、川村氏の言葉にもある通り、そこに劇作家・川村毅の世界観が屹立しているということにあります。そして、それがあまりにも明確であるが故に、キャストの皆様は、その世界観に引きずられすぎることなく、いかに戯曲の持つポテンシャルを広げられるか、普通にやっても十分面白く、一つの明確な完成形を有している戯曲の可能性をいかに広げられるか。川村氏からキャスト陣へ-そしてもちろんスタッフ陣へも-の挑戦状とも思える作品です。と同時に、劇作家・川村毅から演出家・川村毅への挑戦状でもあるのでしょう。冒頭の川村氏の言葉は自分への言葉でもあるように聞こえました。


受けて立つキャスト陣は、白石加代子さん、蘭妖子さんの、川村氏よりもキャリアの長いベテラン勢から、兼崎健太郎さん、末原拓馬さんの三十代前半の若手俳優まで、全く異なる演劇観をもった俳優陣が集結するのも、ティーファクトリーならではというところ。彼らが川村氏からの挑戦状にいかに受けて立つのか、実は少しドキドキしながら稽古場に立ちあっていました。

「とりあえず全部一通り読んでみましょう。あまり口出しはしません」という川村氏のコメントのもと、稽古はまずは本読みからスタートしました。
最初の本読み、キャストの皆様もまだまだ戯曲の世界と馴染んでいないだろうし、どんな感じになるかなと思ったのですが、そこはさすが手練手管の俳優陣の集まり、この時点で早くもすっと物語の世界が立ち上がってきます。チラシの紹介文にもあるような「遠い未来の近い過去」「とある地方の広い家」がふと、まぶたの裏側に浮かび上がってきます。先が見通せないくらい広い庭がある、どこかの地方の家の佇まい、そこに暮らす家の人となりや生活の中に、私自身が身を置いているかのような感覚。自宅で台本を読んだ時に見えてきたものとは違う風景が、読み合わせの現場には立ち上がっていました。

とはいえ、まだまだ本読みの段階、立ち稽古が始まり、台本が手から離れ、稽古を重ねていくうちに、どんどんと変わっていくことでしょう。その模様を時々、皆様にお伝えしていきます。


稽古の途中でもう一つ、川村さんの指示で気になったことがあったのですが、それはまた次回、お届けします。



(写真提供:ティーファクトリー、文・構成:大川智史〈武蔵野文化事業団〉)



ティーファクトリー『愛情の内乱』公演詳細: http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/05/post-45.html
チケットのご予約(一般) https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=126&type=O
チケットのご予約(学生) https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=127&type=O