『愛情の内乱』


『愛情の内乱』稽古場レポート(その1)はこちら!
『愛情の内乱』稽古場レポート(その2)はこちら!
『愛情の内乱』稽古場レポート(その3)はこちら!
『愛情の内乱』稽古場レポート(その4)はこちら!



これまで全4回にわたってお贈りしてきた『愛情の内乱』稽古場レポート、完結編として本番レポートを、ネタバレを避けながらお贈り致します。

現在、絶賛上演中のティーファクトリー『愛情の内乱』、ご観劇されたお客様の温かい反応を沢山いただいております。
私も先日本番を拝見し、これまで読み合わせから通し稽古まで拝見し、戯曲も何周も読んでおり、それでも劇場での本番は全然違って見えるだろうと分かってはいたのですが、本当に想像以上でした。自分の中での上演イメージを当たり前のように悉く越えていく場面の連続で、自分の想像力の至らなさを軽く恨みたくなるほどでした。

『愛情の内乱』で私が個人的に最も好きなのは、現実からいきなり幻想の中に迷い込んだように、自分が今観ている場面が(そして自分自身が)、一体何なのか分からなくなる瞬間が訪れることです。1時間50分という尺の中では本当にごく一部の場面・時間なのですが、その僅かな場面がこの『愛情の内乱』という舞台に、「家族もの」や「ホームドラマ」という枠ではくくれない、決定的な深みを与えていると思います。
この物語において、その点で大きな役割を果たしているのが謎の家政婦・トラです。直接の家族ではないけれども、この家族ともに長い歳月を過ごしている彼女は、一体どういう存在なのか、ぜひいろいろと想像を膨らませながらご覧ください。そして、もう1人、この点で決定的な役割を果たしているキャラクターは・・・・・・これはご覧になってからのお楽しみ。ぜひ劇場にてご自身でお確かめください。

ところで、30歳男子、未婚・子ナシというステータスの私は、それまで本作の台本を読んだり、稽古を拝見したりしていても、カカ(母)に共感するということはなく、やはりどちらかと言えば、母の愛や干渉を疎ましく思う、息子の側の心情に近しいものを感じていました。そんな私でしたが、本番を拝見しながら、カカの言動や行動が初めてスッと自分の中で腑に落ちるのを感じ、私にとっては大きな驚きでした。
共感とは少し違うのかも知れませんが、私がカカという人物を初めてしっかり受け止めることが出来たように思いました。確かにカカは強烈なパーソナリティを持った人物で、私はそれまでその行動や言動にやや気圧される感じがあったのですが、本番を拝見して初めて「なんかこの感じ分かるかも」って思える程度には、彼女を理解できたように思います。


冷静に〈母〉を描ける時期が来たと直感し、この劇を書いた。


川村氏のお母様も、特に晩年は強烈なパーソナリティをお持ちの方で、川村氏もそれに大変悩まれたとのことですが、きっとそれを乗り越え、ただただその苦労を恨めしく否定的に思うだけでなく、強烈な印象はそのままに、それでもどこかお母様の気持ちに寄り添うことができるポイントを見つけられたからこそ、この作品を創ることができたのかなと、舞台を観ながら勝手に想像したりしました。

家族との関係がうまくいっている方も、そうでない方も、きっとご自身のご家族に対して多くの想いを馳せる作品となっていると思います。
13日(終了)、16日(本日夜!)、17日、23日公演には「ミニミニトーク」と題して、本作に出演中の男優4人がそれぞれ、ご自身の母について語ります。それに倣ってほんの少し私事を失礼しますと、最初に戯曲を拝読し、稽古場に何度かお邪魔し、そして上演を拝見する中で、私と私の母との関係について改めて考える時間が増えました。母との間に生じたわだかまりや嫌な記憶が解消されることはもちろんありませんが、それでもどこか客観的に母との関係を見つめ直すきっかけになりました。
数日後に偶然、上京する母と3年ぶりくらいに会う機会があるのですが、その時に渡そうかなと、人生で初めて母の日のプレゼントを買ってみたりしました。今年の母の日はもう終わっちゃったので、ちょっと遅いんですけれど。もっとむずがゆい恥ずかしさがあるかと思ったのですが、今のところそんなに悪い気はしません。

ティーファクトリー『愛情の内乱』は絶賛公演中です。
劇場では公演前日の16時まで前売りチケットをお取り扱いしております。お電話予約:0422-54-2011または、インターネット予約をご利用下さい。
また、当日券は全ステージご用意の予定です。開演の1時間前より、劇場1階ロビーにて販売を開始致します。
初日からダブルコールが起こり、終演後にはロビーに立つ川村氏に、醒めやらぬ興奮や感動をお伝えしてお帰りになるお客様が多数いらっしゃり、その光景を横で見ながら私も幸せな気持ちになります。私は口ベタなので、あまり上手に自分の感動を川村氏に伝えられませんが、拙文をその代わりにということで。
ぜひ生の舞台で、この奥深い家族の物語をお楽しみ下さい。『愛情の内乱』は5/25(水)まで毎日、吉祥寺シアターにて上演中です。皆様のご来場をお待ち申し上げております。


ティーファクトリー『愛情の内乱』公演詳細:
http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/05/post-45.html
チケットのご予約(一般):
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=126&type=O
チケットのご予約(学生):
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=127&type=O

ミニミニトーク「母について」

5/16(月):長男・アニ役 大場泰正さん
5/17(火):ハル役 笠木誠さん
5/23(月):次男・ドス役 兼崎健太郎さん


ポストパフォーマンストーク

◎5/19(木)15:00
「家族について」
ゲスト:穂村弘さん(歌人)
"兄弟"が多いのも大変だが、ひとりっこも大変?!
歌人・穂村弘さんを迎え、高度成長期に育ったひとりっこどうしによる、家族のお話。

◎5/21(土)18:30
「2016年のドストエフスキー」
ゲスト:島田雅彦さん(作家)
ロシア文学に造詣の深い作家・島田雅彦さんを迎え、
やさしく"カラマーゾフの兄弟"と"愛情の内乱の兄弟"の周辺について語ります。


上記の各公演終演後、短い休憩の後、ポストパフォーマンストークが行われます。 該当の各回にご来場のお客様は、公演後にそのままお席でお楽しみいただけます。


『川村毅戯曲集 2014-2016』会場ロビーにて発売中!

『愛情の内乱』ほか、『生きると生きないのあいだ』『ドラマ・ドクター』という、吉祥寺シアターでこの3年に初演した新作3本が収録されています。
会場販売分限定、川村氏の直筆サイン入りです!ご来場の折は、ぜひお手にとってご覧下さい。

『川村毅戯曲集 2014-2016』詳細ページ(論創社ホームページ):
http://goo.gl/41I8rK


(文・構成・写真:大川智史〈武蔵野文化事業団〉)