円丈

 
執筆者:I.D


7月7日の武蔵野≪七夕≫寄席に出演する三遊亭円丈師と言えば、年配の方は金鳥の「か、か、か、か、掛布さん」というテレビCMを覚えてらっしゃる方もいるかもしれない。落語ファンの方であれば、彼が新作落語の巨匠、いや、現代新作落語の"始祖"であることは周知の事実である。


円丈は二十歳の時、"昭和の名人"三遊亭円生に入門しているが、この時すでに「新作でやっていこう」という強い思いがあったという。


70年代からすでに新作を発表していたが、79年に師円生が亡くなると一気にその活動を活発化させ、落語にパソコンやシンセサイザーを使ったり、ざりがにを高座に持ち込んだり、顔に針金を巻きつけたり、アマゾンの先住民が主人公の話だったり、2時間40分もある新作をやったりと、とにかく"全く新しい落語"に全身全霊でぶつかっていく。渋谷ジァン・ジァンで催していた「実験落語」は伝説として、今も語り草となっている。


その後も「応用落語」、「落語21」と常に新作落語会を主宰し続け、ここに出演した春風亭昇太、三遊亭白鳥、柳家喬太郎、林家彦いちなどの今を時めく人気落語家も、円丈から多くの刺激、アドバイスなどを受け、自ら「円丈チルドレン」と言ってはばからない。


円丈は、"今"に強いこだわりを見せる。いや、こだわりどころか、生き様のように思える。落語とは、笑いとは、常に現在と共にあり、一瞬でも気を抜いたが最後、時代錯誤となって消えていく、そして自分は最後の最後まで新作を創り続けるという強烈な思い。「円丈以前と円丈以後」という普通なら最大級の賛辞と思える言葉も、円丈は拒む。"円丈中"はどこへ行った!というのだ。正直に言って60歳を過ぎた者にとって、時代の先端にいつづけることは並大抵のことではないはずだ。しかし60歳を過ぎても"攻めて攻めて、前のめりで死ぬ"と言い切る円丈。どこまでも"今を生きる大衆芸能"である落語に真摯に向き合う円丈。2005年ぐらいから円丈は古典落語もよくするようになった。円丈は言う。「新作を創るものこそ、古典の弱点に気づき、古典をアレンジできる」と。「七夕寄席」ではどんな噺を聴かせてくれるのだろうか。


ちなみに前回、円丈師が武蔵野寄席に出演したのは、2006年の秋寄席。この時は「夢一夜」(2005年初演の新作)を口演しました。