なにもない空間

 


投稿者:I.D

演劇、それからオペラもですが、セット、衣裳も楽しみの一つといえるでしょう。私も豪華なそれらを見ると目を見張ってしまいます。素敵ですよね。夢の世界。

 

しかし、私の個人的趣味としては、こと演劇に関してはセット、衣裳、ほぼ無しっていうのが好きですね。ほぼ無しなので、素っ裸ではないですが、無個性な衣裳に、なにもない空間。

 

10代の頃に触れたピーター・ブルックの影響が大きいです。彼のあらゆる虚飾をはぎ取り、本質のみを残し、極小で極大の効果をあげる“血肉の通った神話”のような世界に、芸術の真髄をみるようで魅了されました。

 

それから、思い出されるのはマルセル・マルソーです。私が見たときはすでに随分おじいちゃんでしたが、例のビップの姿で、本当になにも無い舞台に一人。だれにでも分かり、多くの人が思いつきそうな、一見簡単そうだけど、彼にしか成しえない“詩”そのものの舞台。この人はこんな年まで、なににも(セットとか照明)守られることなく、自分の想像力のみで生き抜いてきたのだな、というところにも感銘を受けました。

 

ポイントは想像力なのではないかと思います。

 

あ、また思い出しました。昔、私の演劇の師匠が、ソ連でローレンス・オリヴィエ主演のシェイクスピア劇を見たそうですが、その公演、なにかの手違いでセット、衣裳などが届かず、なんとセット無しの私服で公演したものだったそうです。しかしその舞台はとてつもなく素晴らしいものだったそうです。その後見たセット有りの時よりも。

 

なぜ、こんなことをぐだぐだ書いているのかといいますと、11月に行われる劇団テノヒラサイズです。ひよこちゃんも書いていますが、この劇団セットも衣裳も使わないをポリシーにしている劇団なのです。それらがないとしょぼいのでは…、などと思わないでください。想像力があれば一瞬で富士山の山頂までも行けます。想像力に自信がなくても、良い導き手(パフォーマー)がいれば大丈夫です。テノヒラサイズがあなたを富士山の山頂まで連れて行ってくれるでしょう。