スタッフブログ:2013年11月

舞台ができるまで。

投稿者:ひよこちゃん


さて、現在、武蔵野芸能劇場では、演劇集団・声を出すと気持ちいいの会「富士の破れる日」の仕込み作業が行われています。その仕込みの模様の一コマをお目にかけましょう。



上の写真は、まさに作っている最中の舞台ですが、この舞台美術も脚本・演出をはじめとした様々な条件・制約の中で、一層世界観を引き立てるために、そしてそれだけに留まらず、1つの美術作品としての自己主張も忘れず、といったことが求められます。先ほど仕込みの様子を拝見してきましたが、舞台といいその舞台を照らす照明といい、とてもいい感じに仕上がっているなという印象を受けて、ワクワクしてきました。



芸能劇場はそう大きくはない劇場ですが、そこには日本一高い山、そして世界遺産として日本を象徴するような存在となった富士が浮かび上がることでしょう。舞台はまさに富士への入口、未完成の舞台でさえ、その風格を存分に称えていました。また、3Fの劇場ロビーでは、この公演のキッカケとなった、吉祥寺美術館所蔵の萩原英雄氏の「富士」作品を、観劇にいらっしゃったお客様を対象と致しまして、展示を行います。是非、そちらも併せてご覧いただき、長きにわたって「富士」にこめられてきた人々の思いを感じていただければと思います。
是非この週末、一度は芸能劇場へ足をお運びいただければと思います。特に初日の土曜日は比較的余裕があるようです。土曜日は17時開演なので、観劇後に夜の街へ繰り出すこともできますし、便利な時間帯だと思います。まだご予約いただけますので、ぜひともお越し下さい。


「富士の破れる日」公演詳細ページ:http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/10/post-241.html
「富士の破れる日」チケット予約はこちら:https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-t/index.jsp?id=56&type=O

 

アンスネスのこと

投稿者:ヤマネ


このブログをお読み頂いている方はご存じの通り、キーシンについて我々はただいま絶賛プロモーション準備中!なのだが、ここにアンスネスという人の事も書いておきたい。12月3日に発売を予定している4/8(火)の公演、レイフ・オヴェ・アンスネスのピアノ・リサイタルについてだ。


私が初めてアンスネスを聴いたのはCDだった。ヴァージンから出ていたショパンの3曲のソナタ、あるいは北欧ニールセンの作品集、これらを聴いたのが初めてだったと記憶している。特にニールセンのシャコンヌに私は強力に打ちこまれ、何度も何度も繰り返し聴き、ギハー!すごい!!と天に向かい絶叫していた(そのCDは今・・・行方不明)。


またシューマンのピアノ・ソナタ第1番の高揚感。ぐ・・・ぐぐぐぐぐ・・・ぐ・・・うおっしゃキター!という高揚感も素晴らしい。あるいはグリーグのピアノで録音したという作品集も良い。ミーハーした私はベルギーのコンサートホールでリサイタルを聴いたおりにサインを貰っている。蛇足ながら、アンスネスは私がコンサート後にサインを貰った唯一のピアニストである。


アンスネスの最上の部分は、しかし、公演中に本当に突然やってくる「天の恵みのような一瞬」に宿る(もちろん普段から抜群にうまいが)。どういう事か。コンサート中のある瞬間に、神が宿ったような奇跡的に素晴らしい「無敵状態」へと突入するのである。マリオがスターをゲットしてもこれほどではあるまいと思われる程に。私が聴いた例では、グリーグの「トロルドハウゲンの婚礼の日」、あるいはリストの「忘れられたワルツ」。


戦慄という言葉が相応しいその瞬間の事を私は今でもありありと思い起こすことが出来る。鳥肌がブワーっと立ったのである。こういう瞬間を持てる人というのは、滅多にいない。これこそが私がアンスネスを天才だと思う一番の理由である。


基本的に通常は淡々と、いささか素っ気なく進んで行くので、なんだか物足りないなと思われる方も居られるかも知れない。だが、突如現れる奇跡の瞬間が、アンスネスという人を「天才」たらしめているのである。


というわけで強引に結論なのですが、ベートーヴェンを今集中的にとりあげ、世界中を絶賛ツアー中のアンスネスが武蔵野に初登場します。強くご期待下さい。


なお、今月21日のアイルランドでの演奏(協奏曲ですが)についてはアイリッシュ・タイムズ紙の批評の中で「ザ・グレイテスト・ピアニスト・イン・ザ・ワールド」(世界最高のピアニスト)という、最上級の表現をした聴衆のコメントも引用され(one of the などと付く複数形ではなく、唯一の存在として絶賛している)、非常に高評価であります。


■アンスネスの演奏するベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番より
武蔵野ではこの曲は演奏しませんが、その雰囲気はつかめるのではないでしょうか。

  
■4月8日(火)レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノリサイタル詳細
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/11/post-254.html
オール・ベートーヴェン・プログラム。発売開始は12月3日(火)午前10時です。
  

公演が中止になったときの対応

投稿者:ヤマネ


大変残念な事ですが、公演というのは中止になる場合があります。理由はその時によって異なり、急病、怪我、妊娠など様々です。


公演を楽しみにしておられたお客様としましては、何ともやるせない気持ちになると言う事はよくよく判ります。その気持ちが怒りとなって発現し「病気になるなんて(怪我をするなんて)プロとして恥ずかしくないのか!」「プロなら這ってでも来るべきだ!」などと、いささかなりと無茶苦茶な、と思えるお言葉を頂戴することもありますが、それはつまり、お客様の「残念だ」という強い気持ちの裏返しなのでありましょう。主催者の我々も大変残念に思いますし、何より出演予定だった本人が最もつらいのだと思います。


今月19日には、アンドレ・ワッツの公演が予定されておりましたが、腕の怪我により中止(うっかり転倒した際に強く打ったらしく、ドクターストップがかかりました。年内の公演すべて、キャンセルせざるを得なかったそうです)。


こういう時、我々はどうするか。お客様および関係者に連絡を致します。関係者には電話をかけます。お客様にはハガキとメール、さらに当事業団のウェブサイト、Facebook、そしてTwitterで告知いたします。「何度も告知が来て煩わしいのでどれか一つだけにして欲しい」とのお言葉を頂くこともありますが、通知を可能な限り徹底するため様々な方法を採っております。


それでもなお、残念ながら当日会場に来られる方が数組おられます。なので、当日は開場の時刻~開演少し過ぎまで、ホールの入り口に立って、来られた方にお詫びを致します。「ハガキ?届いてない」「ポスト?見ていない」(これが意外と多いです)、「譲って貰ったけどそんな事言われていない」(ハガキには「友人などにお譲りになっている場合必ずご連絡下さい」と記載しておりますが、ついうっかりお忘れになるという事もあるのでしょう)、など、お越しになる方のコメントも様々です。申し訳ありません。


「公演3日前の中止」など直前の場合、ハガキは速達でも間に合いませんので、ひたすら電話です。思い出すのは2010年のラドゥ・ルプーのキャンセルです。前日の午後にキャンセルの連絡が入り、全員総出で夕方から夜まで、そして公演当日の朝早くから電話をかけまくった記憶があります。大ホールでの公演でしたから1,000件以上かける必要がありました。確か、この日を楽しみに沖縄から飛んで来ちゃった、などという方もおられ、恐縮しきりでした。


ところで、先日のワッツの際はご来場の方がゼロ!でした。私たちは不幸中の幸いと、ほっと胸をなで下ろしたのです。


■ワッツの演奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第2番:

  

  

武蔵野市民文化会館への道。意外な落とし穴。

投稿者:ヤマネ


武蔵野市民文化会館」。武蔵野市にある市民文化会館です。しかし、似たような建物が、武蔵野市内には最低あと2つ、そして三鷹市にも1つあります。そのためでしょうか、間違われて来られる方が時々おられます。電話も間違ってかかってきます。タクシーも着いちゃいます。


一つは武蔵野市民会館です。いや実に似ている、そっくりだ。文化という二文字がないだけである。しかし油断は禁物、同じ市内の中ですがとんでもなく離れた所にあります。市民文化会館は武蔵野市中町3丁目、三鷹駅から徒歩15分です。市民会館、これは武蔵境駅北口徒歩7分です。全然違います。


名前が似ていて、申し訳ありません。そして武蔵野文化会館という建物もありまして、ここも違う施設です。ここに間違ってアーティストがタクシーで行ってしまった、という事例も、過去にあったようです。


そして・・・これは意外な落とし穴なのですが、三鷹市芸術文化センターと勘違いして来られる方、これがまた意外と多いのです。「三鷹駅から徒歩圏内だが、ちょっと遠い文化施設」という思いでお越しになるのでしょう。


開演ギリギリになって、息せき切って、ゼーハゼーハ言わせながら、ヒー、間に合った!と三鷹市芸術文化センターのチケットを差し出された時には、大変気の毒な思いになります・・・JR三鷹駅を挟んだ南に北に、同じような距離にあって申し訳ありません。(もちろん、この逆のパターン、つまり三鷹に行ってしまった方が大幅に遅刻して来られる事もあります。)


以上、似たような施設を代表して(?)、皆様に心よりお詫び申し上げます。コンサート会場にお越しの際は、場所を今一度ご確認下さいませ。


  

開館30周年記念公演その1~4月22日(火) エフゲニー・キーシン

投稿者:ヤマネ


来年、武蔵野市民文化会館は開館から30周年を迎えます。(ついでに言うと武蔵野公会堂は50周年、武蔵野芸能劇場も30周年を迎えます。実に目出度いと申しますか、キリのよい年度です。)


いやはや、30年の間、いろんな事があったなあ・・・(遠い目)。はっ、私は別に30年ここで働いているわけではなかった!しまった!


・・・わざとらしくて申し訳ありません。それで、30周年!何かやろうぜ!イヤッホオオオウウゥゥゥ!!というノリではないのですけれども、来年度、つまり2014年の4月から3月末までは、普段に増してきらびやかな公演も開催致します。注意深く検討し、その計画はほぼ完成致しました。


目玉と申しますか、特別な公演がいくつか開催される予定ですが、まずは来月半ばに発売を開始する公演があります。それは、エフ・・・・・。何を隠そう、現代ピアノ界最大の巨人の一人、エフゲニー・キーシンなのであります!武蔵野文化事業団の建物内などに掲示されていたり、都心のホールでもチラシが挟まれていたりもするので、既に目にして居られる方もおられることでしょう。


"超人"という言葉はこの男にこそ相応しいのではないかと思われる、あまりにも強烈な存在。むしろ「化け物」と表現した方が良いかも知れません。カラヤンが世に送り出したピアノの巨人です。この20年ほど、東京都内ではサントリーホールでしか演奏しておりませんが、この度、交渉の結果、特別に武蔵野市民文化会館で演奏して頂ける事になりました!! キーシンを武蔵野市で聴く機会など、滅多とあるものではありません!絶対にお見逃しなく!


なお、いま確認のためにニューヨーク・カーネギーホールのサイト(英語)を見てみましたが、来日直前の、来年3月10日の公演(来日公演と同じプログラムです)はどうやら既に完売しているようです。まだ4ヶ月以上ありますし、カーネギーの大ホールは2,800席あるのですが・・・・うーむ、早い!!ものすごい人気ですね!


武蔵野文化事業団ではこれまで皆様に格安で様々な公演をご案内してきました。この特別公演も、30周年を記念して、料金は思い切って低くいたしました。・・・・とはいえ、値段を聞いて「安くないジャン!!」と思われるかも知れません。が、キーシンは超有名人だけあって、出演料も爆発的に高いのです(詳細は12月3日以降に発表致します)。


一人でも多くの市民の皆様、そして友の会の皆様にお越し頂ける事をお待ちしております。キーシン始め、充実の公演を予定しております武蔵野文化事業団の来年度の主催事業にも、どうぞご期待下さいませ。


■キーシンの弾くスクリャービン:練習曲Op.8-12のYoutube映像:
武蔵野市民文化会館でも演奏予定です。

 

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会に先駆け、蘊蓄(うんちく)

投稿者:ヤマネ


12月7日(土)に開催されますベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会。残券が少なくなってまいりました。皆様のご予約に感謝申し上げます。 本日はその演奏会に先立ち、ちょっとした雑学を記したいと思います。


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「ヴァイオリン・ソナタ」と日本語でいいますと、ヴァイオリンとピアノ、2名の演奏者によって演奏される作品を思い浮かべるのが通常です。そして、ヴァイオリンがメインだろうと思いますね。はい。普通にすっと行けばそう理解するのが妥当です。しかしっ、ヴァイオリン・ソナタはそうそう容易ではないっ!!・・・えっ?


実は、ヴァイオリン・ソナタとは言いつつも、ヴァイオリンが「従」でピアノが「主」の曲も多いのです。これはとりわけ古典派と呼ばれる時代ぐらいの作品に多く、ベートーヴェンの場合にもこれが適用されます。ピアノ→メイン、ヴァイオリン→サブ。


もちろん、ご存じの方も多いでしょう。が、私はそのように教わった時に軽く目眩がした記憶がありますので(もう軽く20年は昔になろうか・・・ハハハ、いい歳だね)、ここに改めてお知らせしたいと思った次第です。言ってみれば寿司のようなものです。ヴァイオリンはシャリで、ピアノがネタなのです。・・・いや、逆かな・・・?なんだかわけのわからない例えですねそうですね。


日本人は、クラシック音楽を聴いていても、どうしてもメロディーラインを追うのが好きなんではないかと私は思っています。なので、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタでもひょっとするとつい、ヴァイオリンの音ばっかりを追いかけがちなのではないか。


そうではなく、どうぞどうぞピアノによく注目して下さい。これが伴奏と言えるんか?真面目な話どないや?と、膝つき合わせ長時間議論したく思うほど、充実して複雑な音楽を奏でている事に気がつきますから。


そうしましたら次にヴァイオリンの演奏に目を転じて下さい。おや、ピアノの伴奏を弾いているな、とか、おやおやここはピアノに間の手を入れているのだね(間の手=「あーどっこいしょ、どっこいしょ」みたいなもの、と言えばイメージしやすいですか)、と気づく瞬間も多いでしょう。


なお、かの有名な「クロイツェル・ソナタ」(第9番)の楽譜には「非常に協奏的に、ほとんど協奏曲のように書かれたヴァイオリンの伴奏つきピアノ・ソナタ」と書かれているそうですから面白いですね。


おやまあ!と驚かれましたら、真相を確かめるためチケットをご予約頂けますと、私たちも演奏者も喜びます。お客様にとっても、いよいよ有意味な公演となるに違いありません。


■12/7(土) ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/09/post-238.html
11/9現在の残席65枚です。
   

  

コンサートで困ること~鼻編~

投稿者:ヤマネ


本日の話題は、いささか清潔ではないので、ご飯をお食べになっている方は、食後にまた読みに戻って来て下さい。なお、ゴーゴリやショスタコーヴィチの「鼻」とは全く関係ありません。


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静まりかえったコンサート会場で困ること(自分が)があります。いろいろありますが、本日はその第1弾であります。


・・・鼻水であります。先日、私はとあるコンサートホール(新宿区西新宿界隈)で、とあるフランスの若手ピアニスト(ラボアジェとかブーランジェとかそういう名前のピアニストでした)の演奏を聴いておりました。そうすると突如として始まったそれ。それは鼻水が「こんにちはこんちは!」と言ってきたので、あります。


演奏中の鼻水は本当に困ります。風邪を引いているわけでも寒気がするわけでもないのに、一体どうしたわけか。おもむろにティッシュを出してチーン!と出来れば本当に何の苦労もないのですが、演奏中にそのような事はさすがに不可であります。


鼻をすすり上げる、という行為も音が響き渡ることになるのでダメですね。こんな時私の頭に去来するのは、大西巨人が確か、鼻をすする行為を心底軽蔑するみたいな事を(私の記憶が確かなら)複数回書いていることであったり、あるいは、欧米では鼻をすすり上げるのはマナーとしてNGである、とか、そういう話だったりでありますから、鼻をすするという行為に対しては臆病?になっております(だからといって絶対にしないと自信を持っては言えないのですが)。


それはさておいて、鼻水がガンガン出てくるこのリアル、一体私はどうすれば良いのか。とりあえず上を向いてみました。なんだか一生懸命聴いているもしくは感動して涙をこらえているように見えなくもない。これだ!・・・と思いましたがだめでした。鼻水さんは容赦ありませんでした。


この先の記述は省略致しますが、私のまわりに座って居られた方の数が少なく、両隣も空席でしたので、大惨事には至らなかった、とだけ申し上げて終わりと致します。もちろん、休憩になった瞬間にトイレに駆け込んだ、とは説明するまでもなくお解り頂けるに違いますまい。


いやはや、ハンケッチは必須アイテムですね。


   

アトリウム弦楽四重奏団・ロングインタビュー第3回配信(最終回)


■ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の詳細とチケット予約は以下から
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/08/post-228.html

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第1回はこちらから
第2回はこちらから


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ロング・インタビューの第3回目、完結編です。政治に翻弄されたというイメージも強いショスタコーヴィチですが、それとは別に現在のロシアの情勢も少し語られます。また、ショスタコーヴィチが終わればベートーヴェンをやりたい、と今後の野心も。


来月の公演へ向け、期待を高めるインタビューの完結編、どうぞお読み下さい。


アトリウム弦楽四重奏団は12月1日(日)に武蔵野市民文化会館でショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全曲演奏会を開催致します。


全11時間にわたるマラソン・コンサートは、あなたの人生の、かけがいのない財産となるに違いありません。まだご予約頂いていない方は、ぜひこちらから詳細をご確認の上、ご予約下さいませ。


略称は以下の通りです
Al・・・アレクセイ・ナウメンコ Alexey Naumenko(ヴァイオリン)
An・・・アントン・イリューニン Anton Ilyunin(ヴァイオリン)
D・・・ドミトリー・ピツルコ Dmitry Pitulko(ヴィオラ)
Anna・・・アンナ・ゴレロヴァ Anna Gorelova(チェロ)
Q・・・秋島百合子(ロンドン在住ジャーナリスト)


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第3回配信 今後の活動について、そして弦楽四重奏をすることの難しさ


Q=現在のロシアでショスタコーヴィチの音楽を演奏するときは、実際にこのような政治状況や歴史を考えてやるのですか。それとも純粋に音楽だけ?
D=演奏者によります。


Q=観客は?
An=ショスタコーヴィチの音楽への反応は、2種類あるだけです。受け入れるか、受け入れないかです。この曲は好きだけど、こちらは嫌いだ、ということはなくて、彼の音楽自体が好きか嫌いかなだけ。ロシアで観客がショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を聴きにくるでしょ。ものすごく熱狂的な反応か、まったく否定的な反応しかない。

Anna=それは彼が天才的な創造である印じゃないかしら。芸術においても、建築でも、絵画でも舞台芸術でも、こんなものは受け入れられない、といわれるか、これは天才的だというかのどちらかだけ。いつもそうです。


Q=リリースしたCDを見てもロシア物が多いですが、ロシア音楽をライフワークとしているのですか?
An=私たち今はベルリンに住んでいます。最初の目的は音楽を勉強するためでした。ベートーヴェンとか、シューベルト、シューマン、メンデルスゾーン、モーツァルト、ハイドンなどを勉強するために。ロシアでは十分に演奏の仕方や公演について学ぶことができなかったので。ですから特にロシア音楽をやろうというのではありません。ベートーヴェンやリゲティやバルトークなどのコンサートなどでもよい批評をもらっています。ですからロシア音楽の演奏家としてのみ受け入れられているのではありません。


Q=でもリリースや今までの活動を見て、ロシアのものが多いですよね?
An=モーツァルト、ベートーヴェンも録音しています。スペインの現代作曲家のホルディ・セルベージョ(Jordi Cervallo)も録音したし。ベートーヴェンもドビュッシーも録音しました。


Q=イメージの問題かもしれませんが、みなさんはロシア人で歴史的に深刻な意味のあるベルリンに住み、歴史的、政治的にいろいろな意味を持つショスタコーヴィチをたくさんやっている。
D=メンデルスゾーンのチクルスも考えています。

An=アトリウム弦楽四重奏団の創立15年が2015年にあるので、そのときはべートーヴェンのチクルスをやりたいですね。

Anna=それが夢なの。

D=今までにやったベートーヴェンの批評はよかったから、ぜひ。僕の意見ですが、我々にとって、なぜかモーツァルトはむずかしい。理由はわからないけれど。ハイドンとベートーヴェンはいいのに。

An=我々の人生の特定の時期に、我々が重要だと考えるレパートリーを明確に表現しなければならないと思っています。それでメンデルスゾーンはあと2年後には重要になると考えています。彼がドイツ人だとか、我々がベルリンに住んでいるとかいうのではなくて、音楽の世界に重要で、弦楽四重奏にとって重要だからです。我々にとって今の段階では、ショスタコーヴィチが一番重要なんですよね。いろいろ平行してやっていますけど。


Q=チャイコフスキーやショスタコーヴィチを直接知っていた人と接触する機会はありましたか?
An=第15番を初演したタネイエフ弦楽四重奏団のチェリストのヨゼフ・レヴィンソン教授です。この曲を始めて演奏した人です。ショスタコーヴィチのモスクワの家に行って練習したそうです。レヴィンソンから学んだ最初の重要なことは、楽譜に書いてあるテンポについてです。テンポはショスタコーヴィチにとって一番必要なことではありませんでした。楽曲のキャラクター(特質、特性)がテンポより大切だというのです。たとえばテンポが80の場合、厳密に80でなくてもよい、そこから音楽を作るキャラクターを生み出すことが大切で、テンポは90でも70でもいいから。それがショスタコーヴィチのメトロノームです(笑)。

Anna=それは重要なことですね。

D=ほんとうかどうかはわかりませんが、そういう話はききました。

An=ある曲をいつも同じキャラクターで同じテンポで演奏するのは不可能ですよ。その日その時によります。気分がいいとか音響がどうだとか、その時によってすこし速く、または遅くやるものです。いろいろな状況によりますね。

Anna=レヴィンソン教授が私たちの先生で、私たちのクァルテットの創設を後押しして下さいました。


Q=みなさんはベルリンに定住しているのですか?
Al=はい、そうです。


Q=ロシアでは、何をするにも自由ですか?
An=ええ、もちろん。


Q=ヨーロッパできくニュースですが、現体制下でも自由を奪われる人々がいると伝わってきます。
A=我々が政治の話をするのは適切ではないと思います。集中して考えているのではないので。


Q=よくロシアと行ったりきたりするのですか?
Al=もちろんです。


Q=アーティストはなんでも自由にできるのですか?
An=はい、そうですよ。


Q=アーティストには特権があるのかもしれませんね。
An=西側のメディアには誇張された話がたくさんあると思います。民主主義とか自由について話すとき、これらの言葉の解釈にはいろいろあります。ですからロシアに民主主義がない、などというのは間違いです。音楽家はまったく問題ないですよ。極端なケースでない限り。それはどこでもあるでしょう。


Q=「プッシー・ライオット」(*)の刑罰が西側メディアでは大きく報道されていますが、あの事件をどう思いますか。

(*) カラフルな覆面を被った若い女性3人のパンク・グループ。2012年2月にプーチン体制を批判する歌をロシア正教の聖堂で歌い、同年8月に暴徒行為罪で禁固2年の実刑判決を言い渡された。以後釈放されたメンバーもいるが、2013年7月現在、リーダー格のメンバーは釈放を求める上告を却下されて服役中。宗教と表現の自由を巡ってロシア内外で大論争を呼び、欧米メディアは主にロシア体制に批判的な姿勢を示す。歌手のマドンナがロシアでのコンサートで派手な抗議をしたり、BBCを含む西側の映画製作者が映画館用のドキュメンタリー映画を作ったりして反響が広がっていった。

(みんなが一度に話し出す)

Al=アーティストの問題ではありません。法廷の判決が間違っていたのです。

Anna=いろいろなことが間違っていました。最終的な判定に至る前に、普通ではありえない、よくない情報が多く飛び交いました。私の意見としては、この女性たちは、もし何かに反対しているならその意見を示すことは正しいけれど、教会でやるべきではなかったと思います。教会という場所を尊重すべきでした。街頭ならよいけれど、幼稚園もだめ、教会もだめです。


Q=それで刑務所に入れられたのですよね?
An=それはとても不可解な判決です。
(同時に話す)
Al=子供がいる人もいたのに。

An=彼女たちがやったことはいいことではありません。でもその結果(判決)は行き過ぎです。

Anna=あれは見せつけのための裁判(show trial)ともいえますね。禁固刑に値するような罪ではありません。行いは悪かったけれど。


Q=あと2つだけ質問です。先ず近い将来の計画について。
An=創立15周年を記念する行事をやりたいと思っています。もちろんチャイコフスキー生誕175周年もね。彼の3つの弦楽四重奏曲も含めてすべての室内楽をやるミニ・フェスティバルを主催できたらいいと考えています。おそらくベルリンで。三重奏曲や六重奏曲、ヴァイオリンの作品など。さらには、あまり有名ではないGrigory Fridというロシアの作曲家のピアノ協奏曲を2曲を録音します。ヴィオラのソロの入った曲も入れます。ドイツの放送局で録音し、おそらくCPOレーベルになるでしょう。ピア二ストはドイツ人です。さらにピアノ五重奏曲もあって、ヴァイオリン2人にヴィオラとチェロとピアノですが、リーダー的楽器(leading voice)はヴィオラという楽曲です。

D=ヴィオラが話をするわけです。


Q=では、最後の質問です。日本にはプロの弦楽四重奏団がほとんどありません。やりたい学生はいるのですが、先例がないのです。どうしたらいいか、何かアドバイスをいただけますか。
An=専門の先生を招聘して大学などの音楽教育機関に室内楽専門の部門を作ることでしょうね。何か小さな弦楽四重奏アカデミーが日本にできるといい。それしか方法はないでしょう。

Q=では何からスタートすればいいのでしょうか?
D=先ずはだれか、人がいないとね。ほんというにわかる教授が必要です。

An=興味のある学生たちをプロの生活に導くには非常にむずかしいことです。

Anna=だからこそ私たちはタネイエフ弦楽四重奏団のレヴィンソン教授に非常に感謝しているのです。この(弦楽四重奏という)アイディアを私たちの頭に吹き込んでくれたのはこの先生ですから。彼の教え方というのは、一緒になってやる、ということなんです。お互いを愛し合うこと、これがコミュニケーションを助けるのだと。

D=そうですね。僕は最初からいたのではありませんが、彼がすばらしい人であったのは知っています。クァルテットの練習をするときも、それは五重奏曲のようでした。先生がものすごくプロセスに入り込んで一緒にやっていましたから。ですからコンクールに参加したときも五重奏のようでした。あらゆる感情を分かち合ってくれました。

Anna=教える先生というのは、それぞれの楽器の演奏者であるだけでなく、クァルテットの一員としての経験が長い人でなければいけません。

D=グループの中のことがわかっていないとね。

Anna=弦楽四重奏団の中から、長い間グループがどう活動するのかをわかっていることが大切です。

Q=そしてコンクールがあります。
An=コンクールに優勝するのはよいスタートにはなります。でもそれからの仕事はコンクールに勝つことよりずっとむずかしいです。生涯の競争ですからね。毎日、その演奏を特別のものにしなければなりませんから。

Anna=コンクールは一般に知られるためにあるのです。でもそれからが、ほんとうのキャリアを作る段階になるのです。


【了】


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第1回はこちらから
第2回はこちらから


■ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の詳細とチケット予約は以下から
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/08/post-228.html


  

アトリウム弦楽四重奏団・ロングインタビュー第2回配信


■ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の詳細とチケット予約は以下から
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/08/post-228.html

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第1回はこちらから
第3回(最終回)はこちらから


昨日に引き続き、アトリウム弦楽四重奏団へのロング・インタビューの第2回をお送り致します(全3回です)。


第2回目はカルテット演奏について、解釈についてを中心に話されます。今回も非常に読み応えがあります。やはりショスタコーヴィチはロシア人にとっても非常に重要な作曲家なのです。「崇拝される存在」とまで言い切っているところに驚きと畏敬の念を抱きます。


それでは今回もごゆっくりとお楽しみ下さい。


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略称は以下の通りです
Al・・・アレクセイ・ナウメンコ Alexey Naumenko(ヴァイオリン)
An・・・アントン・イリューニン Anton Ilyunin(ヴァイオリン)
D・・・ドミトリー・ピツルコ Dmitry Pitulko(ヴィオラ)
Anna・・・アンナ・ゴレロヴァ Anna Gorelova(チェロ)
Q・・・秋島百合子(ロンドン在住ジャーナリスト)


第2回配信 ショスタコーヴィチの全曲をやる意味、個々の作品に関して。そしてショスタコーヴィチの政治的な闘争。

Q=ではショスタコーヴィチについて。全曲をやることの意義はなんですか。お客さんにとっても。
An=重要なことですが、作曲家の生涯を1日で一緒に生きてほしいからです。これはほんとうに自伝のような作品ですからね。観客も演奏者も一緒に辿るわけです。2晩でやっても3晩でやっても、そのプロセスを経験するのは不可能です。家に戻れば家族もいるし、他にもやることがあるでしょ。スイッチ入れたり、切ったりしていては全体像を把握することはできません。彼は最初に24曲作るつもりだったのですが、でも15曲で止めました。


Q=どうやって聴いたらいいか、アドバイスはありますか?
An=曲の前に、作曲家について何か説明を加えたらどうでしょう。音楽を聴くだけでは十分でないこともありますから。一般の人にはね。

Anna=いろいろ象徴的なものが音楽に入っていますからね。私たちは書簡とか本とかいろいろ読みましたが、弦楽四重奏曲の一つ一つに興味深い話が詰まっています。それはあまり知られていないので、観客に伝えたらおもしろいと思うのです。

D=たとえば第6番は第5番と第7番からはかけ離れています。第6番とは別個のものなので、言葉で説明しなければ理解のしようがないでしょう。僕も初めて聴いたときはなんと変わった音楽だと思いました。


Q=彼としてはですね?
D=そうです。とても甘いのです。ショスタコーヴィチの音楽が甘いなんて想像できますか。この曲は2番目の妻に捧げられたものであることがわかったのですが、結婚したばかりでした。

An=ほんの2年ぐらいの結婚生活でしたけれどね。うまくいかなかった。

D=理由がわかると、音楽が理解できるものです。弦楽四重奏はビジネス的なプロジェクトではなくて、自分のために作曲したのです。


Q=第15番を書いているとき、自分の死期が近づいていることを知っていたのですか?
An=はい、この時すでに自分は助からないとわかっていました。弦楽四重奏曲はベートーヴェン弦楽四重奏団に捧げましたが、これは自分自身のために書いたのかもしれませんね。自分の過去を思い出すような記しが音楽の中にたくさん入っていますから。


Q=15曲もあるんですから、好き嫌いはないですか?
D=すべて同じです。

An=僕は違うな。

D=作品のクオリティは同じです。

An=たしかにクオリティは同じですが、好き嫌いは変わるものです。たとえば僕は長年第5番が好きだったのですが、飽きてきました。ちょっとね。昨年のシーズンでは第11番をやりました。これが15曲の中で一番天才的だと思ってね。いろいろなものが入っているから。今年は多分、第12がいいです。なぜだかわからない。彼(ショスタコーヴィチ)に何が起きたのか。もしかした弾くたびに新しいものを見つかってそれに興味を持ち始めるからかな。

Al=演奏しているといろいろなことを見つけますから。観客は彼の生涯について少し知った方がいいと思いますよ。


Q=チャイコフスキーやショスタコーヴィチは現在のロシアでどのように位置づけられますか。クラシック愛好家の中で、たとえばドイツ人にとってのべートーヴェンとかのように、特別な作曲家なのですか?
An=2人とも全くその通りです。大勢の作曲家がいますが、ソ連時代の作曲家としては、ショスタコーヴィチは崇拝される存在です。チャイコフスキーも、ロマン派の世界では同じです。もしロシアで、音楽関係者でないふつうの人にロシアの代表的な音楽家は?ときけば、間違いなくチャイコフスキーというでしょう。そしてもっと音楽をわかっている一般の人なら、ショスタコーヴィチというでしょう。2番目に。

D=90%の人はこの2人の音楽をきいたことがないかもしれないけれど、間違いなく名前は知っています。


Q=チャイコフスキーは、先ずバレエなら知っているのでしょうか?
An=そうでもありません。もちろん2つぐらい誰でも知ってる。『白鳥の湖』もあるし。これはロシアに限ったものではありませんが。

D=ソ連が崩壊した時、テレビで3日間『白鳥の湖』をやってましたよ。


Q=ショスタコーヴィチの政治的闘争について、今日のロシア人は音楽を聴くときにどれぐらい結びつけて考えるのでしょうか?
An=それぞれ意見が違うと思いますよ。僕はいろいろなものを読んでいますが、体制から苦しみを受けていることに関して少し誇張されている気がします。必ずしも真実ではないと思う。ですから、ある程度の影響はあるけれど、多くの場合、彼はラッキーでした。いろいろなコンサートをやることができたわけですから。もちろん禁止されたこともあるけれど、全てではない。抑圧されていた話は少し大げさです。最終的には、自分のやりたいことをやり遂げました。


Q=スターリンが死んだ後も生き延びたのですものね。プロコフィエフと違って(スターリンと同じ日に没)。
An=スターリンやあの体制が、もしかしたら彼の生涯を短縮したかもしれない。もしかしたら・・・・。

Anna=ちょっと失礼...私は別の想像をしています。私は、以前は、彼はソビエト体制に適応する人だと思っていました。当時の作曲家の中で100%生き残ったのは彼だけだし、生存中に十分受け入れられていて、彼のほとんどの作品は有名になり、作曲後何年も経ってからも公表され続けました。ヴァイオリン協奏曲やいくつかの弦楽四重奏曲などがその例です。どれも評判がよく、批評家も称賛しました。彼は流れに沿っていって体制を受け入れ、適用することができる人だったと思っていました。でも彼の書簡などを読んで少し考えが変わりました。彼は先ず深いユーモアのセンスを持っていました。第2にはとても繊細な人で、いつも他の人たちに心を寄せていました。いつもです。ですから、無名の作曲家や音楽を援助しました。たとえば戦争中、みな貧しい時には食べ物や住居を用意したりしました。

An=自分のためでなく、他の人たちにね。

Anna=それから家族のあらゆる人たち、妻の家族も助けました。他の人も。それが彼の人柄なのです。人々に愛されました。謙虚な人で、自分自身のためにいろいろな要求をすることは決してなかった。そして要求をしなかったからこそ、いろいろなものを与えられました。ユーモアのセンスがあったし、繊細だった。もし体制が彼の人生を短くしたのなら、それは彼がいつも何かを恐れていたからでしょう。

An=自分のための恐れていたのではなくて、家族とか周囲の人たちのためにです。

Anna=歴史的を振り返って、人間というものの悲劇を反映していたのでしょう。それが彼の音楽に大きな影響を与えています。


Q=国家の悲劇というより人間個人の悲劇なのですね。
An=もちろん国家の悲劇にも根付いています。たとえば交響曲の「1905年」(第11番)、「バビヤール」(第13番)、またはレーニンの交響曲(第12番「1917年」)とかね。弦楽四重奏曲も同じですよ。いろいろな人物に捧げてますよね。第6番は、正式には捧げた人の名前がありませんが、非公式に2番目の妻に捧げたものであることがわかっています。

Anna=どれが好きかという話がありましたが、他のメンバーは第6番はあまり好きではないようです(笑)。でも私は大好き。美しいところがたくさんありますから。

Al=ショスタコーヴィチには、作家や画家が言えないことを、わかる人のみが理解できる音楽というものなら表現できるというアドバンテージがありました。

D=文化水準が低くて彼のユーモアを理解できない人たちが(体制の中に)いるのですよ。時に、このユーモアは特定の人に抵抗するものだとか、体制に反するものだと感じられることがあります。

An=何かに捧げられているとしても、それが本音でないことはあります。 たとえば、すでに交響曲「1905年」(第11番)に触れましたが、最初のロシア革命に捧げられていますが、実際には、ショスタコーヴィチの「誕生の時代」というものに捧げられたのかもしれない。生まれたのはこの年ではなくて1906年ですが、この作品は彼の生まれた時代に捧げられたものなのです。特に革命のアイディアと結びついているというのではなくて。

Anna=「弦楽四重奏曲第8番」についても同じことがいえます。これは自分について、自分のために書かれたものです。「戦争とファシズムの犠牲者」に捧げられたものになってはいますが。


Q=「バビヤール(交響曲第13番)」みたいにですね。
Anna=そうです。

第1回はこちらから
第3回(最終回)はこちらから


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■ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の詳細とチケット予約は以下から
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/08/post-228.html


  

アトリウム弦楽四重奏団・ロングインタビュー第1回配信


■ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲全曲」演奏会の詳細とチケット予約は以下から
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2013/08/post-228.html

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12月1日(日)に武蔵野市民文化会館でのショスタコーヴィチ・マラソンに挑むアトリウム弦楽四重奏団のロング・インタビュー記事が届きました。ちょうど開催一ヶ月前となる今日という日を記念して、掲載を開始致します。


インタビューが行われたのは夏の終わりの8月31日(土)のフランス、ヴィッセンブールという場所です。この地で彼らは日本に先がけ、このインタビュー翌日の9月1日(日)にショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲「全曲演奏会」を行い大喝采を浴びました。インタビュアーはロンドン在住のジャーナリスト秋島百合子氏。


かなりの長文ですので、上中下三回に分けて公開いたします。本日はその第一回目です。


演奏している分には余り疲れないようだ、とか言うことがわかったり、メンバーによって考えが異なる部分もあったりして、実に興味深いインタビューとなっております。ぜひ斜め読みではなく、腰を据えてじっくりとお読み下さい。


そして12月1日(日)は、あなたの人生にとっても極めて稀な体験となるに違いないこの超・特別なコンサートにぜひ、足をお運び下さい。皆様のご来場、お待ち申し上げております!


第2回はこちらから
第3回(最終回)はこちらから


略称は以下の通りです
Al・・・アレクセイ・ナウメンコ Alexey Naumenko(ヴァイオリン)
An・・・アントン・イリューニン Anton Ilyunin(ヴァイオリン)
D・・・ドミトリー・ピツルコ Dmitry Pitulko(ヴィオラ)
Anna・・・アンナ・ゴレロヴァ Anna Gorelova(チェロ)
Q・・・秋島百合子(ロンドン在住ジャーナリスト)


第1回目配信 いきさつ~練習について、そしてアトリウム弦楽四重奏団について
Q=日本向けにこのプログラムを選んだいきさつは?
An=日本から、ショスタコーヴィチのマラソン公演をやらないかという提案をいただいたのです。いつかこの作曲家の全曲演奏をやりたいと長年思っていたのですよ。そのきっかけとなる機会がほしかったのです。でも始めはできるかどうか不安でした。なにせ7時間でしょう。どうやって1日でまとめるのか。我々の間でいろいろ話し合った結果、これはすばらしいアイディアだ、誰もやったことがないんだからという結論に達しました。1日でやることによって、観客も我々も、全体像を短時間で把握するためのいろいろな可能性が出てくるだろうと思ったのです。日本の皆さんに感謝です。


Q=チクルスの準備にどれぐらいかかりましたか?
An=そんなに長くないですよ。15曲のすべてがすでにレパートリーとして演奏していましたから。2000年に結成した時から、違う年に個々に演奏しています。今のメンバーになってから5番をやって、それから7番、それから1つずつやって、全てがレパートリーに入りました。


Q=チクルスはすでに(ヴィッセンブールの前に)どこかでやったのですか?
An=ええ、チクルスとしては2度やりました。1度はサンクト・ペテルブルクのマリインスキー・シアター・フェスティバル、白夜祭です。今年の5月です。3日続けて、一晩で5曲です。まあ、通しですからマラソンのようなものですね。それからアイスランドのレイキャビーク芸術祭で、これは1日でやりました。


Q=疲れませんでしたか?
D=我々にとっての方が(観客にとってより)やさしいのですよ。通常、午前中にリハーサルで5曲の弦楽四重奏を練習して、夜に本番で5曲やれば、もう10曲やっているわけでしょ。3日で30曲になる。全部通せば、終れば疲れるけれど一息でやれるのはいいことです。

An=ちょっとつけ加えると、ステージに上がるには、その都度チューニングして演奏する気持ちに入らなければならない。これはとても重要なことです。5曲ずつ3回やると、3回そのプロセスがあるけれど、15曲やると、一度で済むからその方が楽なんです。レイキャビークでは、ただ一度やればよかった。3晩に分けてやるよりやり易いんです。

D=コンサートの後で、ドイツ大使館で大きなレセプションがあってね。3時間から4時間も。疲れた気分はなかったなあ(笑)。


Q=今リハーサルが終わったところですが、15曲もあるのに短時間でどのようになさったのですか?
Al=あそこ、ここと、ちょっと難しい箇所だけやりました。

An=でも僕は違う意見です。小さいところやイントネーションを考えながら一緒にやるのは重要ですが、もっとも大切なのは一緒にいるということです。我々にとっては、我々のムードや形をチューニングして明日のためのプロセスに入ることですよ。一緒に時を過ごすことが重要であって、極端に言うと、何をしていてもかまわないんです。


Q=明日の演奏会の前、最後に一緒に演奏したのはいつですか?
An=この音楽祭(注:ヴィッセンブール音楽祭)ですでに別のプログラムの演奏会をやったのですが、その後一度、ベルリンに帰ってマラソンの練習をしていました。他にもこの後に別のところでWeinberg というショスタコーヴィチの弟子の作品で、おもしろいけれど難しい、今度ベルリンで演奏するピアノ五重奏曲(op.18)と弦楽四重奏曲の第8番(op.66)の練習もしていました。


Q=アトリウム弦楽四重奏団についてうかがいます。創設メンバーはアレクセイとアントンですね?
An=アレクセイはその前にクァルテットを持っていました。2000年の前です。その後、アレクセイが僕を呼んでくれて参加し、サンクト・ペテルブルク音楽大学時代に学生たちでアトリウム弦楽四重奏団を結成しました。チェロ奏者は別の活動もあったりして、2002年アンナが入り、ドミトリーは2004年に入りました。


Q=アトリウムという名前についておしえてください。
An=それには美しい説明があるんですよ。アトリウムとはローマ時代の宮殿の美しい中庭を意味します。天井は空ですから、見透しがきく。4人のパーソナリティは別ですが、室内楽を作るときはアトリウムで一緒にやろうということでこの名をつけました。

Anna=歴史的に見ると、アトリウムは家族や友達が団欒するところでした。


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