スタッフブログ:2017年11月

シルヴェストロフという事件について

投稿者:ヤマネ


最近ブログが更新されない。悲しい。なんつって嬉しい言葉を何人の方からか頂戴しまして、いやー、ありがとうございます。ブログ書かないとなー、と思いながらも、つい目の前の様々の事柄どもに追われて更新が滞っております。


しかし、このたびこれだけは書いておかないといけませんなと思ったのは、そう、昨日のシルヴェストロフであります。あまりにも素晴らしい事件でした。いや、期待はしていたけれど、実演に接した私は、ピャーッと叫んで目ン玉が飛び出て、そのままひっくり返ってこけつまろびつ、ほうほうのていで自宅にたどりつき、シャワをジャッと頭から浴びてそのまま眠りについたのである。グー、スピースピー。おはよう。おやおや、7時前から子ども達がキャーキャーいっているね、パパは寝不足だよ。わかったわかった、一緒に<よんきびう>を見ようね。


昨日の公演は、はからずも3時間を超すというすさまじい長丁場になったわけですが、意図的に長くしたわけではなく、2時間で終わるはずだったのです。ところが、いざ演奏が始まってみますと、アジャジャ、めっさ長かったんで関係者一同、うろたえたわけです。うおお、ながいわ!!


しかし、コンサートの最後にものすごい事件が待ち受けていました。それは・・・シルヴェストロフ本人による演奏だったのであります。バババーン!!!


リュビモフという方は、細かく段取りとかをするのがお好きな方のようで、皆さん会場でごらんになったと思いますが、ほぼ一曲ごとにピアノの蓋の開け具合を変えていました。この曲はこうで、この曲はこうする、昨日は不肖私がステマネの真似っ子のような事をさせていただきましたが、リュビモフさんに尋ねますと何でもかんでもかっちりと答えが返ってきたのです。ふふ、リュビモフさんったら、意外と背が低いんだね。そんな余計なことを思いながら、せっせとメモをいたしました。


それに対してシルヴェストロフさんはもっと自由というかユーラシア大陸的というか、こう言ってはナニですが、なんとなく、ぼーっとしておられる。段取り?え、なにそれ美味しいの?そんな声が聞こえてきそうでもあります。


プログラムの最後の最後は作曲者本人によるピアノ演奏が予定されていました。なので、段取りでは「プログラムの後半、シルヴェストロフ氏は舞台袖にいる」ということになっていたのに、後半が始まってふと気がつけば・・・ちゃっかりと客席に座ってるやんけ。そしていつまでもびくとも動かれることはなかったのであります。


そうっすよね、自作は客席で聴きたいよね。わかるわかる。でもいざ自分が弾く段になったら、客席からスッと、こう、俺、作曲家、みたいな感じで出てきはるんでっしゃろ、と思っていたところが、ついに自分の番となっても動かざる事山の如し。舞台袖に戻ってきたリュビモフさんを含め我々は、すわと色めき立ちました。


どうなってるんだ、出てこない。なんだどうした、なにが起こっている。どうしたどうし田!!えー、弁当ー、弁当ー。おいしい唐揚げべんとーいかぁっすかああ!!・・・メダパニの呪文にやられた私は何か意味不明な事を口走っていたようです。しかし何もしなければ何も起こらないので、うーん、じゃあもう舞台転換しちゃえ、と舞台に出ましたところ、ユラーッと。


・・・ええ、本当に「ユラーッと」という表現以外は思い浮かばない、茫洋たる雰囲気をまとい、そしてやや困惑の表情をたたえシルヴェストロフ氏は静かに動いていました。そう、客席から舞台へ。スーッと音もなく舞台に上がり、、、、そしてそのまま舞台袖に消えました。


あああ!!!!!ここにいたり我々はますますメダパニにやられまして、目をひんむいて唾を飛ばしながら全員でシルヴェストロフ氏に向かい「舞台、舞台!」と譫言のように繰り返し唱えたのであります(なおシルヴェストロフ氏は英語がほぼおできにならないので、日本語と英語とロシア語が弾丸のように飛び交っていたことは言うまでもありますまい。シルヴェストロフはウクライナ人ですがロシア語はお話しになります)。


そんなこんながあって、なんとか舞台にシルヴェストロフとリュビモフが二人になる。演奏が始まる。シルヴェストロフのしゃがれ声とピアノの音が、スピーカーからノイズに乗って聞こえ始める。・・・・ここからアンコールを含め公演の最後までは、もうひたすらに「何かが降臨していた」としか申し上げられますまい。(※なお、降臨していたのはシルヴェストロフです。)


それまで2時間半近くにわたって延々と作品が演奏されて来たしそれは素晴らしかったけれども、全てはこの最後のシルヴェストロフのための前振りだったのかもしれません。


まるでタルコフスキーのようだ、と私は思いました。たとえばノスタルジア。ざらついていて、静かで、変化が少なく、張り詰めた映像が流れて行くようだったのでありました。(時刻が遅くなってもいたため、終わって欲しくないと心の隅で思いながらも、早く終わって!早く・はやく・ハヤクッ!と、現実的には100%満喫できなかったのは残念なことでした)


やはりきっと、シルヴェストロフ初来日公演は、事件だったのであります。全ての関係者の皆様、そしてご来場いただいた皆様に深く感謝する次第であります。


サンキュー・ミスター・バレンティン(最後は軽いノリで)