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フーガの技法

投稿者:ヤマネ

2018年4月という月を振り返りたいと思いました。


今年の4月は、そうだなあ、ついに長男が幼稚園に入ったんだよなあ。好き嫌いが激しいK君が、給食を全部残さず食べてくれる日は来るのだろうか。ああ、ああ・・・・タメイキ・・・。


ハッ、職場でこんな事を思い悩んで涙を落としていてはいけない。そう、4月のコンサートについて振り返るのでした。そう、4月ね・・・・(遠い目)。古楽が、しかも相当コア目のコンサートが並びましたでしょうか。ロザリオのソナタ全曲、オリジナル楽器によるアルペジオーネ・ソナタ、そしてチェンバロの大家によるフーガの技法全曲・・・。


ロザリオのソナタやアルペジオーネ・ソナタについてはこのブログとかこのブログをご覧下さい。


アルペジオーネ・ソナタの公演は皆様にとって素晴らしい体験となったのではないでしょうか。誰です、ふーん、こんなもんかと拍子抜けしたとか言っている人は!!ものすごく力強い音に仰天いたしました。コワン氏本人から聞いたところによりますと、音楽家でこの楽器を持っているのは多分私一人だと思う、それ以外のオリジナル楽器は15台ぐらいしか存在が確認されておらず、どれも全て博物館にある、とのことでした。ベルリンには発明(?)した人の楽器もあるよとのこと。ああ、レアだ。レアだ。NHKによるテレビ収録がありましたから、全国の皆様ぜひご覧下さい。6月22日(金)午前5:00~ NHK BSプレミアム『クラシック倶楽部』です。


そしてロバート・ヒルですね。日本にはものすごい数の演奏家が来日してコンサートを開催していますが、なぜ今まで呼ばれなかったのが分からない、という人がたまにいます。その一人がこのロバート・ヒルなわけです。なぜだろうなぜかしら(実業之日本社刊)。


その素顔は「訥々としていながらも時として饒舌」。「訥々としていて時に訥々」というクリストフ・コワン氏と近いものがありつつも、少しく異なっているようだ、うむ、と感じいりました。楽器について非常に要求の高い人で、武蔵野公演でも長時間にわたってご自身で調律されていたのが印象的です(チェンバロ奏者はピアニストと違って自分でも調律できる人が多い)。他の公演では木工用ボンドやらなにやらが飛び出したという話も出ております。木工用ボンド・・・だと・・・?ちなみに武蔵野での使用楽器は、実の兄であるキース・ヒル製作というのもとても面白かったですね。ゲタゲタゲタ!!・・・あっ、笑うところではありませんでした。


フーガの技法って、本当に聴くのが難しい作品で、「最初から最後まで寝てました」と告白されても全くOK!わかる、わかるよ兄弟!と背中バンバン励ましてあげたくなるような作品だと個人的に理解しておりますが、この日は違っていた。長い長いと思うはずの(失礼)この作品があっという間でしたもんね。さすがはロバート・ヒルさんですよ。長いと思ったのは最後の瞬間で、未完のところで演奏をふっと止めてしまったのですが、その後に続いた感動的な間の長さは本当に見事だった。


あの瞬間を皆様と共有できた事は本当に喜ばしいことでした。


駆け足になりますが4月のクラシック公演について振り返りましょう。ラケル・ロヘンディオアイラム・エルナンデスのスペイン歌手組も素晴らしい声を聴かせてくれました。ミハイル・リフィッツというものすごい才能に行き当たった事も素晴らしいことでした。コンタクトの調子がおかしい、左目がほとんどみえないや、と心配になるような事をいいながら涼しい顔でモーレツかつクリーンな演奏を聴かせてくれました。彼は伸びます。


ガブリエラ・モンテーロは、勝手にもっと小柄な方を想像していたのですが、実はママがアメリカ人ということもあるのか非常に大きな方で(太っているのではない)、バリトン歌手という夫君と並ばれますと、ビバ!という感じでしたね。意味不明で申し訳ありません。アンコールの即興のお題をお客様に歌ってもらう、というのも新鮮でした。


5月の連休はおやすみさせていただきまして、ウカシュ・ヴォンドラチェックの公演からまたコンサートが始まります。皆様も連休の疲れを癒やしながら、また当事業団の公演にお越し下さい。


  

コワンのアルペジオーネ

投稿者:ヤマネ

 

先日のブログに引き続き武蔵野市中町よりお伝えいたします。恐れいります。


本日はいよいよ、クリストフ・コワンがアルペジオーネを弾く公演です。半端じゃないですこの公演は。中の人が言うのもあれですが、すごいです。そもそもアルペジオーネという楽器が、世界を探しても、もう20台前後しか残っていないという楽器なのです。


ポッと出てパッと消えた楽器、それがアルペジオーネ。人気が出なかったんだね。なので、そのまま歴史に埋もれて終了するはずだったのですが、シューベルトという人がですね、「アルペジオーネソナタ」という超絶名作を書いてしまったんですよね。この楽器のために。このただの一曲のために、この楽器は名前を今なお生きながらえさせているのです。なお、アルペジオーネソナタは幸か不幸かチェロで演奏が可能なので、現代ではチェロで弾くのが普通です。


ったく、シューベルトがいけなかったんだよ。フランツが余計なことをしてくれたぜまったく。あいつのせいで「アルペジオーネって何なの?えっ?楽器?ほぼ絶滅危惧種っ!ヨシコそれ聞いてみたーい!!ねえねえ、ねえったらぁ!!」


・・・みたいな話になるわけですよ。


ヨシコみたいなわがままな彼氏を持った平吉はとんだ災難だよ本当に。


そこで(どこで?)、クリストフ・コワン氏の出番なのです。いいですか、コワン氏は、世界に数えるほどしかないオリジナルのアルペジオーネを所有しているのです。コワン氏をご存じない方のために書きますと、音楽界のカリスマ中のカリスマと言われる超天才チェリストなのです。


見た目はものすごく怖いですが、そして多分本当に怖そうな方ですが、にっこり笑うと、ナイススマイル。


話がずれました。コワン氏がそんなオリジナル楽器を持ってきて、超貴重ですからね、それを、シューベルトが生きていた当時のフォルテピアノ(古いピアノの事をこう呼ぶ)と一緒に演奏するのです。本物のアルペジオーネが日本に上陸するのは、これが初めてでしょうし、本物のアルペジオーネを聴けるのは、もしかすると自分の人生でも今回が最初で最後になるかもしれない・・・。


これが一大事件といわず一体何なのでしょう!!ババーン!!


アルペジオーネソナタを含む、シューベルトの室内楽作品だけで構成された超レア公演は本日の午後7時開演です。アルペジオーネソナタ以外は、コワン氏はチェロで演奏いたしますので予めご了承下さい。


・・・・いや、実は他にも曲があるんじゃないの、図書館とか漁ったらなんか発見されるんじゃないの?と思われる方、ご安心下さい。すでに不肖私が聞いております。「せっかく貴重な楽器をお持ち頂けるのですから、シューベルト以外のアルペジオーネのための作品はないのでしょうか、アルペジオーネだけでコンサートが成立したりはしないのですか」と。


その回答が、ない、の二文字だったのです。さすが泣く子も黙るカリスマチェリスト、ムッシュ・コワンです、私なんかが尋ねるよりもずっと前にすでに調べていて、演奏に耐えうる作品はない、という結論に達していたのだそうです。残念!


それにしましても本公演は皆様の素晴らしく高いご関心を頂きまして、大変ありがたいことに「発売からわずか15分で完売する」という記録的な数字をたたき出しました。多分武蔵野の小ホール公演史上、最速完売記録だったのではないかと思います。ありがとうございます。


残念ながら当日来られない、という方も大丈夫。NHKがこの公演を収録しています。恐らくお茶の間でもごらん頂ける日が遠からず来ることと思います。期待に胸を膨らませながら、お待ち下さい。


上の写真は、昨日のリハーサルの模様です。え?楽器が見えない?えっ?小さすぎる?まあまあ、そういわずに。今日の公演を愉しみにお待ちください。
  

それから、武蔵野の呼びかけで全国5カ所でも公演を実施いたします。

4/20(金) フィリアホール(横浜)
4/21(土) 宗次ホール(名古屋)
4/22(日) ひまわりの郷(横浜)
4/24(火) 米子労音(米子)
4/25(水) 兵庫県立芸術文化センター(兵庫)

開催をしてくださる各団体に感謝するとともに、ご関心のある方は各ホールまで是非足をお運び下さい。(ただし兵庫公演は完売)



ロザリオのソナタ

投稿者:ヤマネ



スペイン人に吉祥寺(Kichijoji)を読ませるとキチホヒって言うんですよ。めっちゃ言いにくそうにキチ・・・ッホッヒッって言うのさ。ご存じですか。


というわけでみなさんご一緒に、こんにちは!声が聞こえません。もう一回。こんにち、ワッーーー!あまりにもごふさたしてしまいしたことをお詫び申し上げます。


先日小ホールの廊下で、「いつも声立てて笑って読んでおりますところの鬼財団の、いえ、貴財団のブログが最近更新されないのは誠に遺憾であるやんぬるかな云々」そんな事を言っていだきまして、ありがとうございます、と心の中で何度もお礼を申し上げたのでございます。会話の中で漢字を間違えるってどういうことや?っていう突っ込みがくることを心待ちにしながら、先へ進みます。
 

ロザリオのソナタ。不肖私がこの曲について知ったのはいつのことだったか。おそらく大学生の頃だったかと薄ぼんやりと記憶しておりますが、調弦が一曲ずつ違うんだって。ふーん。みたいな。なんでそんな面倒なことするんでしょうねえ。みたいな。


アンドルー・マンゼという、この曲の全曲録音をした数少ないヴァイオリニストその本人から、これ死ぬほどむずいねんわ、と言われたときもふーん、と軽く流してしまったことを後悔。ちゃんと根掘り葉掘り聞くべきやった。


この魚はなんていう魚?え?ロックフィッシュっての?オー、クール!!デリーシャス!とか言いながらギヤハギャハと甲子園の近くで日本酒を飲んだだけで終わってしまったのだよね。残念。もう10年ぐらい前の話。


しかしここに挽回の機会が、ついにやってきた!リナ・トゥール・ボネ with ムジカ・アルケミカの公演


スコルダトゥーラと呼ばれる、調弦方法をいつもとは変える、しかも一曲ごとに変える、というその手法はなぜ使われたのか、その疑問を解くべく(ウソ。これは後付の理由)、スペイン人の素晴らしいバロックヴァイオリン奏者によるこの演奏、みなさまお楽しみいただけましたでしょうか。なんとも豪華に、全6名の演奏家でお贈りいたしました。(確か最少2人でも演奏できる)


結果は、お越しいただいた皆さんはもうご存知でしょう。素晴らしく感動的な公演になりまして、お客様も演奏家も上気して赤くなった顔でホールを後にして頂くことができました。


使用したヴァイオリンは4つ。なぜ4本かというと、スコルダトゥーラのためです。ヴァイオリン一つじゃあ対応できないんだね。曲ごとにびゃーんびょーん、ピャーん、と舞台上で調弦されるご様子には痛く心を動かされました。


あと使っていた弓もご覧になりましたか。現代の弓とは全然違う。バッハとかを弾くときにみなさんが使うようなのよりもさらに華奢で、軽くて、構造も単純で、短い。ビーバーの時代の、オーストリアの弓なのだそうです。あれもレアでめっちゃ興奮したぜ。あんなに華奢なのにかなり大きい音が出てたのにも驚き。写真撮り忘れてごめん。


曲ごとに全然いつもと違う音が出るのにどうやって演奏するんだろう。指と頭がこんがらがって容易に意味不明に陥ることは間違いない。涼しい顔して弾ききったリナ様には感嘆の声を提供したい。(楽譜には実際に鳴るべき音が書いてあるのです。自分でフィンガリング、ポジショニングを決めて身体に覚え込ませるよりないのです)


そんな難しさもあって、また全16曲に及ぶスケールの大きさも相まって、この曲が全曲演奏されることは滅多にない。(武蔵野でも多分初めて。今後もなかなかないと思います。)


初演とか、過去の演奏でもこうやって舞台上で調弦したのだろうか、どうやって説明しながら演奏したのだろうか、そもそも演奏されたことがあったのだろうか。なんせ楽譜が見つかったのもわりと近年になってからですし、この曲については謎だらけなのです。


謎は謎を呼び、ミステリーハンターにご登場願いたい程です。じゃ私はスーパーひとしくん温存の方向で。


こんな知的興奮に満ちた演奏会を、ご来場いただきました皆様のおかげにて、大成功のうちに終えることができ、感謝いたします。ありがとうございました。


しかしどういう必要があってスコルダトゥーラをするのか、それについては・・・・やっぱりわかりませんでした。それではオチがきれいに決まったところで、また次回。


  

  

  
  

2018年はじまる、サーカス最高

投稿者:ヤマネ



ああ!!


何のため息だったのでしょうか。さて、2018年も武蔵野文化事業団は、燃えているか。燃えています。最近はチラシがツイッターなどでご好評を頂くこともあり、恐縮しながら燃えています。


みんな、ありがとう!!(ありがとうございます)


そんなわけで先日のサーカスとオーケストラ(1月9日のシルク・ドゥラ・シンフォニー公演)、面白かったですね。サーカスとオーケストラって、映像では見てましたけど、実際どんな感じかなと思っていたんですよ。でも皆様に喜んでいただけたようでありがたいことだと感謝しております。


客席からオオーってどよめきが聞こえてくる度に、なんかこう、もううれしくなっちゃった。


舞台上ではいろんな小物とか、果ては人間もバンバン飛んでましたし、後方で演奏していたオケの方に当たらないかとひやひやする瞬間もありましたが、さすがに世界中で数え切れないほど公演をしてきているプロであります。プロだからプロなんだよ。プロ、大好き!


ところで、人が空を飛ぶときって、どうやっていたと思います?すいません、写真撮り損なったんですけど、あれ、ワイヤーを、人力で引っ張ってるんですね。タイミングを計って・・・UP!!って、先頭に立ったチーフ(多分アメリカ人)が叫ぶと、屈強な男ども(これは日本人)がチーフともどもドドドッと後ろに下がるのです。ロープを引いて。


そうすると、人がステージ上でふわーと浮かぶんだな。これが。


で、NOW!の掛け声で今度はゆっくりと前に進む。このようにして舞台上のパフォーマーは、重力という物理の法則に一時的にせよ抗うことができたのである!!ババーン!!!!


ああ幻想的。パフォーマーがふわーっとうかぶ様に"タメイキ"した方も多かったことでしょう。


なんて素晴らしい・・・・。


しかしその裏の現実は、屈強な男ども4名。ワイヤーを引っ張っているんですが、屈強な男ども(屈強屈強言い過ぎ?)の腕を見たらわかりましたよ、もうプルプルプルって震えてたから。むしろ腕というか、身体全体が。


ああ重いんだろうな、と、思って、ありがとう、と黙礼して、そっ、とその場を去りました。


後でよく知っている人に聞いたところによると、人を1人飛ばすのに相当な力が必要なのだそうです。4人っていうのは結構つらいと思うよ、とのこと。


なお、舞台上では2人同時に飛んでいた時もありましたよね。そのときは、8人でやっていたか。否、やはり4名。屈強な男どもの腕は、2名を飛ばしていたときは、倍の速度あるいは倍の幅で、プルップルに震えていたに違いないのだ。もうプルップルのブルンブルンだったのに違いない。こわくて見に行けなかったけど。


今回が初来日のシルク・ドゥラ・シンフォニー各地でとても好評みたいなんですよね。都内ですと16,17にBunkamuraで公演があるみたい。気になった方、武蔵野公演に行けなかった方も、ぜひ足をお運び下さい。そのほか全国ツアーの詳細は http://cirquedelasymphonie.jp/


私もその日は・・・いや、私はその日はきっと電車ごっこをして一日過ごしていることであろう。


次はー、あー・・・神田ー神田ー。パパ休ませてぇ。


  

  
  

ラモー讃。ピエール・アンタイとスキップ・センペの場合

投稿者:ヤマネ


ラモー讃、という曲がドビュッシーにありますけれども、皆さんご存じですか。今年、ラモーイヤーでもなんでもない今年に、こうしてラモーを実際に称えることが出来たのは本当に喜びでございました。


ラモーを縦横無尽にぶっ飛ばせ!ピエール・アンタイとスキップ・センペによるコンサートは、もう最初っから最後までアドレナリンが大放出の公演となりました。


まじでやばかったですよ。二人ともキレッキレのキレッキレ。うおおチェンバロってこんなにパワフルでいいのか!いいんです。みたいな。ありとあらゆる賛辞を並べてもまだ足りないワンダフルなワンナワー・アンドハーフ。


燃えるチェンバロ、きっとマッチを近づけたらボッと音をたてて燃え上がったに違いない。チンチンと煮えたぎるやかんのように音を立てていたにちがいない。ギンギンに楽器が鳴っていましたね。縦線がそろってないとか舐めた事いうやつがいたらそれは野暮だよ、タコだよ、プレーリードッグでも見て頭を冷やして出直して来いと、説教したい。


なんかよく分からないあの不思議な楽器の並び(写真参照)も、電車ごっこみたいですごいよかったですよ。あの並び方に燃えたゼ!という方、4万人ぐらい(推定)居られたに違いありません。


アンタイ氏、前回の武蔵野公演ではエスプレッソが開演前に飲みたい、というリクエストが出て、マネージャーの方が三鷹駅前まで買いに行ったという事象が発生しておりました。コーヒーよりもタクシー代がかかったよ、ハハハ(力ない笑い)、という事だったらしいので、ハラハラしておりました。今日もエスプレッソですか?


そうしたところが、今日は普通のドリップコーヒーでいいとのこと。ただし開演10分前に。というリクエスト。おもしろい・・・。そのときの気分で変わるのかな・・・。


コーヒーって、緊張している時に飲むとよけいに手が震える、という話を聞いたことがありまして、自分も緊張している時には飲まないようにしているんですよ。いや、そもそも私には緊張しているという瞬間がそれほど発生するわけではありません。最近では、そうだな、ペーパードライバーの妻が運転する車に乗った時かな・・・。あれは・・・やばかった。手軽に体験できる絶叫マシンであった。


話がずれました。アンタイ&センペ、そんなわけで最高でした。最高の最高の最高だったぜ。

  
  

シルヴェストロフという事件について

投稿者:ヤマネ


最近ブログが更新されない。悲しい。なんつって嬉しい言葉を何人の方からか頂戴しまして、いやー、ありがとうございます。ブログ書かないとなー、と思いながらも、つい目の前の様々の事柄どもに追われて更新が滞っております。


しかし、このたびこれだけは書いておかないといけませんなと思ったのは、そう、昨日のシルヴェストロフであります。あまりにも素晴らしい事件でした。いや、期待はしていたけれど、実演に接した私は、ピャーッと叫んで目ン玉が飛び出て、そのままひっくり返ってこけつまろびつ、ほうほうのていで自宅にたどりつき、シャワをジャッと頭から浴びてそのまま眠りについたのである。グー、スピースピー。おはよう。おやおや、7時前から子ども達がキャーキャーいっているね、パパは寝不足だよ。わかったわかった、一緒に<よんきびう>を見ようね。


昨日の公演は、はからずも3時間を超すというすさまじい長丁場になったわけですが、意図的に長くしたわけではなく、2時間で終わるはずだったのです。ところが、いざ演奏が始まってみますと、アジャジャ、めっさ長かったんで関係者一同、うろたえたわけです。うおお、ながいわ!!


しかし、コンサートの最後にものすごい事件が待ち受けていました。それは・・・シルヴェストロフ本人による演奏だったのであります。バババーン!!!


リュビモフという方は、細かく段取りとかをするのがお好きな方のようで、皆さん会場でごらんになったと思いますが、ほぼ一曲ごとにピアノの蓋の開け具合を変えていました。この曲はこうで、この曲はこうする、昨日は不肖私がステマネの真似っ子のような事をさせていただきましたが、リュビモフさんに尋ねますと何でもかんでもかっちりと答えが返ってきたのです。ふふ、リュビモフさんったら、意外と背が低いんだね。そんな余計なことを思いながら、せっせとメモをいたしました。


それに対してシルヴェストロフさんはもっと自由というかユーラシア大陸的というか、こう言ってはナニですが、なんとなく、ぼーっとしておられる。段取り?え、なにそれ美味しいの?そんな声が聞こえてきそうでもあります。


プログラムの最後の最後は作曲者本人によるピアノ演奏が予定されていました。なので、段取りでは「プログラムの後半、シルヴェストロフ氏は舞台袖にいる」ということになっていたのに、後半が始まってふと気がつけば・・・ちゃっかりと客席に座ってるやんけ。そしていつまでもびくとも動かれることはなかったのであります。


そうっすよね、自作は客席で聴きたいよね。わかるわかる。でもいざ自分が弾く段になったら、客席からスッと、こう、俺、作曲家、みたいな感じで出てきはるんでっしゃろ、と思っていたところが、ついに自分の番となっても動かざる事山の如し。舞台袖に戻ってきたリュビモフさんを含め我々は、すわと色めき立ちました。


どうなってるんだ、出てこない。なんだどうした、なにが起こっている。どうしたどうし田!!えー、弁当ー、弁当ー。おいしい唐揚げべんとーいかぁっすかああ!!・・・メダパニの呪文にやられた私は何か意味不明な事を口走っていたようです。しかし何もしなければ何も起こらないので、うーん、じゃあもう舞台転換しちゃえ、と舞台に出ましたところ、ユラーッと。


・・・ええ、本当に「ユラーッと」という表現以外は思い浮かばない、茫洋たる雰囲気をまとい、そしてやや困惑の表情をたたえシルヴェストロフ氏は静かに動いていました。そう、客席から舞台へ。スーッと音もなく舞台に上がり、、、、そしてそのまま舞台袖に消えました。


あああ!!!!!ここにいたり我々はますますメダパニにやられまして、目をひんむいて唾を飛ばしながら全員でシルヴェストロフ氏に向かい「舞台、舞台!」と譫言のように繰り返し唱えたのであります(なおシルヴェストロフ氏は英語がほぼおできにならないので、日本語と英語とロシア語が弾丸のように飛び交っていたことは言うまでもありますまい。シルヴェストロフはウクライナ人ですがロシア語はお話しになります)。


そんなこんながあって、なんとか舞台にシルヴェストロフとリュビモフが二人になる。演奏が始まる。シルヴェストロフのしゃがれ声とピアノの音が、スピーカーからノイズに乗って聞こえ始める。・・・・ここからアンコールを含め公演の最後までは、もうひたすらに「何かが降臨していた」としか申し上げられますまい。(※なお、降臨していたのはシルヴェストロフです。)


それまで2時間半近くにわたって延々と作品が演奏されて来たしそれは素晴らしかったけれども、全てはこの最後のシルヴェストロフのための前振りだったのかもしれません。


まるでタルコフスキーのようだ、と私は思いました。たとえばノスタルジア。ざらついていて、静かで、変化が少なく、張り詰めた映像が流れて行くようだったのでありました。(時刻が遅くなってもいたため、終わって欲しくないと心の隅で思いながらも、早く終わって!早く・はやく・ハヤクッ!と、現実的には100%満喫できなかったのは残念なことでした)


やはりきっと、シルヴェストロフ初来日公演は、事件だったのであります。全ての関係者の皆様、そしてご来場いただいた皆様に深く感謝する次第であります。


サンキュー・ミスター・バレンティン(最後は軽いノリで)

  
  

コンクールの、縁の下の力持ち~アシスタント編~

投稿者:ヤマネ


オルガンコンクールを実施中です。今日は二次予選の二日目。今夜にはファイナル出場者が決定します。うおおお。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ(ジョジョ風に)。


コンクールで一番たいへんなのはもちろん、参加者たちです。数十分の本番のために毎日練習し、本番では死ぬほど緊張しつつ演奏するわけです。その重圧を想像しただけでこれを書いている私も心臓がバクバクします。気絶しそうです。バタリ。


ムクッ。しかしコンクールには縁の下の力持ちがたくさんいる。はい、コンテンスタントの後ろで、脚光を浴びないながらもいい仕事をしている方たちがたくさんいます。今日はアシスタントと呼ばれる人たちについてお話いたしましょう。


アシスタントって誰?補助する人?そうです。補助する人です。コンテスタントと一緒に舞台上に出て、コンテスタントの演奏を補助する人です。ピアノで言えば譜めくりをする人です。オルガンのコンサートにはかなりの確率でアシスタントがいます。このアシスタント業務は、ピアノの譜めくりよりも業務内容が重たい。重いんス。


ピアノの場合は、楽譜をめくるだけです(いやそれが相当に大変なんだが)。オルガンのアシスタントも、もちろんめくります。そこに加えてオルガンの場合はストップの操作もやります。


今日お越しになるのであれば、アシスタントの動きを見ていてください。アシスタントは楽譜をめくる以外に、右手で、鍵盤の右下あたりにあるボタンをカチッ、カチッと押しているのが見えるでしょう。あれはオルガンのストップ(音色を変えるための装置)を動かしているのです。


ボタンを押すとストップが動いて、オルガンの音色や音量が変わっていくんですよ。使うパイプの種類、数が変わるんです。それまで豪華にジャーン!!と鳴っていたのがいきなりピヨピヨーっという音になったりする。昔はそれを皆、手でやっていたんですが、今は機械がやります。機械に向かって、ここではこういう音(こういうストップの組合せ)が欲しいから憶えておいてネ、エイっ!!と、どんどん憶えさせていくんです。


そうすることで、ボタンをポチっとなするだけで、音が、あるときは徐々に、あるときは劇的に変化するようになるのです。ワーオそいつあ素敵だ。なんて便利な21世紀なのでしょう。


ところがオルガニストは演奏中に両手両足を使っているケースも多々ありますから、望む時にボタンを押すことすら出来ない事もある。なのでアシスタントです。


アシスタントは、ボタンを押す。重要なので繰り返しますね。アシスタントは、ボタンを・・・押す!!


たいてい「ここでボタンを押して」と楽譜に付箋が貼られているので、そこにきたら、過たず、正確にボタンを押すわけだ。楽譜もめくりつつ。


これは緊張する。やばいです。ずれるとダメ。こんどアシスタントの方に会うことがあれば、その労をねぎらってあげてください。誰からも感謝されない(演奏者からを除く)、日陰の存在なんですYO!!


ちなみにアシスタントはオルガニストから、実際にオルガニストが作った音色がホールでどう響くのか、代わりに弾いて見せてよ、と言われることもあります。当然やります。つまり、頼まれたその曲を弾ける必要もある。ヘビーだ。


ピアノの譜めくりの場合は、楽譜さえ読めればいいんです。ピアノなんか弾けなくたってOK。極端な例では「ヘ音記号は読めないがむちゃくちゃ腕のいい譜めくりスト」もいます。オルガンの場合は絶対にそれではだめ。オルガンのアシスタントは間違いなくオルガニストがやっています(それも相当なスキルを持っているオルガニスト)。そして国際コンクールですから英語が話せるという条件も加わるわけです。


オルガンのアシスタントへの道のりははるかに遠いわけだ。おわかりいただけましたか。それでもあなたはやりますか。それとも感謝しますか。(感謝の押し売り)。今夜も感謝して演奏を聴こうぜ!!

  
  
  

クリスチャン・ブラックショウ、モーツァルト祭り

投稿者:ヤマネ


先週木曜から日曜まで、モーツァルト弾きとして高い評価をえるクリスチャン・ブラックショウがモーツァルトのピアノソナタ全曲を4日間で演奏。いやー・・・(しばし絶句して)・・・素晴らしい演奏会でした。


モーツァルトのソナタを全て聴くという機会はあまりない。それをリニューアルオープンした武蔵野市民文化会館の小ホールで集中的に聞く、ということで、期待度は非常に高かった訳ですが(自分比)、その期待は見事に裏切られました。いい方に。


うむ、素晴らしいコントロール。美しい音。説得力のあるルバート。モーツァルトはイン・テンポが基本、とか絶対、とかいう人もいますが、ブラックショウの音楽を聴けばそんな観念ぶっ飛びますから。かなり自由に動いているが、いつもふわりと着地するので不愉快になるどころか、めっさ気持ちよかったんでございます。ああ、ああ。サイ。


しかも今回のスケジュールはあり得ないぐらい強行軍で、先々週上海で、同じく4日間で全曲演奏を実施。その後イギリスに戻りとある街で1公演。翌日日本に向けて飛んで、日本到着は水曜日、つまり武蔵野の公演前日着。すごい体力ですね。そして公演終了翌日朝にはロンドンに向け出発。休みが全くない。


「ま、こういうスケジュールになっちゃうときも時にはあるよね」ってそれ、やばすぎます。いやーすごいなー。時差もあるし、シャレならんわほんま。


モーツァルトを弾くことの困難さを考えますと、ますますすごい。モーツァルトの場合、たとえば「少しのミスでも客席が気付く」という強烈なプレッシャーがついて回るんですよ。これがプロコフィエフだと、ちょっとぐらい音が間違っていてもほとんどの人は気がつかない、そういう意味で猛烈にイヤな緊張感が演奏者に発生するんですよ、モーツァルトは(だからといってプロコフィエフをぞんざいに弾いていいわけではないっすよ!!念のため)。


実際ブラックショウが舞台から舞台袖に戻ってきた時にほぼ100%口にしたのが「so scary(マジ恐ろしい)」の一語。その後、だが私は弾かなければならぬ、と決然と舞台に出て行かれるご様子には痛く感銘をうけましたし、集中力がよく持つものだな、と、空恐ろしくなってブルブルっと舞台袖で震えました。震えが止まってからしばらくして、以下の短いポエムを書きつけました。 ― 自分には、絶対にできないNE ―。うむ、我ながらいいポエムが出来た・・・。


なお、ご本人的に一番難しいのは第5番の終楽章の変奏曲だそうです。あの曲は怪物だ。本当にやばい、超絶難しい、長いし弾きにくいし暗譜も超キケン!だそうです。18曲弾いたことのある皆さんは、このご意見に同意しますか。


いやそれにしてもいい演奏会でした。ブラックショウさんに感謝。このブログの写真は、4公演終演後に、全公演お越しになった方限定で実施したレセプションの風景です。多くの方に全公演お越しいただき感謝しております(およそ60%のお客様にセット券をご購入いただきました)。ありがとうございました。


これからも武蔵野市民文化会館では他では絶対に聞けない公演をズビズバ企画してズドズド実施していきますので今後ともどうぞよろしくお願いいたします!8月発売のチケット情報も、明日発送いたしますのでまたご覧下さい。8月発売の個人的超目玉企画は・・・!!!あの作曲家の初来日公演だぁっ!!ギャァアアア!!!!(ナイショ)


  

  

シュテファン・ドールのモーツァルト祭りまであと3日

投稿者:ヤマネ


40にもなってだし巻き卵がうまく作れないことにいらだちを感じています。


「暑いのと寒いのと、どちらかと言えばどちらがいい?」といわれたら何のためらいもなくどっちもいやだ!と叫ぶことができるようにはなってきたのですが、だし巻き卵について言えばいまだにうまくできません。今週も引き続き研鑽いたします。火が強すぎるのかな・・・ブツブツ。


今月の当事業団、クラシック音楽コンサートでは、モーツァルトが多めにかかります。今度の火曜日はシュテファン・ドールという、泣く子も黙るベルリン・フィル首席ホルン奏者が、モーツァルトのホルン協奏曲を吹きまくります。この公演です。私は以前務めておりました音楽事務所で、シュテファン・ドールがメンバーとして参加していたあるホルンアンサンブルのツアーに一緒にでかけた事がありまして、腕はバチグンですが、それはもう・・・・・愉快な方なんですよね。


ベルリン・フィルのホルンセクションと言いましても、いろいろなパーソナリティがそろっておりました。実は最近定年で退団したクラウス・ヴァレンドルフという(ぱっと見た感じ暗くて怖そうな)おっちゃんが本当のところは一番の爆笑大先生だったのですが、ドールさんはもっと明るく陽気に、爆笑先生。


いやー、鹿児島県で爆笑したあの思い出はたぶん忘れまい(個人的な思い出)。とくに印象に残っているのは、ドールさんに向かってホルン素人の私が、ユーのフレンチホルンで出せる一番低い音を教えて、と尋ねてみた話。「公式にはべーの音だよね」(記憶が曖昧だが確かべー(B♭)だったと思う)と言うからもうこの段階で一同「公式には?」ってうわっ!と大爆笑ですわ。・・・・って、ああああ文字にすると何が面白いのかちっともわかりませんでした。とりあえず、そういう魅力がある人だと思っていただければよろしい。


しかし続けて「でも・・・」と言ったかと思うとやおらマウスピースを口の中にガバッと奇妙にくわえ、さらに低い音をぶお、ぐおー、と吹いて見せていただきまして、私は死ぬかと思いました。笑いすぎて。


幸いなことにモーツァルトのホルン協奏曲には、そのような無理難題な音は出てきませんが、ロイトゲープというモーツァルトの友人にしてチーズ屋にして名ホルン奏者のために書かれたかなり難しいパッセージを、きっと美しく、楽々と吹いて下さることでしょう。


火曜日のこのモーツァルト祭りに来られないという方、ご安心下さい。火曜日の演奏会の模様はNHK-FMによって収録される予定です。放送日は未定ですが、近い将来、FMから流れることと思いますので、どうぞお楽しみに。


あ、しまったブラックショウのピアノ・ソナタ全曲演奏会についても触れるつもりでしたが長くなってしまいました。これはでは、また改めて(といっておいて忘れてしまうパターン)。


  

  

  

怒濤の公演ラッシュ&一息ついているこのごろ

投稿者:ヤマネ


主催公演が続きました。


今月頭の3日土曜日のジェフ・バラードから10土曜日の松居直美まで、休館日の水曜を挟み、待ったなし!!ズビズバコンサート!(ちなみに11日はオルガンコンクールのプレイベントということでクリーンセンターまでお出かけコンサートもありました。)


というわけでわりかし疲労していた私ですが、本日までにだいぶん復活いたしました!!息子×2の寝顔もまた栄養源であります。そう、ここは小声で言いますが今日で40になりました。え、何のことかって?それは内緒だぜ。不惑って何だ?俺のことか!!!


次の主催公演はダン・タイ・ソンですね。16日金曜日まで一週間近くも公演がない。なんと静かな日々なのでしょう。それにしても、と私は思うのですが、驚きの絶えない一週間でした。いろいろご来場いただきました皆様はどの公演がお好きだったでしょうか。


個人的にはとりわけホリガーの公演が素晴らしく印象に残りました。ホリガー、絶好調。東響の荒木さんが共演でしたが、ホリガー、シュプバッハ両者にとって「かわいい孫」みたいな感じでしたね。二人でむちゃくちゃにかわいがっていた様子が印象的でした。いや、かわいい孫っていうけど、楽器を持たすと実はすごいんだぜ?そのギャップもまたイイネ!


ブリュッセル・フィルはいかがだったでしょう。こう言いますと怒られそうなのですが「期待を大幅に上回る演奏」で、とてもいい印象を受けました。初来日公演はまだ続行中のようですので、お近くにお住まいの方は行かれてみてはどうでしょう。


知名度はヨーロッパでもそこまで高くはないそうですが演奏は評判がよいとのことで、このプロジェクトに関わるイギリスの方がこのように言っていました。「ブリュッセル・フィルのコンサートに来た人はみんなショックを受けるんだよね。人々が期待するよりもはるかにいいオーケストラで、いい演奏をするからなんだ」。


知名度と実力、そのバランスの取れた幸せなオーケストラになっていくといいですね。いや、知名度、実力もどんどん上がっていくといいですね!


それでは今月後半も、がんばっていきまっっしょい。今月を乗り切りさえすれば、今年も残すところあと6ヶ月!!(もう1年の半分が終わるという驚愕の事実にあなたは耐えられるか!!)