開場に間に合わなかった方の入場タイミングについて

投稿者:I.D

せっかくチケットを買った公演なので、誰しも最初から聴きたいと思うでしょうが、人にはそれぞれの事情があり、開演時間に遅れてしまうこともあります。

 

遅れてきたお客様にどこで入っていただくかは、基本的に招聘会社やアーティストと打ち合わせしています。たいていは、曲間にしてください、一曲目だけは楽章間でOKです、でもその場合は後ろに立っていてくださいね、次の曲間で席までいってくださいね、というのが一般的です。たまに楽章間もダメなどというときがあります。オペラやバレエの場合はアリアなどの見せ場で拍手が起きた時に後ろに立ち見、というのが一般的です。

 

なので小品をたくさんやるコンサートだと比較的早く入れるのですが、後半は「展覧会の絵」だけとか、ましてや「ゴルトベルク」だけなどというプログラムの時に、30秒遅れると悲劇が待っています。

 

さて、この問題は我々の側にも多くの困難は待ち構えています。遅れたお客さんを意識して少し待っていてくれるアーティストもいますが、そこを気にしないでドンドン進めていく人もいます。つまり楽章間が非常に短い、ほとんど一瞬しかないという場合。

 

それに絡めてどこで楽章が終わるか分かりづらい、という時もあります。有名な曲、そうでなくても古典的な曲ならば何となく、もうすぐ終わるなとわかるのですが、“その時”が突然やってくる曲の場合だと行動がワンテンポ遅れ、それが致命的になってしまったりします。

 

それから、遅れた方が多くて係員が席を案内しきれず、暗闇で自分の席がわからなくなってしまったり、お入りになったお客様が御御足が若干不自由だったりして、席までいくのに時間がかかってしまうこともあります。

 

また、後ろに立って聴く人は前の手すりにつかまって良いのか、いけないのかという悩みもあります。元気な人ならもちろんつかまらなくても平気ですが、例えばお年を召した方はどうすべきなのか…。

 

開演までに来場し、音楽を楽しんでいる方と、遅れてきて早く自分の席で音楽を楽しみたい方の望みを両立させるのは、なかなか難しい問題です。

 

 

ぷらっと、行ってきました。

投稿者:あ・と・お
 
この前の休みの日に、浜松に行ってきました。鰻を食べに…ではなく、浜松国際ピアノコンクールを観るためです。聴くことはもちろん、武蔵野でもコンクールをやっているため、どんなものか以前から一度行ってみたいと思っていたのですが、なかなかスケジュールが合わず、今回が初めてでした。
 
私が行ったのは第3次予選の2日目で、既に出場者は73名から12名に絞られていました。そのうちの6名を聴きました。課題曲は、室内楽(モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番or第2番)+自由曲(ソロ)の組み合わせで、室内楽のほうは演奏そのものもですが、他の奏者(コンクール側が手配したアンサンブル)との息の合わせ方や音のバランスで、良し悪しがはっきり分かれたのではないかと思います。ソロの自由曲は、かなりヴィルトゥオジックな曲を選択している出場者が多く、聴衆が熱狂的に反応している場面もありました。
 
楽器の街だけあって、お客さんの関心も高いようで、平日でも朝からホールはたくさんの人で埋まっていました。いろいろなパネルなども展示されていて、街を挙げてのイベントという雰囲気でした。ボランティア・スタッフの皆さんが活躍されていたのも印象的でした。切符を切るスタッフもそうでしたし、たぶん、場内アナウンスもボランティアの方がされていたのではないかと思います。
 
いよいよ、今日と明日が本選です。本選には、日本3、ロシア2、韓国1の出場者が進んでいます。ここもアジア勢が健闘していますね。本選は、オーケストラ(東京交響楽団)との協奏曲が課題曲になっています。インターネットでも視聴できますよ。お時間のある方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
 
浜松国際ピアノコンクール
 
で、もちろん、鰻も食べてきました。昼も夜もです!
 

ヴィオレッタを探して


投稿者:Director's Choice


来年 6月18日(火)にハンガリー国立劇場で「椿姫」をやります。(注:詳細は近日発表予定です)


ヴィオレッタを誰にするか・・・これはどんな時も世界中のオペラハウスが迷うものです。ゲオルギュー、ネトレプコ、フレミング・・・ダブルキャストにヤホ・・・などとメトなら考えるかもしれませんね。日本の場合、どうしても無名の人は出しにくいんです。ですからオーチャードなどはまずエヴァ・メイということになります。


チューリヒ・オペラの来日でも彼女がヴィオレッタを歌っていましたね。現地チューリヒでは、武蔵野で日本デビューを飾ったマリア・ルイジア・ボルシがヴィオレッタを歌っていたのですが、彼女は日本で無名でしたから、メイが呼ばれたのでしょうね。1~3幕まで、安定した歌唱をみせてくれます。とてもチャーミングな性格が歌に出て、幸福な気持ちになります。


もう一人はディミトラ・テオドッシュウ。彼女はドラマティコですから第三幕が勝負です。日本でも人気が高く、メイでは上品すぎる・・・もっと激しい情熱を・・・という方、そう強い感動を求めるならテオドッシュウもいいです。


しかし武蔵野は、この二人とは違う、エリカ・ミクローシャにヴィオレッタを託します。超高音を楽々と出し、おそらく世界最高の夜の女王歌いでしょう。メトで夜の女王と言えばミクローシャ、森谷真理などもメトで夜の女王を歌っていますが、ほとんどの公演はミクローシャです。


椿姫では特に第一幕「花から花へ」の最後の音をどうするか、という時に、メイとテオドッシュウは下げて歌いますが、ミクローシャだけは最高音で勝負。それは興奮の坩堝、アドレナリン全開であります。パリ、ロンドン、ゼンパー、スカラ、フィレンツェ、ミュンヘン・・・世界を熱狂させたディーヴァで、是非聴いて欲しいですね。 


さて、池袋に天丼ふじというカウンターだけの店があります。天丼は750円ぐらい。僕はここの味噌汁が大好きです。芸劇に行く前、一人でホールに向かう方にぴったり。

 
 

注文の多い料理店 ―― ピエール・アンタイの場合

投稿者:ヤマネ

演奏家によっては様々な注文があります。演奏前は話しかけてくれるなだとか、出る直前に背中を強く叩いてくれだとか、そいう注文です。昨晩のアンタイ氏は、そういった意味では色々と注文の多い料理店でした。

 
写真を撮り損ないましたが、楽器のあたりを注意深く御覧頂いた方がおられましたでしょうか。まず楽器の鍵盤の脇といいますか、客席側の上方あたりに、手元を照らす小さな明かりがありました。本人持参のものです。そして椅子のまわり。通常のベンチ型の椅子でしたが、後方の足先2箇所に、小さな四角い板が差し込まれており、椅子が前のめりになるようになっていました、これも本人持参の板。そして椅子の上には、使い込まれたマイクッション、もちろん本人のもの。また、その椅子の下にはマットがひかれ、足が滑らないようになっていました(これはホールの備品)。ここまで周到に用意をしてくる方も珍しい。
 
 
また、開場ギリギリまで、自分自身で秘密のチューンナップを楽器に施していました(このあたりの事は、楽器を所有しておられる梅岡楽器様のここ何日かのブログに詳しいので、よろしければお読みください。「チェンバロ漫遊日記」)さらには、演奏前には手を暖めたいのでお湯をください(グールドみたい)、とも。
 
 
2日前の兵庫公演では何やらプログラムにない曲をやったようだとの情報を事前にキャッチしていたので、アンタイ氏を連れてきた招聘元のツアーご担当の方にお尋ねしましたら、すでに武蔵野に向かう車の中で尋ねたが、曲目はまだわからないとのこと。「はいはい今日も何か曲を足します。兵庫とは違う曲を弾く。開演までには言うから待ってて(ホールの特性にあわせて決めると言う)。あと、アンコールを今日も何か弾くけれど、それもまだ決めてないから」と言われたとのことでした。・・・実に自由だ。こういうの、わくわくしますね。
 
 
そうして、無事に準備がととのったのですが、一番興味深かった注文を最後に書いておきましょう。「エスプレッソを3ショット、飲みたいので準備して欲しい」。残念ながら武蔵野市民文化会館の周りは住宅街で、エスプレッソを出すお店が・・・探してみてもありません。結局三鷹駅前のドトールまでご担当者が歩いて買いに行かれたのでした。冷えないようにとタンブラーを持参して来られたのはさすがですというか何と言うか。
 
 
というわけで、近隣のお店の方、どなたか、エスプレッソ、始めませんか―!!(ここが出しているという情報もあれば、絶賛募集中です!と言っても、アンタイ氏が今後また来ない限り、注文には行かないかもしれませんが・・・。)
 
 
 

27年間続く武蔵野シティバレエ

投稿者:I.D

昨日は第27回武蔵野シティバレエ定期公演が行われました。名作『白鳥の湖』を成功裏のうちに終えることができました。みなさまありがとうございました。

 

6月から稽古に励んできた団員からは達成感とともに、「終わっちゃったね…」というちょっと寂しそうな声もありました。シティバレエに参加した団員がバレエ界で更に活躍してくれて、そしていつか振付家などとして武蔵野に帰ってきてくれたら、私も嬉しく思います。

 

来年は佐藤宏さん振付の『ロミオとジュリエット』を行います。『ロミオとジュリエット』の全幕は武蔵野シティバレエ始まって以来初の試みとなります。オーディションは4月14日(日)を予定しています。詳細の発表や、受付は来年3月頃を予定していますが、ご興味のある方は是非オーディションに参加してみてください。

 

27年もの間続く武蔵野シティバレエの歴史を感じていただくために、第1回からの公演チラシを一挙掲載します。これからもより良い舞台を作っていきますので、ご支援よろしくおねがいします!

 

              

 

              

 

            

 

            

 

            

 

            

 

      

 

 

パウル・バドゥラ=スコダ氏からの直筆メッセージ!

投稿者:ひよこちゃん


一昨日、御年85歳の大巨匠パウル・バドゥラ=スコダ氏のピアノ・リサイタルを小ホールで開催致しました。


以前にヤマネがアンコール曲の掲示のために駆け回る話をブログ記事で書いていましたが、スコダ氏のコンサートもまさにこのパターンで、「アンコールは(やるやらないも含め)出たとこ勝負です」とのことでした。じーっと構えて、スコダ氏が何をアンコールで演奏するのか、耳を傾けていた訳でございますが、残念ながらその短い時間の中でわかったことは「モーツァルトの曲の何かだろう」というところまででした。となれば、仕方ありません、舞台裏に行ってご本人に確認するほかない。というわけで、私ひよこちゃん、ぱたぱたと舞台裏に駆けていき、ご本人へ突撃する体勢を整えました。


舞台裏にはマネジメント会社の方もいらっしゃたので、「アンコール曲を伺いに来ました」と言ったら、その方がご本人に尋ねて下さり、スコダ氏も私の持っている用紙を見て「これに書けばいいのかい?」とおっしゃって下さいました。


しかし、どうもマネジメントの方の言葉がスコダ氏には上手く伝わらなかったらしく、スコダ氏は私が差し出した用紙に、サラサラサラと明らかに曲名ではない何かを書き始めました。それがこちらです↓


素晴らしい聴衆の皆さまと美しいホールに感謝致します。
パウル・バドゥラ=スコダ


(というような内容が書かれています。)


 
 
 
 
巨匠パウル・バドゥラ=スコダ氏から武蔵野の聴衆の皆さまへのメッセージです!実は途中までは、それでも最後にアンコール曲も併記してくれるんじゃないかと期待していたのですが、サインを書き始めた時点で諦めました。
(アンコール曲はこの後別途ご本人から教えていただきました。)


スコダ氏ご自身にとっても満足のいく演奏会だったのでしょうか。このメッセージを書く前も、そして書きながらも「素晴らしいホール、素晴らしいお客様、素晴らしい」と、"wonderful"を連発されていました。ありがたい話でございます。ええお人や!
単純に85歳という年齢だけを聞くと、私のような若輩者には想像もつかない領域な訳ですが、スコダ氏は間近で拝見すると、85歳とは思えぬ肌つや、動作もきびきびしており、率直に言って10歳以上はお若く見えました。


アンコールは毎度ドキドキではありますが、こういう嬉しい体験に遭遇できるのだし、よくよく考えれば演奏者ご本人とちょっとでもお話しできるチャンスなのだから、そう悪いもんでもないですね。

 
 

事件は現場で起きてるんだ!

 

投稿者:あ・と・お
 
寒い季節になってきました。そして空気が乾燥していますよね。風邪をひかれている方もいらっしゃるかと思います。
 
最近はそうでもないかもしれませんが、昔はクラシックのコンサートというと、咳をしようものなら他のお客さんから睨まれるのではないか、という堅~いイメージでした。確かに、ピアニッシモの音に客席全体が全神経を傾けて聴いているときなど、ちょっと咳をしずらい時ってあります。しかも不思議と咳をこらえようとすればする程、咳き込んじゃうものなんですよね。
 
先週おこなったウィーン弦楽四重奏団の時、また、以前ひよこちゃんが書いていたような、アメをむく音が気になるというお声を休憩中に何人かのお客様からいただきました。私はロビーにいたため、実際の音は聞いておりませんでしたが、「あの辺りから」ということで。
 
結局、後半が始まる直前に“その辺り”の近くでお客様全体に、アメは控えていただくようにアナウンスさせていただきました。しかし残念ながら、終演後に「たぶん前半と同じ方が、後半もアメを開けられて…」とまた別のお客様からお声をいただきました。アメの方は、ご自分のことではないと思われていたようで…とのことでした。う~ん。
 
注意喚起ばかりで恐縮ではありますが、ここはやはり皆様のご協力をお願いするしかありません…。
 

 

ドーナル・ラニーのチケットは残り10枚


投稿者:Director's Choice


アイルランドの巨匠、ドーナル・ラニーの公演のチケットが残り10枚になりました。正直ほっとしています。ワールドミュージックはまわりのスタッフも聴かないし、フン・フル・トゥをやった時も「これが売れなくて何をやる!」と思ったのですが、それ何?という状態でした。


ドーナル・ラニーは日本では名プロデューサーとしての数々の名盤CDで知られ、バンド・リーダーとして日本ツアーを行っているけれど、他のソロ・デュオ・コンサートを最近聴いたことがある人はほとんどないのではないでしょうか。ええーい、みんな来てくれよ!という気持ちで公演を決定。「いやー、ありがたいです」「うれしいです」もうすぐ完売。そうでなければワールドの企画をとづける勇気がくだけてしまいそうでした。


民族ファンのおすすめとしては、今週日曜日にあうるすぽっとで、23日KAATで公演を行っている「白い馬の物語」に出ている、ネルグイ・アシドのホーミーが最高です。震えるような感動がありますよ。


以前セブンイレブンの398円のワインを紹介しましたが、本日はミニストップのワインを一つ。Montelago 500円であります。赤が特によく、シンプルですが日本の食卓の料理によく合います(焼き魚はパスして下さい)。白は少しものたりませんが、リンゴとかパンとチーズならOKですよ。


■1月20日(日) ドーナル・ラニー&パディ・グラッキン公演詳細:
http://www.musashino-culture.or.jp/eventinfo/2012/10/post-124.html
 

ひよこちゃんとサントリーホールでばったり出会う

投稿者:ヤマネ


サントリーホールの客席に入ったら、ひよこちゃんとばったり会いました。なので私もデセイについて書いてみます。


実はこの方、フランス語ではデセイとは発音しません。あえて書くならドゥセになるのです。あれまあ、おやまあ。


と聞くと、なら今後はドゥセに表記変更しましょう、となったりしませんか。え?そんな事思わない?ではこの先は読まなくてよろしい。ウソです。読んで下さい。


私はと言うと「まあデセイのままでよいでしょう」派です。そもそもは高校生のとき、米国人と話をしていて衝撃を受けた事に端を発しています。以下、やや長いですがお読み頂けましたら幸いです。


「君の名前は英語ではなんて言うのかな?」


と私は尋ねられたのです。え?え、え?今言ったとおりですけど。「ほらほら例えば僕は英語だとマイケルだがフランス語ではミシェルだしイタリア語ならミケーレだしドイツ語ならミヒャエル。だから君の名前もだ、えー、こほん、英語だと何というのかな?」


ここに至り、ははあなるほど、と膝をバシーンと打ったのです、私は(倒置法)。


この質問そのものは、何だか私には奇妙に思えたのですが、ともかくあちらの方面の人たちは、原音?にそれほど忠実にあろうとは考えていないようだなどうも、と言う事が判ったのでした。


その後人生を歩んで行くうちにわかった事ですがフランス人はモーツァルトMozartをモザー(←カナで無理に書こうとするとだいたいこうなる)といいますし、シューベルトSchubertをシュベーと言いますし、チャールズ・アイヴズCharles Ivesならシャルル・イヴですし、リチャード・ギアRichard Gereはリシェー・ジレとか言って平然としています。


フランス語に限らずみなさんテキトー。例えばバッハは英語ではバックです。あるいは人名ではなくても、音楽の都ウィーンは英語だとヴィエナVienna、ドイツ語だとヴィーンWien、フランス語ならヴィエンヌVienneと言います。っていうかそもそもスペルすら変わっちゃっています。


それから、エヴァ・クピーク(Ewa Kupiec)という名前の、武蔵野でも演奏して頂いた事のあるポーランドのピアニストがいます。私はこの方と何度かお目にかかってお話をべちゃくちゃとしたことがあるのですが、ポーランド語ではクピエチとか、そんな発音になるそうです。が、「でもみんなクピークと発音するし、私も全然それでいいと思うのよ別に何と呼ばれようと私は私だし、あなたもクピークでも何でもよいですよっていうかコールミー・エヴァ」と言われました。


そして(これは、I.D氏に指摘されたのですが)、我々日本人も同じような事をしております。たとえば毛沢東を、中国語でのいわゆる標準的な読み方「マオ・ツォートン」などとはまず読みません。


さあ、皆様はこのドゥセ問題、どうお考えになりますでしょうか。(いろいろな考え方がありますので、これが正しい、と決めつけたいわけではありません。)

  

 

「ルチア」を思う

投稿者:ひよこちゃん


昨夜、マリインスキー歌劇場管の来日公演「ランメルモールのルチア」(演奏会形式)を聴いてきました。マリインスキーの公演は今回、東京では3回あるのですが(サントリーホール2回、NHKホール1回)、「ルチア」が聴きたかったので昨日の公演に行ってきました(当然ですが他の2日に比べチケット代が高かったのですが。涙)。


「ルチア」は、生で聴くのは初めてだったのですが、私にとってはちょっと思い入れのあるオペラ作品です。


私が最も敬愛する小説の1つに、アメリカ人作家ジョン・アーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』という作品があります。私見ですが、ジョン・アーヴィング氏の作品はそのダイナミズムにこそ最大の魅力があり、この『ホテル・ニューハンプシャー』はダイナミズムに溢れる物語の頂点を極めた作品の1つと言えるでしょう。この『ホテル・ニューハンプシャー』にオペラ「ランメルモールのルチア」は登場します。


ジョン・アーヴィングの小説を読まれたことがある方なら誰でもご存知でしょうが、彼の作品にはウィーンが頻繁に登場します。この『ホテル・ニューハンプシャー』でも主人公一家がウィーンへ移住し、そこで「ルチア」が登場します。登場する、と言っても、主人公たちが勝手に「ルチア」のことを想像し、「客席はガラガラに違いない。ドニゼッティのオペラが観るに値しないことくらいわかるだろ」とけなし(昨夜は満席でしたが!)、それでいてこれは自分たちにぴったりの物語だと結論づけるという散々な(?)扱いなのですが・・・。


愛する恋人がいる妹を、自分(と家)の未来のために無理やり嫁がせようとする兄の物語は、その流れる血といい、歌われる愛の言葉といい、確かに『ホテル・ニューハンプシャー』にぴったりかも知れません。きっとジョン・アーヴィングはこのオペラに感じ入るものがあったのでしょう。


「僕たちよりは安全だ。愛よりは安全だ」


『ホテル・ニューハンプシャー』で、次男で語りべのジョンが愛し合う長女フラニーに、ウィーンのオペラ座爆破計画(!)を告げた後の台詞です。確かにどんなものだって愛よりは安全だなと、ナタリー・デセイさんの歌う「狂乱の場」を聴きながら妙に納得した次第です。日々愛に飢えている私なんかは、実はとても安全地帯で生きているのでしょう。どっちがいいかは・・・・・・やっぱり愛が欲しいかなあ


  
余談:毎日、市民文化会館ではヤマネ氏と机を並べてお仕事をしているひよこちゃんですが、昨夜の公演では広いサントリーホールの中(約2000席)、ヤマネ氏の隣の隣の席で私は鑑賞しておりました。チケットはもちろん別々にとったのですが・・・。なんという偶然なのでしょうか。